高円宮杯準々決勝4試合完全レビュー!の予定でしたが…

予定を変更して3試合のみで。理由は分かるでしょ?まぁやる気なんてものはチンチンに無くなった罠(笑)

  • この程度では技術はぶれない 米子北-三菱養和

会場のひたちなかはキックオフ時刻に近づくにつれ、強さを増す雨に加え、雷まで鳴り始めてしまった。さすが茨城…と思いつつ、10分押しという判断で何とかキックオフ。実際はこの件はもっとシビアに取り扱うべきなのはこのブログでも何度も取り上げたけど、例えば今日みたいにキックオフ前にこうなるとまだ判断がつきやすい。もちろん、心の準備をし直す必要性など、諸々の影響は含まれざるを得ないわけだけど。

とりあえずは始めることのできたこの試合。その後コンディションは「雨のみ」となり、ひとまず開催の面と選手の危険は回避されるわけだが、それでも雨は強く降り続け、水たまりが出来るほどではないにしろプレーには影響が出かねないものとなった。

しかし、三菱養和の技術はぶれない。変わらず、パスワークと個人技。攻撃で相手を追い込む。


結果として米子北が負ける試合を見ることになって。印象としては東京が2−0で勝った試合に近い。

対東京戦では、東京お得意の「守備での追い込み」に米子の技術がぶれ、生命線のFWへの即フィードがぶれたこと+収まりかける際のCB平出・松藤の機動的守備で前後を潰されてのシャットアウトだった。

この試合もその印象。まず後者の点でいえば、養和には4内堀と3中村が安定した仕事ぶりで空中戦を完全制圧。特に内堀は前育戦で非常にふがいない出来だった様に個人的には思っていたが、さすが見事に立て直してきた。この2CBに加えて、ビッグレフティの2早川にこの日は攻撃が冴えた5大野、さらにGK1原田を加えた「いつもの5人」の安定感が、しっかりと発揮されていた。
そして前者の部分。東京は守備で相手を追い込み、そして養和は攻撃の圧力で相手を追い込んだ。

中心はもはや1年の23田鍋。国体の東京選抜では10番キャプテンを務めたこの選手は、この大会でも随分な活躍をしてきたが、この試合ではまさに無双状態。

まずこの試合、米子北にはプランがあった。4-4-2の左MFにDF登録の16道下を起用、米子の左サイドは縦にDF登録の選手が二枚並ぶ形にしてきた。今までスタメンで出ていた8五十川をベンチに置いてまでのこの起用は、スコア的に耐えて最後に一矢を報いるためのゲームプランだったと思われる。そしてそのプランの軸は左サイドの守備強化、つまり養和の右サイドの田鍋対策だと言えた。

その「田鍋シフト」を、しかし田鍋はいとも簡単にぶち破ってしまった。1年ながら既に完成された体格。相手をいとも簡単にぶちぬく強烈なスピードに、ひ弱さや筋力がついてこれてない様子が全くない。だからブレーキも既に優秀で、簡単そうな切り返しでも確実に相手を置き去りにしてしまう。単純な当たりあいも当然、負けることは無くて。とにもかくにも「完成された選手」といえる田鍋が、米子のシフトをズタズタに切り裂き、強烈なプレッシャーを与え続けた。

養和の2点目は田鍋の突っ掛けから、ペナ内の7加藤とワンツーで侵入したのを倒されて得たPKを10玉城が決めてのもの。まさに「ファウルで止めるしかなかった」切れ味(と加藤の絶妙な時間差パス)だった。

他にも7加藤はイマジネーションが衰えることは無かったし、10玉城もこんなピッチコンディションの中でショートパス精度は冴えに冴えた。この環境で養和のテクがぶれることは何一つ無かった。

米子北としては、養和にこうされてはなす術なし。どうしようもない敗戦だった。残念だが、しかし今年の高円を盛り上げてくれたのは間違いなく米子のおかげ。彼らの残してくれたものは非常に大きい。あれをただのカウンター、縦ポンだと言ってしまうから、日本サッカーは勝てない。あのプレーから滲み出ていた「鍛錬の跡」に気付かない様じゃサッカーファンとは呼べないと思う。結果彼らの試合は4試合見ることが出来たが、どれも胸を張って良いものだった。これらを自信とし、それが技術のベースになれば、彼らはもう一段上に行ける。選手権での活躍には大いに期待したい、楽しみだね。


まぁ、しかし田鍋だった。養和で無くJユースだったら即トップ昇格してて良い。少なくともU-17に飛び級召集だろこの日見に来ていた池内さんヨォ!ってくらいの、強烈な衝撃。宇佐美や田中輝希何かが騒がれたのが昨年だけど、彼らよりもよっぽど実用的に使える、そして完成されてる。何よりこの大会で現在進行形で伸びまくっている。以前は15近藤との併用が多かったのが今や完全にスタメン獲ったからね(ちなみに15近藤も、他からみれば羨むくらいの選手)。

この試合での田鍋のインパクトが強烈過ぎて、自分はもはや正確な判断が出来ないが。多分この大会で田鍋は一気にヒーローになり、それに足るインパクトをこの先で残すに違いないと確信する。こいつはスゴイ。

雨も止んだ第2試合。こちらもほぼ一方的な試合となった。0−2でマリノスが勝った、というスコアなんだから当然、マリノスは出来が良く、浦和は悪かったわけで。

まず浦和の話。もはやサクッと済ますけど、まぁ中盤守備っていう概念が無かった。いつものマリノスユースのサッカーに対する、という時点である程度抑えるべきポイントはハッキリする。それはサイド突破への対策と、セカンドの拾い合い。特に、いわゆるマリノスユースのサッカーってのがつまりは中盤を省略する形に近いわけだから、浦和側としては中盤守備はサイド攻撃に対してのフォローとセカンドを拾う作業にほぼ限定される。一番メインどころの作業であり一番キツイ作業でもある、プレスによる走り廻りってのがほぼ必要がなくなる。なのにその特化する部分で守備が全く活きない。とくにセカンドボールは全く拾えて無かったし、サイド守備に関してはチーム全体的に非常に荒いものだった。
まぁ元々浦和ユースのサッカーってのは微妙な感が否めなかったわけで、それでもウチとの対戦の時は随分良かったのに…とがっかりしながらの観戦となってしまった。マリノス戦とウチとの試合の違い、選手的な違いってのはまぁあるわけだけど。それは観戦をご一緒させて頂いた方がズバッと指摘されててなるほど確かに、ではあったけどここに載せることでもないだろうから省略で。

さて、マリノスはもうやりたいスタイルをやりまくった印象。
マリノスユースのサッカーについての自分的な見方ってのは今までも書いてきたから省略するとして、それがこの試合ではハマりまくってた。
まず出す側。ひたちなかという、海風が入り込みやすい競技場の中で、通されるフィードはほぼ完ぺきだった。あのコンディションであの精度のフィードをバンバン通せるってのはなかなかのもの。両SBをガツンとあげて、2CB+ボランチ選手(この日はアンドリューが多かった?)は最前線に張る選手に長いボールをバンバンと。ここが何より素晴らしかった点。
加えて、受ける両翼選手。14小野祐二に11天野純。天野なんかはキックが多彩なのに加えて、その選択にアイデアを感じる選手。良いアイデアが浮かんでも、それが具現化できずにグダったフィード見せられるとがっかりもするけれど、そういったことは無かったね。サイドで受けたら、自らを起点とする放り込みを中央へ。ゴロなり浮き玉なり。アクセントたる万能選手。そして14小野祐二はプラチナ世代の旗手。ナイジェリアでのワールドユースのメンバーからは漏れてしまったが、この日観戦に来ていた池内監督は節穴だぜベイベーと言わんばかりに、対面のナイジェリアメンバー岡本拓也をチンチンにぶっぱなした。こいつワールドユースで大丈夫なんか?と思わせるほどの圧勝かました小野祐二はエライ。サクサク抜いてはチャンスを作り続けた。

それでも、一番目立った選手は15高橋か。試合を決める2点目を決めただけでなく、1点目の10小野悠斗のアシストを生んだ抜群裏パスを蹴ったのも高橋と要所でとにかく目立った。自分がイメージする「マリノスユース・アタッカー軍団」とは外れる選手で、トータルで目立つわけじゃないけど、いざゴールに直結しそうなシーンになると途端に頼りになるというか。ちょっとまだ掴めていないけれど、谷口博之という偉大な先輩の系譜に近い選手なのかも、というのが今のところの仮説。ただ、同系統な選手が多いことでの苦労が多いマリノスユースとしてはかなり重宝がられる選手に育ちそうな気もするが。特にここは「ストライカーが居ない苦労」のチームでもあるしね。

まぁこうもやりたいサッカーをやりまくって、それに加えて「国立に帰るぞ!行きたいぞ!」的な負けフラグも細心の注意を払って避けてた甲斐もあって(笑)堂々の国立切符を掴んだ。

舞台は変わりましてJヴィレッジ。さてさて、とりかかりますが。正直あまり語ることも無かったりするのですが。
まず確認しておくと、この試合は0−3というスコアそのままの内容であったということ。だから、なぜ負けたのか?といった部分に悔しさを持つのは正しくない。悔しさの矛先は、「何故やれなかったのか?」って部分に向けるのが正しい。
何故やれなかったのか?とにかく彼ららしさというものが感じられない。ボールが来ることに対して、それがたとえ偶然たまたま来てしまったものだとしても、それに対する「準備」ってものがあり、そのある無しでリアクションプレーの質はガクンと変わる。とにかく反応が遅い。一般平均に比べても随分と遅い。その積み重なりが最終的に「プレスの遅れ」となった。後追い後追いで、満足に身体を当てることもできないで、かわされては無駄なリカバリ守備に翻弄される。
圧倒的なこの悪循環は、傾向自体は前週の山形戦でもあったらしい。恐らく飛んだであろう我らがクラさんの怒号と、途中投入の14三田が投入直後に結果を残して、やっとこさ勝ち「のみ」を得られた。ってのが先週。

だからか、この試合でのHTは、クラさんはそれぞれが必要なことを考えて、それらをチームとしてまとめてピッチで発揮することを求めたようだった。5分とちょっとくらいで選手は離されたようで、ピッチにすぐ出てダッシュを繰り返す者、気合の反復練習を始める者、ストレッチしながら同僚と確認をとりあう者、そしてギリギリになってピッチに出てくるものと様々な所作が見られたのは興味深かった。それらを最後に一つにまとめて、円陣で一気に気合を入れ直す様に期待は確かにあった。

ただ、立ち上がりいきなりやられてしまったのがタイミング悪かった。そして続けてCKをどんピシャやられて0−3。

こうなると、もうがむしゃらに放り込むなり何なり、とにかくまずは1点とならざるを得ない。それでも結果、無得点だったことが、この試合足りなかったってことを端的に表していたのかもしれない。前半シュート1はあまりにも少なかった。

ある意味救いと言えたのは、磐田ユースが準決勝進出にふさわしいチームだったということ。10上村20高山の2ボランチは拾えるし、持てばいなせるしで、的確にミドルゾーンを掌握。展開すれば前線のアタッカー陣は臆することなく仕掛け続けて、先制点なんかは対面の阿部巧から上手く離れつつの絶妙な仕掛けだった。準決勝が広島ユース相手で、どうなるかは分からないが、どうせなら頑張ってほしいと思うし、思えるだけの差をしっかり残した上での勝利だった。

思えばちょくちょくと不安定な試合をしてしまうのが今年の東京だが、この試合を目の当たりにして思ったのは「我々はまだ弱い」ということ。メンタルも、例えばただ強弱の問題ではなくて。強いだけなら今年のメンバーは無駄に強いわけだけど(笑)それでそのまま中央突破でガシャンと突き破れる時はいいけど、そうでないときもあるわけで。ちょっとハッキリとしたことはまとまってないんだけれど、TPOでの使い分けというか、コントロール的な部分は多分まだ脆い。
その部分だけピックアップしてみても、そう彼らはまだまだ強くなるということだし、強くならなければならないということ。逆を言えば、彼らはまだまだ弱い。

昇格選手を輩出した学年ではあるが、だから良しというわけではない。厳しい事を言えば、「勝てる選手が昇格してきてもらわなければ困る」。だから俺は、彼らに勝ちを求める。勝てる選手になれ。価値を自ら上げてくれ。

その真実に向き合えたこと。このタイミングは決して遅くは無い。彼らの価値を見せる舞台はまだ、ある。