季刊サッカー批評 issue 34 「Jリーグはつまらない」なんて誰が言った? (双葉社スーパームック)
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2007/03
- メディア: ムック
- クリック: 2回
- この商品を含むブログ (14件) を見る
とにかく思ったのは、オシムは「チームの引き出しを増やす事」を何よりの最優先で考えているのだと。今でも進むサッカーの進化。サッカーのためのあらゆる哲学。サッカーの本質とその難しさ恐ろしさを多く知ってしまった監督。サッカーという庭の中で数多く溢れる『雑種』に対応するために必要とした選択肢が、その全てに対抗してやる!という気概で引き出しを作り続けるという作業だったのだろう。個人から生まれる引き出しに頼る事への限界を感じ、11人が揃った事で出来るさらなる引き出しの必要性を痛感し、その発想軸の中で生まれてくるメリット・デメリットで選手を選考する。その上でじゃあ中村俊輔はどうなんだとかそういった話になる。海外組と単に括って招集がどうだとか言う事の愚かさです。オシムの選考に千葉の選手が多くて「千葉枠」的な揶揄があるけど、コレは絶対にない、チームの引き出しのためなら愛弟子でも容赦なく切る事をしてくるだろうという印象は持ちました。
現代サッカーは情報戦だと強調する。それは徹底的に相手をリサーチしどんな種類の生態かを把握する事で、相手の引き出しを想定し新しく必要な引き出しをイメージして対策を取る事の優位性から来る信念。それでもさらにその上で実際に起こる矛盾すらチームは対応を強いられなければいけない。尚更知る事になる情報という武器の重要性。
そんなオシムから感じ取った哲学からぼんやりと浮かんだフレーズが『忍者』。とても陳腐な発想ですが。しかし、凄い日本的。
臆病、なんだと思う。その場で買える最高の装備を揃え、どくけしも大量に買い、全てを揃えなければ新しいダンジョンには進まないと言うか。ただこんな例えをしたら「ダンジョンは準備が整うまで待ってくれるじゃないか。サッカーは待ってくれない」と怒られそうだが。
臆病、になっていってしまったのかもしれない。少なくともオレよりも遙かにサッカーの本質に近づいている・近づこうとしているある監督が、その結果として自分が臆病になる事を選択した、と言った方が正解に近い気がする。ただ、これはもちろんその監督自身の人生も合わさって出来た感情である事は当然の事実。やはり、オシムものの本を読むなりして監督の人生なりを知る事も要素として必要だろう。
…とここまで書いていて、う〜んオシムってしかし凄いサービス旺盛な人だなぁ、と(笑)自分をこれだけさらけ出して、中村憲剛への評価のくだりとか見ても、言ってくれてるしね。
一度さらっと読んだだけですが、これから何度かは繰り返して読んでみようかと思っています。是非それぞれの人たちがそれぞれでこのインタビューを編集し、それを見てみたいなと思います。最後に一番印象に残ったフレーズを。
「コンセプトが共有されてないと、リスクを冒すサッカーもただの無謀な冒険になってしまう」
「ただ追い越していく、そして追い越す選手がボールを受けてセンタリングというのは単純なプレーです」