「やらなければならないプレー」を何回出来たか? J3リーグ第3節 AC長野パルセイロvsFC東京U-23

AC長野パルセイロvsFC東京U-23戦を観に行った。

三月としては異例過ぎる寒さ、そして雪。軽井沢など道中はまさに「トンネルを抜けるとそこは…」状態だったが、通り過ぎて長野Uスタジアムに着いてみると、雪は舞うものの積もりはせずで試合は無事に開催された。もちろん、ゲキ寒なのには変わりないけど。

そして試合は0-1で敗戦。前半は互角以上にやり合えたていたが、後半に相手のシュータリングによって長野が先制。その後、相手の退場により東京が数的有利となったが、そのビハインドを覆す事は出来なかった。これで開幕3連敗。これまでの過去2シーズンの開幕時に比べれば内容はだいぶ良いものの、気になる部分が無い訳ではない。

 

FC東京U-23の絶対値。

前節YSCC戦を受けて、新高2コンビの木村誠二・バングーナガンデ佳史扶のコンビは変化を示したと思う。誠二は相手の高さにも負けず、裏のカバーもそつなくこなせる様に。カシーフは守備はまだまだ改善できてはいないものの、ボールを持って仕掛けるといった本来の長所が多く発揮できた。またこの日はジャキットが出色の出来。運動量と前への推進力が相手を苦しめ、対面である河合の退場を誘いもした。YSCC戦のジャキットはイマイチに映ってただけに、予想を超える活躍だった。

総じて、U-23の絶対値は前節に比べて確かに高まったように伺えた。

対する長野。肌感にはなるが、強さで言えば長野<YSCC。長野の守備強度には緩さを感じ、東京としては「奪われる感覚」はさほど無かった。攻撃においてもYSの3人目動線の複雑さは見事で、動線が単純だった長野とは差を感じた。

せっかくFC東京U-23の絶対値が高まった感をうけたのに、長野の程度をもって割り引いて見ないといけないのが、むしろもったいなく感じた位。だから退場により相手が10人とはなったが、試合としては11人vs11人だろうと「勝つべき試合だった」という印象だし、それが相手に一人退場が出たのであればマストに近い。

勝つならばここだったと思う。しかし勝てなかった。その結果にとやかく言うつもりは無いけれど、しかしそこに「勝利に導くプレー」があった感じはしなかった。そこは気になる。


個人的に感じた潮目は、後半立ち上がりの48分。前半の相対差そのままに、いきなり迎えたまぁまぁなチャンスの場面もシュートまで繋げられなかった。

よく「ゴールから逆算したプレーを…」とは言われるが、その一連において個々がどの様に関わるか?という問題がある。例えばゴールからの逆算をと個々が真剣に考え実行しようとも、その結果、前線の2人がどちらもラストパス役を担おうとすれば、そのチームプレーは「ゴールからの逆算」とはかけ離れたプレーとなる。ラストパサーもシューターも、役割としては1枠のみであり、役割や状況に応じてフレキシブルにその席が埋まることが本来の理想であろうか。

もちろんシステム上で役割を固定するか、もしくは当人の気質の問題によって自然と決まるのであれば話は早い。U-23では開幕から原大智がシューターを担っていた。YSCC戦の終盤では、あまり角度の無い位置でも無理目にシュートを打ち切った場面があり、ゴールとはならなかったが自覚を感じる素晴らしいプレーだったと思う。

しかし長野戦は代表活動により大智は不在。誰かがシューターを担わなければならなかった。しかしその席に座ろうとした選手は果たして誰がいたか?

それは終盤のピッチ上では、品田愛斗と途中出場の寺山翼程度だった様に思う。

 

この場面において主体的に名乗りを上げて欲しかったのはもちろん、2トップのリッピヴェローゾと内田宅哉である。

リッピはYSCC戦同様にカットインからの左足ミドルを狙ったが、どちらも枠を大きく超えてしまう。パワー不足でボールに抑えが効かない、2戦ともに同じ様な外し方だったので、その型ではゴールの期待値がそもそも低い。

内田に関しては本来であれば、唯一のルヴァン組としてこのメンバー内では攻撃を引っ張っていかねばならない立場。平岡リッピの機動力をどう押し出すのか、どう関わって、自らが結果を残して、再度ルヴァン組として出場機会を狙うのか?そういう意欲が「シューターの席取りゲーム」において全く見られなかった。

皮肉なのが、途中からFWに入った寺山のプレーが非常にFWらしく効いていたことである。相手DFライン上を泳ぎながら、まずは裏抜けで前にベクトルを示す。それによってDFラインを下げた上で、ギャップに降りてボールを受けようと示す。それは内田リッピがDFラインの駆け引き無いまま、降りた位置に「居続けて」ボールを貰おうとする姿とは大きな差があった。


サッカー選手にとって「やりたいプレー」と「やらなければならないプレー」のバランスが重要なのは言うまでもない。

トップチームにまずはお客さんとして混ざろうとしている岡崎慎をはじめ、新しくチームに入ってくる若手選手には、まずは「やりたいプレー」を出し惜しみ無く発揮してもらう事を求められる。

しかしその裏で、他の先輩たちが「やらなければならないプレー」でフォローをしているのは言わずもがな。だからいつまでも新人は「やりたいプレー」ばかりをしていられる訳ではなくて、徐々に「やらなければならないプレー」でも貢献できる事を示していく必要がある。それが途中出場止まりの選手と、スタメン11人に名を連ねる選手との大きな違いの1つだと自分は思う。

小川諒也が2016年にスタメンを奪い切れなかったのは、まさにこの点が問題だった。2017年には太田宏介の再加入によってU-23に出戻りとなってしまったが、U-23では持ち前の兄貴肌が(意外にも)良い方向に転がって「やらなければならないプレー」の経験値がだいぶ積めた様に思う。いまマコと共にトップチームに食い込もうとしているが、あの時とは違う経験値を携えた殴り込みは、個人的にも楽しみだ。方や久保建英は逆にU-23でもっと「やらなければならないプレー」を問う立場で経験を積ませたかったのが正直なところだが…まぁ、ああもチーム唯一な活躍をされたら仕方が無い。

こういった「やらなければならないプレー」を重く要求される環境こそが、U-23J3で戦うことで得られるメリットでもある。これがサテライトリーグもしくはTMでは、位置づけ的にも環境的にも「重さ」がどうしても伴わない。

ここまで整理してみて思うのは、自分がU-23で観たいのは各選手の「やりたいプレー」よりも「やらなければならないプレー」なのかもしれない。そして長野戦においては、特に内田の「やらなければならないプレー」が見られなかった事が不満だったのだろう。彼がそういうプレーヤーでないことは分かっているが、逆に彼の格ではそれはもう許されないとも思う。


日曜日はホーム西が丘でカターレ富山を迎える。

J1リーグはインターナショナルマッチウィークにより中断期間となるが、FC東京は土曜にTM流経大戦を予定しており、そのためトップチームの選手がU-23に出場するかは長野戦以上に不透明だ。またU-18は高円宮杯プレミアリーグ開幕に向けて最後の総仕上げとなるドイツ遠征に向かったが、それを欠席してまでも西が丘で「現場待機」を強いられる選手も多いだろう。

引き続きメンバーが揃わないことが予想されるが、であろうともU-23選手たちには、長野戦では少なかった「勝利に導くプレー」を求めたい。特にシューター不在で誰かが絶対に担わなければならない中で「じゃあ俺がやるよ」と名乗り出るプレーを多く見たい。

そういった「やらなければならないプレー」を数多く積み重ねる事が、チームを引っ張るという事なのではないだろうか。そんな姿が板につくくらいでないと、U-23卒業はまだ遠い。