「これで最後…なんかにさせない!東京ダービー」プレビュー

ここまで無敗で来れたのは、十分すぎる結果だと言えるだろう。

近年卒業していった先輩達は、大学で即レギュラーとして中心でプレーしたり、大学選抜として海外遠征に選出されたり、そしてJリーグでチームを救うゴールを奪って見せたりと、その個の強さを見せてきた。そんな偉大な先輩達に比べれば多少劣る、とは倉又監督も明言されていたのがこの世代。

プレシーズンでは新人戦で優勝を逃し、強化大会であるマリノスカップではマリノスYに点差以上の完敗を喫した。少なからずの不安は抱えながらのシーズンインだった。

しかし迎えた開幕戦から、ある選手は手ごたえを掴んでプレーが劇的に変わり、チームは倉又イズムが明確に表現できるようになり…

この成果は、選手・チームの成長によって掴んだものに他ならない。


最大のライバルであったマリノスYが、けが人などのアクシデントで失速してしまったという事実はある。三菱養和が新体制でリビルドに時間がかかっているという事実もある。ライバル達はそれぞれの脆さを露呈し、勝てる試合を落としたりしてきた。それに対して東京が、もちろんこれまで大きなけが人が出てこなかったというアドバンテージはあるとは言え、耐えて耐えてでしぶとくシーズンを無敗でこなしてきた事実は大きい。

前述の倉又監督のコメントの通り、今シーズンは抜けた個が目立つチームではない。重松健太郎がキングとして君臨していた世代との比較になるのだから、分が悪いに間違いない。

だからか、今年のチームは点差的に突き放せるようなチームではない。内容差が点数差に反映しにくい。ある試合では得点が取れないと焦れるような展開にもなるし、またある試合では相手をぶち抜くようなシーンが見たいとそわそわしてしまう事もあるかもしれない。それはまだ解き放たれてない部分としての現状把握。

ただ、しぶとくも、チームは負けなかった。この事実に強さがある。

プレシーズンでは、味方のイージーミスを9前岡が厳しく叱責するシーンなどが見られた。これは先代チームには無かった部分であり、強豪チームに見られる厳しさ。上手くいかなくなったときにどうするか?その際に個の強さが強く先走ってしまったことで、昨年は高円宮杯を落とした。今年はそれでも声をかけ合うし、自らを厳しくする事も出来る。それは昨年に無いこのチームの長所だろう。

そうして、チームとして勝利を狙う。倉又監督らしく、相手ブロックを包みこむようなポゼッション。サイド突破をメインにそこに中央突破を混ぜながら、の配分はトップとは逆のスタイル。無理攻めはせずに、ダメならサイドチェンジを的確に混ぜながらしっかり攻めきる。

最後のひと匙を整えるのは現在チーム得点王の7武藤や、9前岡の泥臭さ。カウンターの際には「風の子」11秋岡が映える。攻守では18江口が汗をかき、15橋本と「東京の10番」佐々木陽次が楽しく、屈強に中盤の底で配給する。CBは1対1の守備に強い5小林に3キャプテン松藤。特に松藤は的確な潰しだけでなく「繋ぐフィード」で相手の急所を突く。左SB22村松は意外性の男、右SBはおなじみ4廣木…が出場停止かもしれないので、「俺のやっさん」12山口が渋く務めてくれるかもしれない。そしてGKは安心の東京印16三浦。以上がスタメン予想11人。戦える選手たちが、この試合も必死に勝ちに行くだろう。

残り3試合で、2位流経柏と勝ち点5差。己との勝負に真正面から見つめ、常に自らを向上させていった成果である。そして、展開次第で優勝も決まるシチュエーションでもある。

しかし、ここからが厳しい。前年度プリンスリーグ順位を踏まえて日程が組まれる関係上、連覇している東京はリーグ序盤に昇格組、そこから前年度成績の悪い順に試合をこなし、残り3試合を残したタイミングでいよいよ本物の強敵とぶつかることになる。まずヴェルディY、続いてマリノスY、そして最後に三菱養和というラスト3。

次節の相手は東京ヴェルディ。つまり、東京ダービー。優勝など全てを差し置いてでもやるべき事がある試合を、このタイミングで迎える事になった。


昨今の報道の通りであるならば、ヴェルディの厳しい状況は刻一刻と深まっているのかもしれない。組織の上に立つ者…彼らには「伝統」が重くのしかかっている。そのどれが重要で、どれが捨てざるをえないのか?現実的なカネの問題を絡めてのシビアな選択。結果行き詰まっているということは、取捨選択がおかしいってことなのだろう。

この試合が「最後のダービー」だ、ってのがシャレじゃ済まない状況。

個人的な話をすれば、東京・調布に生まれ育った者として、ヴェルディは憧れだった。学校の友達はヴェルディでサッカーをやってるヤツもいたし、駅前のモナコで遊んでると、酔っ払ってどうしようもない菊池新吉都並敏史をみかけたりもしていたから親近感もあった(笑)

ヴェルディの調布移転の動きは、調布住民にとって胸踊る話題だった。俺たちがサッカーしているココ、関東村のコートをぶっ潰して、巨大なスタジアムを作って、そこでヴェルディがプレーするんだ。これを聞かされてワクワクしない少年はいなかったはずだ。それをヴェルディ側から一方的に潰された過去。大きく落ち込んだし、勝手に恨みも増した。その落差はハッキリと覚えている。これ以降、「子供を勝手に期待させて、勝手な都合によって落胆させることへの罪」に敏感になったのだが…作られたダービーが日本に多い中で、個人的に東京ダービーは、かなり憎しみの強いものとして捉えていた。

ただ、そんなヴェルディだからこそ、今のヴェルディを見ると「なーにやってんだよ!ったく…」と、もどかしさを感じずにはいられない。これが、ヴェルディに対する自分の正直な気持ちである。無くなってもらっては困るし、絶対に『歴史』は繰り返してもらいたくない。ヴェルディがまたしても勝手に退場される事は、許されない。


下部組織に所属する彼らがそれに敏感にならないわけが無くて、彼らは直接的な意味で危機感を実感しているのは間違いない。チームの存続はされようとも、その為に都外に出るという選択になってもおかしくはない。彼らが東京を背負わなくなるのだとしたら、それもひとつの「最後のダービー」だ。

そんな状況がチームを変えた。キビキビと大声掛け合いながら行われるウォームアップ。試合前に円陣を組むと、チャントを大声で歌い上げる事でヴェルディへの忠誠を誓った。勤勉に守備に走り、先制点を奪っても気を緩めずに「この立ち上がりが大事だかんな!」と、失点を食らったチーム以上に確認の声を受け渡す。

こうして我々は、2月の新人戦はヴェルディに負けた。「WE ARE TOKYO! WE ARE TOKYO!!」と、ヴェルディの勝ち名乗りを、ただ眺めるしかなかった。

「FC東京の勝ちたい、という気持ちはハンパない。でも同じ気持ちを出せたら『上手い』のはウチラの方。」敵すらも惚れさせる、エレガントなNo.10小林祐希東京ダービーに向けて語ったこのコメントは正しい。ジュニアユース年代では、その圧倒的な技術で東京は負け続け、倉又イズムが浸透しきった高3になってやっと、「東京のコンセプト」をもってリベンジを果たすことが出来る。そんなギリギリな傾向が近年は続いてきた。実際、新人戦では小林祐希の言葉を体現し、ヴェルディが鮮やかに勝ってみせた。

そんなヴェルディよりも勝る何かを発揮出来なければ、2月と同じくヴェルディには勝てないだろう。見せてくれる「何か」、この年月で積み重ねてきた「何か」、とは…


ヴェルディの将来が分からない今だからこそ、むしろヴェルディサポに多く来て欲しいと願う。国立競技場16時キックオフの試合に行く前に、それくらいの労力かけたっていいでしょう。すぐはお金にならない育成部門、しかし一番色濃く受け継いでいる「伝統」を、確実にそこにある「クラブの未来」を確かめるために。彼らから「最後のダービーになんてさせない」という気持ちを、是非ヴェルディサポにこそ直接受け取って欲しいと願う。

もちろん東京サポも。トップの渋い状況を重ね、大人の憂さ晴らしに、利用されるとちょっと困るけど(笑)深川グランドはチャント等で応援するのは禁止になるので、不自由さもあるかもしれないけど、そこは純粋に、手叩いて、相手もリスペクトして、この東京ダービーを盛り上げましょう!

決戦は日曜日。11時より深川グランドにて。天気が微妙だけど、当日はちょっと早くに来て、ちょいとやる事にご協力いただけると幸いです。何分、ど素人が思いつきでアレをやろうって事になったもんでえぇえぇ…

※当ブログ右にあるダービー告知バナーのリンク先に選手メンバー表(pdf注意)が用意されています。是非一度ご覧頂き、また観戦のお供に印刷して観戦いただければより楽しく観戦出来るかと思います。作成してくださった可楽blogさんに感謝!