ユース応援企画ありがとうございました+高円宮杯プレミアリーグEAST FC東京U-18こう戦う

 FC東京U-18として悲願であった“真の日本一”。しかし埼スタでの戴冠の翌週には、早くも2018年度チームが立ち上がり、新たな活動がスタートしてしまう。余韻に浸る間もなく、次から次へとスケジュールが進んでしまうのが育成年代の常である。
 最初の活動として、チームは愛知遠征を実施。名古屋グランパスの敷地内を利用し、全国から集められた強豪チームとのTMを行う機会に恵まれた。その遠征のラストを飾る対戦相手は、ついその前週に埼スタで頂点を賭けて戦ったヴィッセル神戸U-18。結果は1-2での敗戦となったが、そのスコア差以上に神戸とは実力差があったように伺えた。
 ヴィッセル神戸U-18。あの日の埼スタでスタメンを張ったメンバーの内、半数近くの5名は2年生の選手だった。愛知遠征では、あのロングスローのこぼれをプッシュした先制ゴーラーなど、その内4名の選手たちがこの試合でもスタメンとして出場し活躍。前年チームから多くの選手を残しているだけあってチーム力も相当なもので、FC東京U-18としては立ち上げのタイミングで、分かりやすい物差しを突き付けられる恰好となった。

 つくづく、育成をどう評価すべきかというのは難しい。
 乱暴な言い方をすれば、人は勝手に育つものだ。未成年がたらふく飯を食えば身長は伸びていくし、体格は出来上がってくる。高校生活での様々な経験がモノの見方に新たな切り口を与えもするだろう。こうした一日一日の寝食、人生経験も含めて、置かれている環境がサッカー選手としての考え方・スキルに“勝手に”影響を与えていく。
 その中で、アカデミーという組織が、果たしてどう評価されるべきなのか?
 例えば、放置しておけば勝手に5%伸びていた人が、アカデミーに所属することにより、どれほどのプラスαがされるのか。アカデミーのおかげで、それが5%ではなく6%になるのか、そしてFC東京アカデミーだからこそ7%となるのか。我々は本来、その1%の差異を見極めて評価をしなければならない。
 さらに言えば「U-23」という、FC東京アカデミーにとって貴重な環境が、選手の伸びしろを早々に埋めてくれているのは間違いないとは思うが、しかしそれはもしかしたら、ただ選手の能力を早熟に食い潰しているに過ぎないかもしれない。伸びしろを埋めるだけでなく「選手の伸びしろを更に伸ばす」ことが、果たしてアカデミーは本当に出来ているのだろうか?
 それらの見極めはやはり、今この瞬間の“結果”だけでは測り様がないのである。

 FC東京U-18が挑む高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ2018は、夏の中断期間までに半分の9試合を消化。1勝3分5敗、10チーム中9位という結果は、確かにFC東京U-18にとって不本意な成績だろう。
 それもあって、チームとして挽回の決意高く迎えたクラ選の夏。夏の全国大会“クラブユース選手権”は、グループリーグを2位で突破し決勝トーナメントに進出。Round16でアビスパ福岡U-18に0-1で敗戦し、ベスト16で大会を終えた。
 思い描く勝利が残せていないのだから、勝利のためのプレーが出来ていないと理解するのが現時点では正しいのだろう。

 以前、中村俊輔が自らの長所である“視野の広さ”について、この様に解説をしていた事を思い出す。曰く、「視野の広さは、ボールを蹴れる距離次第」と。
言われてみれば何とも当然の話ではある。人間は基本的に、自分が出来ないことをやろうとはしない。フィールドの横幅68m分だけボールを蹴ることが出来ない人にとっては、プレー中に「サイドチェンジ」が選択肢に出てこないのは当たり前だろう。
 また、選択肢が出揃ったところで、そのプレーを選択するかどうかとなれば、また別の話となる。68mを蹴る事自体は出来ても、じゃあ試合中にピッチ上で、相手と対峙したその場面その瞬間で、そのプレーを選択して果たして成功するのか? 選択の根拠が問われる。

 練習で磨き抜いたプレーのみが選択肢となるし、
 成功すると感じたから、その場で選択し実行される。
 失敗するかも…と感じたら選択などされないし、
 出来ないプレーはそもそも選択肢として出て来もしない。

 中村俊輔がここで語ったのは、ボールを蹴り込んで練習することで、その選択肢を自信の持てるカードとして磨き、育ててきた“自負”。そして、一流の手札をピッチ上に並べて、自信と予測と遊び心をもってプレー選択を繰り返してきた経験だろう。

 勝利のためのプレー。それは、もう半歩の深い寄せ。ボールがどう転がるかの事前予測。余計なバウンドを味方に押し付けない、パスの質。
 今のU-18において、それぞれのカードがまだ不十分であるのは間違いない。けれど、各カードが磨かれてきたのも、また、間違いない。
 愛知遠征では、神戸U-18を相手にして単純なミスが多く見られたし、プレー選択も消極的なものばかりだった。それが今では、スタッフから厳しく言われ続けてきた事が自然と実行できるようになってきた。本来以上の上位環境でも必死に食らいつくことで、自らの身の丈が環境に合うようになってきた。ワンプレーの成功に対して、気迫が素直に表出される様になってきた。
 だからこそ、結果が簡単にはついてきてくれない事がもどかしくもある。

 十分な圧力を相手にかけていたシーンはこれまでもあった。相手をこじ開けるだけでなく、相手のミスを誘えていい圧力でもあった。それはカードが確かに磨かれてきた証明でもあったと思う。
 それでも相手も安易に崩れてはくれない。PA内では不用意なファウルも、事故的なエラーも「起こさせない」。やはり高円宮杯プレミアリーグは、弱いチームが一つもないタフなリーグだとよく分かる。「サッカーは甘くねえ」と、今年ほど痛感したことはない。

 恐らく、結果が博打的に転がってくるのを、そしてそれを元手に自信を手にしようと待ってても、一生そんな機会なんて訪れやしない。だから、もっと自ら試みて欲しい。その根拠が、まずは嘘から生まれたものでいい。でっち上げでいい。まともな根拠など無くても、まずは強烈な意志、そして執念を表現すること。選択のベクトルをより協調的に、より前に、よりゴールに向けて。
 その繰り返しで、ようやく小さな結果が転がってくるかもしれない。嘘っぱちな自信も、自然とホンモノになってくるはずだ。


 今年「カード」が磨かれてきた事実を知っているから、ぼくらは期待を止めないし、そこに、勝ち負けではない「クラブの誇り」を強く感じている。だから今年のチームが好きだ。もちろん毎年どの年代のチームも好きだし、そこに優劣はないのだけど。ただ、どの年代にもなかった独特な「好き」を感じているのは事実だ。

 今の結果に一喜一憂しないで欲しい。選択の連続、その積み重ねに対して常に己を出し尽くして欲しいし、「結果」よりも「成長」に胸を張って欲しい。そして今度は「選択」に成長を示して欲しいと願う。

過去の選択の積み重ねが「今」なのであれば、今の選択の積み重ねが「未来」を形作っていくはず。

Life is a series of choices.
人生とは選択の連続である。

クラブの誇りを示す「選択」を、これからの彼らに期待する。

 

 今年も無事に、FC東京アカデミーを勝手に応援する企画を実施することが出来ました。そして今年も、U-18向けに↑の文章をお送りさせていただきました。

言ってしまえば、過去2年は成績的にも注目を浴びやすかったし、また建英のようなメディアから注目を浴びやすい選手もいた。それに比べれば、今年は成績的にも苦労をしている状況。

それでも、こうやって無事に実施出来たことは個人的にも非常に嬉しく思います。アカデミーが存在する意味や、自然と目を引く彼らの魅力が、徐々にですが伝わってきつつあるのを感じています。

それらのお披露目の場として、もしくは"上"と"下"とを繋ぐ存在として、”FC東京U-23”が機能しているのは間違いないでしょう。U-23については賛否も、メリットデメリットも、実際に問題もあるけれど、こういった視点においてでも、やはりU-23の存在は貴重であり有難いものだと思っています。

もちろん、U-23という場だけあっても意味は無く。そこでどの様にサッカー選手として主張してみせるか?を今年も選手たちが全力で戦ってきたからこそでもあります。


Jユース杯ではヴィッセル神戸U-18に敗戦。

こういった文章を書いた身として、ここで神戸と対戦できるのか…と注目していた試合ですが、内容はお互いにかなり悪いものでした。

戦いが進んでいく中で、東京はセカンドボールの争いを捨てて、相手にまずボールに触らせたその後、言うなればサードを”狙おうとする”姿勢がすごく目立ち始める。もしくは、バウンドボールの処理を手の届きやすいレベルにまで減衰するのを待って、処理しようとするシーンも。

今年を象徴するシーンだったと思います。出足を生むための「予測」と「準備」にそもそも負けて、自分の文章で言うところの「選択」から逃げていた。余計に相手を受け過ぎる事で、メンタル的な駆け引きが常に”後攻”になってしまった。

方や、その後の高円宮杯プレミアリーグEAST再開2戦、浦和ユース戦と市立船橋戦ではそういった姿はありませんでした。前で潰す、走りの気迫で最低限相手のミスを誘う。囲んでボールを奪い切る部分はまだ、相手を逃がしてしまう場面もありましたが、前向きな選択が出来ていた様に見えました。

もちろんそれが、時系列に沿った右肩上がりかと判断するのは早計であり、実際は「選択」の波に苦しんでいるのは今も同じくでしょう。その不安定さが、成績の不安定さに直結し、リーグ順位も降格圏内から抜け出せず。リーグ戦の順位というのは、やはり常に正しいものだと思います。

「プラスの選択」をいかに増やすか?場面単位で。試合単位で。年単位で。いかに連続させて、それを”安定の土台”とした上で更に高みへ…。選手たちは今も必死にもがいている最中と言えます。

 

ただ思えばこれまでの代でも、彼らが必死にもがく姿を見続けてきた様なものでした。今年と変わらず、みんなもがき続けていた。

前回プレミアリーグEASTからプリンスリーグに降格したのは橋本拳人の代でした。今ではTOPでスタメンを張って頑張っている拳人も、U-18では、そして卒業後もレンタル先の熊本で、ずっともがいてきたから今がある。

トップ昇格出来ずに中央大に進んだ矢島輝一だってそうだし、むしろU-18で素晴らしい結果を残せた品田愛斗だってそう。卒業していったみんなが、それぞれの場で引き続き、変わらずもがき続けている最中でもある。

何より、FC東京U-15深川で出番に恵まれず、昇格が叶わなかった渡辺剛が来季FC東京の新加入選手となったのは最たるものでしょう。

 

今年の彼らは、上手く行かなかったことも確かに多かったけど、もがくことに対しては常に全力な彼らだったと思います。

その”方角”や”出しどころ”、”怯んでしまうところ”といった葛藤をずっと見てきたからこそ。それが徐々に前を向き始めてるなと外野からも分かるからこそ、全力でもがき戦ってきた彼らはまず凄いなと、そしてあともう少し、このチームを見続けたかったなというのが自分の本音です。

「それは来年も続く苦しみなんだよ」というのは、今の彼らには残酷な現実かもしれないけど…方や「続けていればこそ」ってのをアカデミーの先輩方が示してくれた心強さもまた、確かなことだと思います。


プレミアEASTもいよいよ最終節。プレミア残留が叶うのは「自らが勝利し、かつ他会場の結果次第」。

となれば、ここぞとばかりにFC東京お得意の「染み付いた他力本願精神」を発揮する時ではあるのですが…その前に、まずは目の前の試合でしょう。

柏U-18は前回対戦で1-6と大敗を喫した相手。残留争いのため以前に、返さなきゃならない大きな借りがあるはず。

もがいてきたのは柏U-18とて同じでしょう。成長してきたのは何も自分ばかりじゃない。彼らの”聖地”日立台と、舞台も最高のものを用意いただきました。

 

今年のU-18も最高でした。毎年言ってますが、毎年のように最高でした。

これまでと、これからを、お互いに示し、ぶつけ合う。そんな試合を期待します。