事実と意見を分けるという意味で、あちらの記事ではとにかく世の中にあった情報発信を収集して、アーカイブとして残すという作業に徹しました(実際はネタを加えることが我慢できなくて「おまけ」を足してしまった)
ただ勿論、今回の件について自分なりに思うところもあるし、それはアーカイブ作業で手を動かしたことによって感じることも増えてきた。なので、記事を分ける形で自分の意見を残しておきます。
FC東京 現場チームについて
FC東京サポではありますが、FC東京の動き方が全部合っていたとは思ってないです。特に、初日の動きについては結果的に間違いだったのでは?と。
改めて経緯を振り返ると…
28日夕方時点で、東海道新幹線は30日(試合前日)〜31日(試合当日)の期間での計画運休の可能性を発表。これは、27日段階では計画運休の可能性が29日〜31日と発表していたものが、台風の進路を考慮して想定期間が絞り込まれた発表でした。それを受けて、FC東京を始め多くの人が前日移動→前々日移動に切り替えます。
しかし、台風は到達していないものの周囲の雨雲が活発化され、各地で線状降水帯が発生。それにより静岡地域が記録的な雨量となったため、29日時点で東海道新幹線が急遽運休となった流れでした。29日の急遽の運休から、予定通り30〜31日の計画運休にそのまま突入。さらに計画運休は9/1(日)にも及ぶこととなり、合計3日間の計画運休は東海道新幹線において初めてのこととなりました。
FC東京は午前の練習が終了後、前々日移動のため東京駅から新幹線に乗車。しかしその新幹線が静岡でストップし、立ち往生に。約8時間もの飲まず食わずの缶詰状態から、新幹線は東京駅に引き返すことを決断。乗客は新富士駅下車or東京駅下車が選択でき、その中でFC東京は新富士駅下車を選択。急遽取ったホテルに深夜ようやく到着したという流れでした。
この発信を観た段階から今このタイミングで改めて振り返ってみても、自分はチームがここで、新富士でホテル泊とするのではなく、もうちょい無理を続けてでも東京に戻る選択をすべきだったと思っています。
何故ならば、不測の事態の最中において、まず考えるべきは「選択肢の確保」であり、翌日の計画運休が既に決まっている状態でその影響ど真ん中エリアとなる新富士に留まるのは、一番選択肢が確保できない状態となるからです。
ただ報道によれば、選手の中では体調不良者も出ていたとのこと。8時間もまともに飲み食いできずに缶詰状態になれば、そういう人が出てくるのも当然でしょう。その人の状態を観て、とても東京に戻るまで引き続き我慢を強いるのが不可能となれば、新富士ホテル泊も『止むなし』だったのかもしれない。
だからここは事情が絡む箇所だから何とも言いようがない。何より大事なのは試合前日・当日は計画運休だったのに対して、移動を試みた前々日に発生したのは「急遽の運休」だったこと。不測の事態の中では全問正解は不可能。正解を求めて懸命に動き続けた事は間違いないわけで。
こんな状況の中で、まずは表立った怪我なども無く試合を成立させた選手スタッフ全員は称賛されるべきでしょう。加えて試合自体も、現地観戦した者としてはクラブとしての意地を強く感じさせるものでした。個人的にはこの試合のFC東京は、ここ数年の中でも「ものすごくFC東京」でした。
総じて、全力を尽くしたのは間違いない。確かにもう少しだけ早い新幹線だったら事態は回避できたかもしれない。ただ、いかんせん午前にトレーニングを行った小平Gから東京駅までが遠かったww 試合後の飲み会でも、「小平Gが東京駅から遠いのが悪い」という結論になったww
サンフレッチェ広島について
シンプルに、天候・交通事情により観戦が叶わなかった東京サポに向けて、払い戻しを認めていればよかっただけだと思います。
広島的には、日程の事情がありました。ルヴァン杯・天皇杯に勝ち残り、これからACL2もある。ACL2では香港・シドニー・ジャカルタ遠征を控えており、通常日程での開催が広島的に強い要望だったことは確かでしょう。そこは様々な事情で「暇」なFC東京とは訳が違うww
とは言えそのせいか、第1報が他クラブより1日遅かったことはホームゲーム運営者としてどうなのかと思ったし、何より第1報時点で「試合開催の場合は払い戻しは一切受け付けない」と明記していたことは、個人的には一番腹が立つポイントでした。第1報で言いたかったことは、何よりこの箇所なんだなと。
Jリーグが、各クラブが共有利用できるチケッティングシステムを持ちながらも、いくつかのクラブは自前のシステムを使用しています。広島も自前でシステムを持ち、その「サンフレチケット」にはリセール機能がありませんでした。
FC東京サポとしては、新スタジアムであるエディオンピースウイング広島に是が非でも行ってみたいと、1月の日程発表の段階からホテルと交通手段を確保し、争奪戦の末に購入したチケットでした。それが不可抗力の理由により試合観戦が叶わず、さらにサンフレッチェ広島の姿勢が強硬的にも感じられるものであり、払い戻しも出来なきゃリセールも出来ないし、何故自分が支払ったチケットがこんな扱いをさせられなければいけないんだと、負の感情を抱くのも当然でしょう。
チケッティングの問題は、新興リーグであるバスケットボールBリーグが「リーグが全クラブ全試合を包括してチケッティングを管理する」方式を取っているように、購入方法(=体験)を揃える意味でも、お上がキッチリと統制すべき問題だと個人的には考えます(Bリーグが上手くいってるかは分からないですが)。
その点で、Jリーグが「Jリーグチケット」を用意している事自体は素晴らしいものの、その利用のされ方について管理統制のガバナンスが全く発揮できていないのは大きな問題でしょう。独自システムを認めるのであれば、せめて現代のスタンダードな機能(=Jリーグチケットで備えている(であろう)機能)は独自システムを利用するクラブに対して等しく要求すべきだし、他にも例えばヴェルディはJリーグチケットを使っているのに(オプション費用を払ってないせいか)リセール機能が無いといった問題も起きている。これはJリーグ全体の体験設計の問題。
…と、話はだいぶ逸れてしまったので戻すと、そういうシステム的な事情を考慮せずとも、サンフレッチェ広島は個別対応で払い戻しを受け付ければいいだけだったはずです。現地観戦民の目視レベルで言えば、チケット完売の試合だったにも関わらず、アウェイゴール裏は2割、隣接のアウェイ指定席は3割程度の空席があったように見えました。同時期に開催予定だったSWEET LOVE SHOWER 2024 では個別払い戻しを受け付けています。これはサンフレッチェ広島の姿勢の問題だと思います。
だから自分はとっても器の小さい人間なので、今回のようにサンフレッチェ広島がアウェイ遠征サポーターの事情を切り捨てた中で、その後いくら社長が「拍手で迎えましょう」とか、サポが「FC東京は選手もサポもすごい、感動した」とか言ってても全く何も入ってこなかった。日程が崩れず予定通りに試合は出来、相手が勝手に弱っていったからイージーに勝ち点3も取れて、しかも払い戻しも拒否して売上にも響かずに済んだのだから、そりゃ気分は良いでしょうよと。「忘れねえからな」としか思わなかったです。
けどフォローする訳ではないですが、新スタジアムはとにかく素晴らしかったです。これだけのスタジアムを持ってて、かつチームも首位に立つくらい強いのだから、「偉そうにする資格」は確かに最大級にあるなとは思いました。
Jリーグについて
今回の一番の問題だと思っています。
H&Aという競技形式を取っている以上、ある程度のホーム有利は常に発生します。しかし今回は不可抗力によって起こったことであり、H&Aによる有利不利とは別種の不公平が追加で発生した事象だと、不利益を被った当事者としては強く思います。この状況で、広島と東京の当事者同士で話が着地する筈はなく、であれば仕切るべきは統括団体であるJリーグです。
となった時のJリーグの仕切りを振り返ると、結構早い段階から「当日移動でも試合はやれ」だったことが後に分かり、その上で今回の予定通り開催という結果になったことから考えると「今回の東京の事情は別に知らんし、広島の日程事情の方が優先だから試合やれ」になる。不可抗力により発生した不公平さと、それによって選手が重大な怪我・病気(エコノミー症候群等)を発生する可能性よりも、日程が優先だと。
またサポーター視点で言えば、今回の件は「アウェイツーリズムの否定」だとも捉えています。Jリーグとしては今後「アウェイツーリズム最高だよね〜スタグルもぐもぐ〜」とかなるでしょうが(既になってる)、そんな野々村芳和チェアマンに自分はナカユビをたてるでしょう。コイツがチェアマンになってから、何一つ良いことがねぇんだよ。
メディア報道について
今回アーカイブ化作業をしてみて、一番得られた示唆が、そして絶望したのはこの部分でした。この世に「サッカーメディア」って、もう無いの?
報道のされ方具合を”試合前”と”試合後”に分けて考えると、試合前はスポーツ紙を中心にある程度の報道は十分されていた印象です。それがスポーツ紙の役割なのもあるし、ニュース自体がそれなりにバリュー(バズ?)のある内容だからってのもあるでしょう。特にスポニチの垣内記者は普段からFC東京をよく追いかけられており、そこから得られたであろう情報を独自に配信していました。また番記者の馬場康平氏も、無料記事という形を選択して本件の経緯と問題提起をされていた。
試合後になると、その様相は一変します。
試合結果が、試合前にあった経緯をどう内包しつつニュース記事とされるのか、また試合後には小泉慶主将から今回の件について選手を代表した問題提起を行っており、それをメディアがどう受け止め発信するかが個人的な焦点でした。
ここまでウダウダとクソ長い文句が続く程度には、本件は様々な観点から考えられるべき話があると思っているので。そのどこを選んでどう膨らませて、独自取材も付け合わせてどう原稿を仕上げてくるか。これは試合前報道の主役だったスポーツ紙よりも、サッカーメディアこそが「専門性」「独自性」「公共性」をもって活躍する場だと期待をした箇所です。
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何が怖いかって、これらの記事全てが「サッカーダイジェストWeb」「FOOTBALL ZONE」といったサッカー専門Webメディアだったこと。「サッカーマガジン」「サッカー批評Web」に至っては試合自体も取り上げていないし、「Footballista」は戦術にしか興味がない。
…え、サッカーメディアって死んだ?
日本プロサッカー選手会、FC東京選手会について
一番の被害者だからこそ、強い意志をもった立ち回りが求められる立場でもあると思っています。
ここまでツラツラと書いてみて分かることは、「結局、この件で真に困ったのは日程の影響を身体的に直接食らったFC東京の選手たちと、遠征予定だったFC東京サポーターのみ」だったということ。そしてそれは所詮、全体から見れば影響はごく少数に過ぎないということ。
そうなると、本件を事として捉えて活動できるのは最終的には選手会しか居ないというのが自分の結論です。
それはちょうど同じタイミングで、下記の動画を閲覧し、選手会の存在意義や重要性を痛感していたところだったのも、影響としては強いでしょう。
ある重大な出来事に対して、それを決める関係者が球団だけとなれば、その決断が球団寄りな着地となるのは当然な話で。しかし実際には選手なりファンなり様々なステークホルダーは存在する。その中で、球団寄りになりすぎず、全てのステークホルダーから観て適切と思われる箇所に着地させるためのパワーバランス、を達成するために求められる「選手会のパワー」とはこれ程までなのかという気持ちにさせられました。
本件は最終的には、Jリーグが進める「秋春制」「1リーグ20チーム化」による過密日程化の話に進んでいくと思われるけど、この決定にあたって日本サッカー選手会は当時、どういう立場で、どういう役割を果たしていたのかな?とは、自分ももっと関心事として追わねばならなかったなと、今更ながら反省していたタイミングでの今回でした。
今回の件も、結局は予定通りに試合が開催され、クラブやJリーグとしては問題なかったのだから、今のままではこれで終わってしまう。そうではなくて、Jリーグを、日本サッカーを構成する重要なステークホルダー(なはず)に対して重大な問題があったということは、これはもう当事者が主張するしか無い。
具体的には、選手寿命を脅かさない過密日程の解消、規約上での試合前移動の柔軟性やリーグからの補償など。サポーターに対する規約化は別に必要ないけど、提供する体験価値の向上という意味ではリセール・払い戻し制度の強制化、あと単純な話としてリーグを仕切る立場として当たり前の公平化・透明化は求めていいでしょう。
FC東京は先ほど、本件についての意見書をJリーグに提出したと発表がありました。
クラブがこうした主張を公にしたのは驚いたし、内容も含めて素晴らしい表明だと思います。正直、こんなキッチリやらないと思っていたww(だからこれを書いていた部分も非常に大きいww)
けどここまでの整理を軸に真面目に考えると、この件とは別で、選手会も意見を出すべきだという考えには変わりありません。FC東京選手会の動きは、クラブの今回の行動に内包された(されてしまった)としても、FC東京が今回出した意見書については、提出先のJリーグは勿論、日本プロサッカー選手会も反応を示すべきでしょう。それは現在の日本サッカー界のパワーバランスが歪なのだとしたら、その是正のためにも尚のことです(実際に歪なのか、いや実は適正なのかは自分には分からないから、ここは妄想の話)
事の根っこが1リーグ20チーム化による日程問題であり、また昨今の日本の気候状況を考えれば、近い将来また同様の問題は必ず起こるでしょう。
FC東京が正式に意見書を提出してくれたことで、本件もこれから展開があるかもしれないし、無いかもしれない。けどその動向を注視し、当事者だからこそ出来る振る舞いを続けていくことで、「未来の当事者」に向けて何かしらのアシストが出来るかもしれない。
いちサポーターとしてはそう願いながら、今回の件に関する各所への抵抗と、サッカーメディアに対する絶望を振り払う意味で、自分が実際に観たこと思ったことを書き残した次第。いかんせん文句だけはいくらでも出てきちゃうタイプなもんだから、ウダウダと長くなってしまったのは申し訳ない限り。