FC東京アカデミー応援企画2023ありがとうございました+FC東京U-18最終戦こう戦う

【青赤アカデミーのプロフェッショナル論】

 

夏の全国大会、クラブユース選手権U-18において、今年のFC東京U-18は堂々の準優勝だった。決勝の舞台が西が丘サッカー場であったこと、またYoutubeでのライブ配信もあったため、今回の成績は既に多くのサポーターが知るところだろう。

だがもしかしたら、普段からU-18を気にかけているサポーターほど、今回の成績を不思議にも感じているかもしれない。今シーズン開幕前の東京都クラブユース新人戦は、3位決定戦で町田ゼルビアユースに0-2で完敗し、4位。高円宮杯プレミアリーグEASTでは、公式戦を半分消化して現在11位と降格圏内に位置している。

苦しい成績を知っている人ほど、クラ選での驚きは大きかっただろう。かく言う自分もその一人である。今シーズン全ての試合を見てきた訳ではないが、その観戦を通しても「負けに不思議の負けなし」な試合が多かった。不用意な失点、終盤での失点で勝ち点を自ら手放す試合も続いた。

そんな状況の中で関東予選を勝ち抜けたのは、実力だけでなく幸運とも思えた。ヴェルディレイソルも、数多くの強豪が敗退した今年は尚更だ。

せっかく得たチャンス。彼らには、このクラ選の夏を通じて、せめてシーズン後半を巻き返す何かを掴んで欲しい…なんてことを思っていたら、何かどころか、カップを掴みかけたのだからそりゃ驚く。

 

チーム造りの苦労は、クラ選決勝に至るまでの各試合でも現在進行形で見て取れた。

クラ選のYoutubeライブ配信では、マイク位置の関係から奥原監督の指示の声がよく聞こえた。今年のクラ選における奥原監督の指示は、とにかく「頻度は多く、具体的かつ細かい」ものだった。

―自分が休む前に、先に準備を終えろ。守備位置に立ち、味方を動かし終えてから休め。相手のリスタートには誰よりも早く警戒しろ。球際での出足を制するために、常に予測をし、予測を更新し続けろ。様々なモノ・コトに対しての感度を高めろ。自らの特長を強く出せ。必要な会話を絶やすな。全てにおいて謙虚であれ。

「どのようなサッカーを行うのか」以前の、「どんなサッカーをやるにせよ」な内容と言えるだろう。大会を進む毎に、徐々にこれらがチームに浸透してきた実感は確かにあるが、もちろんまだまだ足りない。R16の川崎U-18戦も、準決勝の清水Y戦も、決勝のG大阪Y戦も、どれも終了間際に失点を喫している。事象だけを見れば、これまで苦しんできたプレミアEAST前半戦と何ら変わりない。

それでも、浸透してきた何かによって、クラ選では目の前の試合の勝利を手繰り寄せ「自信」を掴んできた。それが「勢い」となり、さらなる結果を生んできた。夏の短期間でチームは強烈に循環し、最終的には準優勝。自分程度の想像を大きく超える成果には、お見事としか言いようがない。

 

クラ選の間、徐々に強固に浸透していった「一体感」。思えば今年はずっと、一貫してその「種」が撒き続けられていた。

ホーム小平グランドでの公式戦では、今年から小学生の声援が多く響くようになった。スクール生が、名前はわからなくても憧れのユニフォームに身を通して戦う“身近なヒーロー”として「XX番がんばれ〜」とU-18の選手を応援するようになった。

そしてクラ選直前には、U-18のメンバーがU-15深川・むさしの関東予選を観戦するために深川グランドを訪れたりもした。その折、観戦してるだけじゃいられないと、後輩である現役U-15選手たちと一緒に応援を始めた彼らだが、当時の自分と重ね合わせながらどんなことを考えていただろう。

FC東京アカデミーのピラミッドを構成するスクール生が、U-15の選手たちが、そしてU-18の選手たちが。その床と天井をぶち破って、同じ青赤の仲間としてお互いを自然と応援する。コロナ禍を経てよく見られるようになった光景は、偶然によるものではない。今年から小平グランドにはスクール生向けにU-18選手を紹介する看板が掲示されるようになったし、U-18選手たちのU-15観戦は貴重な土日の時間にチームスケジュールとして行われたもの。ベンチ外の選手をゴール裏に連れていき、監督からサポーターに「コイツらに応援教えたってください」と頼まれてしまうシーンなんかもあった。全てが、アカデミーとして明確に「仕掛けた」ものだ。

アカデミースタッフたちがそこに込めた意図。それはサポーターだからこそ胸に沁みて伝わってくる。

 

試合に出た選手と、出れなかった選手。ミスをしてしまった選手と、それをカバーし取り返す選手。独りでは決して出来ないのがサッカーだからこそ、お互いがお互いに託し、託されることで初めてチームは成立する。

想いを託すのは仲間だけではない。家族・友人、地域・世代・クラブ、日本、そして世界。身近な存在から、何の関係もない他人までもが、それぞれの想いを選手に託す。しかもサポーターは身勝手だから、速い・強い・上手いだけの選手なんかには託さない。スタッツ、人となり、情熱、振る舞い。サポーターは選手のことをよく観るし、託す選手を精密に「選ぶ」。

プロサッカー選手を育てるアカデミーにおいて、“プロフェッショナル”とは果たして何なのか。

それは、想いを背負えること。背負って戦えること。何より、背負った想いを自らの強さに繋げてくれることだ。だから、「想いを集めて背負える量」が“プロ”サッカー選手の価値を決めるし、良い“プロ”サッカー選手とは「託し甲斐がある選手」のことなのだと思う。

いち選手として、託し託される意味やその強さを体感できた今年の夏は、最高に貴重な経験だった。だからこそアカデミーとして、残りのシーズンに、来年に、そして未来へと、大切に繋げられなければ意味がない。

故に、はたしてこのチームが真に強くなったのかは、準優勝という結果を前にしても正直まだよく分からない。今できたことを、続けられるのか、と。

我々は期待する。クラブユース選手権準優勝の彼らを。彼らならば…と、勝手な期待を、今までよりもさらに彼らに託してしまう。

けれどそれは、可能性を示し、新たな、より大きい期待を集めてみせた彼らの成果でもある。あの一瞬においては、FC東京U-18は最高にプロフェッショナルだった。

 

年間リーグは「勢い」や「気分」だけでは戦えない。今日の勝利で得た自信は、明日の敗戦で簡単に崩れてしまわないか? これからも幾多の山谷を超えて、それでも揺るがぬ「一体感」を続けることこそが、何よりも重要であり難題だ。

だから今シーズンを終えた時、プレミアリーグEASTとT1リーグの結果を観て改めて考えようと思う。彼らはプロフェッショナルで「あり続けた」のかを。

 

そんな最高にキツい課題に、自らたどり着いた選手たちのことが、正直を言えば今は最高に誇らしくもあるのだ。

 

クラブサポートメンバーが廃止になって1年が経ちましたね、皆さま如何お過ごしでしょうか(時候の挨拶)。

2023年のユース応援企画も無事に行うことが出来ました。参加いただいた皆さま、本当にありがとうございました。そして今年も、Tシャツと一緒にレポートを同封する機会を頂き、今回は上記の文章を送らせていただきました。

 

U-18のクラ選が好成績だったこともあり、知り合いからは「今年は書きやすいでしょ〜!」なんて話も貰ったりしていました。ただこの「クラ選準優勝」という結果が、シーズンの結果を保証してくれる訳では決して無いし、そんな甘い話でもないとは思っていました。その辺のニュアンスは、文章にも込めたつもりです。

実際、夏が明けてリーグ再開したFC東京U-18は、負→分ときて、昌平高校に0-6の大敗を喫するわけです。再開初戦の試合後には、奥原さんも「ピッチ内でもピッチ外でも苦労が絶えなかった」と吐露していたのを観るに、選手も、監督・スタッフも、それぞれに『プロフェッショナルとは?』を引き続き自問自答してきた今シーズンだったのだと想像します。

様々な紆余曲折がありながら、先週末の第21節:対流経柏戦を1-1の引き分けに終わると、他会場の結果によりU-18はプレミアリーグ残留を達成することができました。

ただ文章内で「プレミアリーグEASTと『T1リーグ』の結果を観て」と書いた自分の思いは、ここは正直かなり強く込めたつもりです。プレミア残留は非常にめでたいけれど、それと同等くらいに自分は、Bチームが参戦している東京都1部リーグ(T1)を注視してきました。細かい言及はしないですが、ここでもっと「成熟曲線」が見られなければ、来年も同じ状況を繰り返すことになりかねない。Bチームも残り1試合、まだまだやれることは多くあるはずです。

 

また、11月はU-15深川・むさし両チームの試合を多く見ることができました。

一足先に関東リーグ公式戦は既に終了。むさしは残念ながら2部降格、深川も他力で何とか残留を決めた状況で、こちらもU-18同様に苦しい一年でした。そんな中、最後の全国大会「高円宮杯U-15」出場に向けて、関東予選に挑む両チーム。2週間で土日→土日のトーナメント、4連戦4連勝で初めて全国への切符を手にする過酷さ。タフな予選に挑む両チームの戦いぶりは、どちらも素晴らしかったです。

U-15深川は、前線の裏抜けが質も回数も明らかに改善され、また出し手との意思疎通も相まって多くのゴールを奪えていました。一方のU-15むさしも、中盤でボールを受け取ると相手プレスをしっかり外してから展開、落ちてきたFWを絡めながらトライアングルでゴールに向かう流れが非常に流暢になっていました。またどちらにも共通して言えるのは、ボール奪取の回数が格段に増えたこと。球際だけでなく、そこに持ち込むための予測や出足、縦の味方同士で相手をサンドして奪い「切る」ところなどが、以前に比べて見違える様でした。

深川は全国大会出場が決定。むさしは最終戦で延長の末惜しくも破れ、関東予選敗退でシーズン終了に。

特にむさしは、リーグ降格が決まってしまった次の公式戦が、選手たちも吹っ切れたのか凄くいい試合ができてたと事前に伺っていたけど、それが継続できているのかなと納得の良いチームでした。それだけに「もう1ヶ月だけ貰えれば、もっともっと、さらに劇的に変わりそう」な未練をどうしても抱いてしまう…けど、それがサッカーだし、悔しさを糧にサッカーはこの先もきっと続いていくはずでしょう。逆に全国出場を決めた深川には、この1ヶ月の“アディショナルタイム"を使っての更なる変化に期待します。全国大会初戦は12/16(土)です。

 

話を戻して、残留を決めたFC東京U-18

今年の最終戦は今週末12/3(日)13:00キックオフと、トップチーム最終戦と同時間帯となります。相手はリーグ優勝がかかった首位:青森山田、ここにきて最高に痺れる舞台となりました。

勝敗とは別で勝手な希望を言えば、残留も無事に決まって安心して臨める久々の公式戦でもあるので、先ほどのむさしの話じゃないけれど…例えば自分が一番良いと思ったプレーを、何も心配せずに最大限に発揮してみて欲しいなと願っています。まぁそんなプレーをしてみたせいで、後で奥原さんにバチボコ怒られるかもしれないけれどw

けどそんな大胆にチャレンジ出来る状況を掴んだのは、紛れもなく選手自身でもある訳だから。そこは堂々とプレーして(かつ奥原さんに「ぐぬぬ…」って思わせるくらいに良い感じに成功させてw)欲しいところです。

そして残留を決めた前節の流経柏戦では、試合後挨拶の時点では本当に残留が確定なのかがよく分からず、何だか雰囲気ヌチャァっとなってしまったのでw その分もと言ってはなんだけど、最終戦に勝ったとしても負けたとしても、最後は胸張った姿で挨拶できる事を望んでいます。繰り返しにはなるけど、その資格は十分にあると思うので。

今年のFC東京U-18の選手たちは、俺たちは、こんな選手たちなんです。最後にして、最大のプレゼンテーション。これもまた、プロフェッショナルの務めでしょう。シーズンクライマックス、消化試合なんてこの世に一つたりとも有る訳がないのです。