思春期、東京 レビュー -大分戦

TV視聴。ウノゼロの美学にまんまとやられた。あぁ。
「3バックは時代遅れ」となって久しい現代日本サッカー。「4バックが好きだから」は異端な存在だったはずなのに。「フラットスリー」がやんやと持てはやされたのはたった6年前の話である。しかし今やどこを見ても4バック、終いには前述のような言われようである。実際問題、イタチごっこのサッカートレンドにはそれぞれ理由は付くもので、「3バックは時代遅れ」と言われてしまうのにも理由はあり、そこを改めて説明する必要はないだろう。
そこで、大分である。時代遅れの3バックで、しかしリーグ最少失点、である。今年は大分との対戦も多かったが、今年のリーグの象徴たる活躍をしている大分の守備力、その肝心要のキモを自身まだ解き明かしてはいなかった。今シーズンの締めが近づきつつある中でこれはやり残した宿題であった。そしてその正解は、自身にとって痛すぎる敗退によって結果ありありと見せつけられてしまった。
要は、両翼が落ちてきて5枚-3枚の強固な守備ブロックを敷いている、ということ。サイドに起点を求める東京に対し、一人大分の選手が当たりに行っても、中央にはそれでも4枚の屈強なDFラインが待ちかまえているわけである。更にバイタルにはホベルトエジミウソンとガタイの良い両ボランチが。字面で表して見れば守備が堅いのも当然だろう。城福流の「中閉じろ守備」では、相手のサイドアタッカーのクロスに対する守備が心許ないと言い続けてきたが、その理想型に近いものを相手が見せてきたとすら感じる。
だが、両翼が落ちてきて5バック気味に、となると山本昌邦を代表する日本サッカーの忌まわしき記憶が思い起こされる。思えばアテネ五輪代表に対する批判には、両翼が押し込まれて5バック気味になってしまい…といった論調に溢れていた。実際そうだったし、攻撃的なサイドアタッカーの個性が埋没する様を何度と見てきたわけである。
しかしシャムスカ大分はそうではない。攻撃には確実に両翼は絡むし、攻撃枚数が少ないといった場面は見あたらなかった。
原因はもちろんチーム全体のハードワークなのは言わずもがな。しかしそれ以上に大きい要因は「背負えるFW」の存在に思える。
ウェズレイ・森島・そして途中出場の高松、三者全て見事に背負うプレーをやってのけた。はじき返したクリアをクリアで終わらせずに、身体を張りながら抜群な技巧でキープして見せたポストプレー。セカンドボールの拾いあいとなると、その要因にMFの運動量へと目が行きがちだが、大分の場合はそれ以上に確実にマイボールに収めてくれるFWの存在が全てだろう。東京なんかは、MOVING FOOTBALLとしてのクサビパスの受け手としてポストプレーが求められるが、それとはまた違うポストプレーであった。
東京もチェックを怠っていたわけではなかったと思う。背負ったFWに対しても寄せる事は出来てはいた。けど取れない。悔しいが相手のが一枚上手だったと言わざるを得ない。「切り替えの早さは凄いですね〜」と絶賛されながらも、けど別にボールは取れていなかった先日の日本代表を何故か思い起こす。
背負ってくれる、収めてくれるという事は、そこに「時間」が生まれるということである。ハードワークのベースがあれば、そこに時間を与えてくれるならば、守備に追われていた両翼が攻撃に参加するのは訳無い事だ。こうしてシャムスカ大分は守備にも攻撃にも数的不利を感じさせない、強固なチームを完成させる事が出来た。そしてそのキーは背負ってくれる屈強なFWにあった、と自分の宿題の回答をしてみる。もちろん、簡単に書いてはいるが早々簡単に出来るものではない。上位躍進にある理由には賞賛せざるを得ないところである。
東京は怪我人続出の野戦病院状態が問題ではあったけど、蓋を開けてみれば、メンツ的には体裁の整ったメンバーだったと言えるだろう。もちろん各選手のコンディションやウィークデイのトレーニングには大きな影響があっただろうが、ここまでリーグが深くなってしまっては言い訳が出来ない。今回の負けを甘んじて受け入れるしかないだろう。
見た限りピッチコンディションに問題があったようには思えなかった、芝は剥げてはいるが地面が緩いわけではなく、むしろ堅くフラットなハードコートに見えた(この辺は現地観戦者のレポートを待ちたいところ)。それよりも今日は選手間の距離感の問題を感じるばかりの攻撃だった。遠い位置から一発のスルーパスでは遠く、クサビを当てるパスも遠く、そこから細かく打開するには今度は逆に近すぎる。大きく動きながらも適度な距離感を感じていた良い時期のパス回しに比べたらやはり、今の内容は落ち込んでいると言っていいだろう。

イケイケでやっていた前半を経て、今の東京は多少酸いも甘いも知ってしまったせいで「つまらない大人」になりかけている気がする。理想と現実の共存に城福東京の良さを今まで感じていたが、今はその現実サイドの考え方が強く、またその考え方自体も変わってきているだろう。その最たる例がSBの役割変更である。これによって確かに失点数は激減し、守備は安定したのだが、今のSBの役割には多少不満は感じる。
あっちを取ればこっちが。難しい選択だし、チームとしての試行錯誤は感じる。これといった正解もないだろう。しかし今の東京はそのせいで「強み」を失いかけている。トップに連なるチームを見れば、一目見てコレ!という強みがある。
鹿島は名門たる安定感。
大分は強固な守備力。
名古屋はカリスマによるぶれない自信。
川崎は個の強いガイジン軍団。
浦和は闘莉王
ガンバはパスワークからの攻撃力。
では、東京は?
幸い上位との連戦は続くし、上位を見据えたギリギリの位置で最高の終盤戦を味わう事が出来ている。チームとして強くなり続けていくために。自らの強みを今一度見つめ直す良い時期なのかも知れない。
思春期東京。つまらない大人にはなるなよ。
あー悔しいなぁチクショー。家本ジャッジは良かったなーチクショー。アドバンテージで流す判断もそうだし、赤嶺に異議でイエロー出した手順も完璧だったし(誰か「言うな!」って言ってくれる人はおらんかったのか)。あー家本良かったわーチキショー。