アッレグリの3センター論から考える、今季のFC東京 -G大阪戦

開幕前に読んだこの記事が、かなり刺激的でかつ理解が深まる好記事だった。

【コラム】アッレグリの3センター論から、アジアカップでの敗北を再考する。(前篇)
http://qoly.jp/2015/03/03/column-yuuki-three-central-midfielders-vol1
【コラム】アッレグリの3センター論から、アジアカップでの敗北を再考する。(後篇)
http://qoly.jp/2015/03/04/column-yuuki-three-central-midfielders-vol2

マッシモ・フィッカデンティ監督の就任により、昨年からFC東京は3MFシステムを重用している。1年追いかけて、ようやく自分も理解をしつつあるのかな…といったところで、この記事は非常に面白かった。

これを現在のFC東京に当てはめると、個人的にはこう振り分ける。自分が思う序列順に記載してみた。

自分の想いは、開幕戦の羽生先発で早速崩れたわけだけどww そこだけでなく、至る所で選手特性とのミスマッチというか本来論を思ってしまい、当てはめようとすると何とも悩ましい。秀人はやはり「8番」かもなとか、当てはめづらさが今の幸野の難しさを表しているよなとか。ただ、各ポジションに当てはめられた選手の、これから克服すべき欠点、伸ばすべき長所も見えたので面白くもあったが。秀人はとにかく受ける形を含めたテクニックだなとか、梶山が果たして周りを動かせるようになるのかとか、野澤のCB経験も「4番」に活きる部分もありそうだとか。


読んでいる中で最も注目し、また今季のFC東京を左右すると感じたのが「10番」の役割である。

マッシモと1年間戦ってきて、監督としての彼の「程度」もある程度見えてきて。その中で、彼に「攻撃を創る」という部分は恐らく無いだろうことは割とハッキリしてきた。繋いでいく時のメソッドが小平で落とし込まれているわけではないし、PSM福岡戦の2点目でもクロスに対して中3枚の動きはニア・ファーが仕込まれている気配は感じなかった。「サイドからクロスをあげればフィリッポ・インザーギが(勝手に)決めてくれる」「中央はロベルト・バッジョがイマジネーションで(勝手に)崩してくれる」そんなカルチョの国らしさを感じる、彼らに任せてその組み合わせの妙もしくは適切さ(マッシモの言うところの「オーケストラ」任せ)をマッシモが監督として的確に見極め、決断する。それがマッシモ監督の攻撃構築の限界だろう。

(とは言え、攻撃構築にメソッドを持つ監督なんて、それこそ全世界を見てもマイノリティだろうし、世界的には「そんなもん」な気も最近してる。日本サッカーはそれを当たり前に持ってて当然だろうと監督に『求める』けれども。)

その中で、2015年のFC東京がいかに得点を取っていくのか、という際に「戦術:太田宏介」だけで終わらせない何かが、果たしてどこにあるのか、どこにマッシモが求めているのかと妄想すると…それはアッレグリの3センター論で言うところの「10番」だろうと。

そう考えると、マッシモが三田を重用するのも分かる。ドリブルでくぐり抜けていく力強さと、外からでも得点が取れるパンチ力。三田が上手く4人目として前線のオーケストラに絡んでいけるか、そこを仕立てていくことで得点力アップを睨んでいる。それがマッシモの「攻撃構築」なのだろうと。

しかし、そのイメージを邪魔してしまうのが、昨年のマッシモトーキョーを引き上げた4-3-1-2つまり河野システムである。


4-3-1-2を再考してみる。

アッレグリの3センター論で言うところのアタッカー3人(「7番」「9番」「11番」)を、横並びにせずに、1枚下ろしてトップ下を用意する。これが、河野を使うためにマッシモが決断した想定外のシステム変更だったことは周知のことだが、この想定外なシステム変更を成立させた重要なピースが他にいる。

単純にこのシステムは、ワイドに開いていたアタッカー3枚をトップ下含めて中央に極端に寄せる形となる。3MFは自ゴールを守るためにも基本陣形としては中を閉じる。サイドに人を置かないのが、4-3-1-2というシステムの前提になる。

それでもサイド攻撃が成立するのは、太田宏介の攻撃力の賜物である。つまり、4-3-1-2成立のためには太田宏介の存在が不可欠ということ。

3MF論の選手理解が乏しいマッシモトーキョー1年目において、河野の存在が「10番」の役割を助け、またその河野システム成立を太田宏介が支えた。今思えば、幸運と「マッシモ1年目らしさ」が生んだ、河野システム4-3-1-2だったのかもしれない。

じゃあその河野システムが、何故今季の攻撃構築を邪魔をしているのか?その答えは既に言ってしまった様なものだが、結局「10番」が「10番らしく」プレーするエリアを河野に譲っているこの河野システムが、「10番」の役割をぼやけさせているということ。アッレグリの3センター論からはプレーエリアの前提が変わった「10番」は一体何をすればいいのかと。河野の存在がピッチに「10番」の動きを助けていたのが昨年だとすると、今年はその逆となってしまう。

そうなると、そもそも4-3-1-2の河野システムは拘るべきシステムなのか?その欠片を感じたのが、2015年明治安田生命J1リーグ開幕戦、対G大阪戦だったと思う。


前半の東京は、河野システムのキーである河野と太田が悪かった。河野は前田の使われ方の問題の余波なのか。太田は既報の通り左膝裏を痛めた影響。さらに言えば「10番」として出場の羽生もその役割を果たしたとは言いづらい。結局太田はHTで交代、そうすると河野システムの弊害としてサイド攻撃で深くを抉ることができなくなる。0-2の劣勢、点を取りに行かないといけない中で、河野が悪いこの日は自然と「河野システム」に拘る必要がなくなった。

林容平の投入で4-4-2に変更。攻撃に、より傾斜する。さらにオフシーズンから好調と聞く東慶悟SMFに投入。不格好ながらも、前への勢いは増し、そしてスーパースターが輝きドローに持ち込んだ。スコア的には、河野システムを捨てたことが功を奏した形になる。

河野の存在が「10番」に蓋をする、という意味で言うと、河野システムはざっくり「3枚で攻めてもらう」形であると言える。厳密には太田を入れた4枚になるが。ただそうなると、攻撃を創る4枚=アタッカー3枚+太田となれば、距離感が不揃いになる関係で少なくとも起点とラストパスは太田に偏らざるを得なくなる。その幅の狭さはどこかで必ず壁にぶち当たるし、その匂いが既に「戦術:太田宏介」という言葉に現れ、どことなく昨年終盤⇒オフシーズン中から周囲も感じていたところかもしれない。

対して、ワイド3トップの4-3-3もしくは4-4-2は、ざっくり「4枚で攻めてもらう」形となる。3アタッカー+「10番」なのか、もしくは2FW+2SMFなのか。どちらにしても距離感が配置上より近くなることから、起点もラストパスも終点も選択肢は広がる。4-3-3を実現するのにはウイング系アタッカーが武藤・石川・平岡の3枚しかいないから、現実的にはMFを使いやすい4-4-2を選ぶだろう。ニュートラルな4-3-1-2と、攻撃偏重の4-2-2の使い分けが今季になるのではと予想。守備偏重でも…やっぱりサイドを埋める4-4-2か。じゃあもう毎回4-4-2でいいんじゃないの?ww なんだよせっかくアッレグリ先生に3センター論を教えてもらったのに…

ニュートラルな4-3-1-2においては引き続き、あくまでアタッカー3枚+αの部分を太田ではなく「10番」とする形を構築するのだろう。しかし個人的にはそこまでして拘る必要があるとは思えないし、そのメソッドがマッシモにあるとも…「オーケストラ=ポポイズム」と履き違えつつある気配も匂い始めてるし…そもそも米本羽生コンビの際には、羽生が「8番」勘定されている気配も正直あるんだよな…米本「10番」勘定をマッシモはいつ諦めてくれるんだ…

などなど。そんな諸々を妄想し始める2015年が今年も始まりました。


サッカーは振り子の様に左右に行ったり来たり。河野システムで3枚で攻めたからこそ、昨年の失点数減を生み、また得点数減ともなった。そして今年はその振り子を逆に傾けるのならば…と、そのまま振り子に自由にさせていてはまた繰り返すのみ。強いチームとは、振り子に逆らい実現させるもの。そんなチームに、FC東京がなれると願いながら…

少なくとも、よっちがFC東京にいるまでに何とか!(切実)