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カップの奪い方はレジェンド達が教えてくれた レビュー 04決勝 -浦和戦

FC東京

決戦に向けて最後の週末。

抑えきれない盛り上がりを受け止めきれたのか否か、この週末の小平グランドは非常に盛況だったらしい。他にもユースの試合を観戦しに、深川グランドへ。または決戦に向けて自前のゲーフラを仕込んだり。
各々の準備、その全ては来る11.3へ向けて…
それぞれが決意を新たにした週末だったに違いない。

かくいう自分。予定していた小平グランド→府中競馬場ハシゴを断念して、府中で精を出す体たらくだったわけだが、そんな自分も、土曜日には気持ちを上げる意味もあってか、04年ナビスコカップ決勝、対浦和戦のビデオを久しぶりに引っ張り出して視聴した。勝手知る方から始めましての方まで、いろんな方々と一緒に見れたのは、単純に面白かったし、気持ちも上がった。しかしそれ以上に、今このタイミングで見ることで初めて気付く部分、確認し直せる部分も非常に多かった。

自分もいっぱしには、あれ以降もサッカーを見続ける人生を送ってきたわけで。それはことFC東京に関する思い出だけをとっても、家に大事に飾られてあるカップウィナー記念マフラーを『じっと見るときもあえて見ようとしなかったときも正直あった』5年間。それ以外でも、単純な観戦試合数的な経験に、新しい分野の開拓、何より新しい出会いもあったりで、自分のサッカーへの係わりも随分変わった様に思う。

それらを噛みしめながら…
今改めてあの試合を振り返ってみたいと思う。

立ち上がりから、リミッター外れた両者のハイスパートなぶつかり合いに驚かされる。

今や多少はFINALの難しさも思うようになった状態で見ると、これには驚く。FINALという舞台、聖地・国立の雰囲気が選手をそうさせた。ハッキリとオーバーペースなやりあいは、肉弾戦としてもバチバチと激しいものがあるし、サッカーとしてもかなりアツい。

東京は改めて上手いと唸らされるルーカスのキープからサイドへの展開。左の戸田に、右の旧ナオ。それに絡むは浄さんに加地。オレが惚れた、青赤に心を染めるきっかけともなった2段ロケットはかなりの勢いで裏を狙う。今の城福東京との違いなんて当然の話だけど、この両翼のオフサイドの多さがこの時代の原東京を明確に示す。

方やの浦和も、改めて見返すとさすがのチーム。
3-4-3と紹介された布陣が見せるサッカーは、限りなくシンプル。しかしそれが怖い。それは、そのシンプルさのおかげで映える個のポテンシャルが凄まじいから。今見ても規格外だったエメルソンは、ドリブルの速さだけでなくシュートの振り抜きも脅威的に早い。それでいて我に走り過ぎることも無く(この試合を見る限りではエースとしては許容範囲内むしろふさわしいそれだった)味方がチャンスだと思えば丁寧にパスを差し出すシーンも見られた。
相方である田中達也永井雄一郎
特に永井が凄い。彼もまたスピードスターとして高速ドリブルを披露するが、それにプラス永井に加わるのは、背筋の良さから来る圧倒的な「美しさ」。切り裂きながら丁寧にグラウンダークロスを何度も供給するプレーぶりは脅威的。

他にもそれぞれを見れば、ケリーの足の出方が米本そっくりだなだとか(米本基準でケリーを見ることに時代を感じてしまう)(指摘してもらった「ケリーのチャントはヨネが継ぐべき」という案は素晴らしすぎて決勝ですぐにやるべき)長谷部の意図引くように美しいスルーパスに唸らされたり(のちに本田朋子と付き合うんだな、と思うとくっそ!としか思えないが)潰し屋としてだけの鈴木啓太はやはり魅力的だったなぁだとか(のちに畑野浩子と結婚するんだな…と思っても、くっそ!のボーダーギリギリでセーフに落ち着いた)。5年後に見るからこそ湧く煩悩に悩まされながらも(笑)しかしファイナリストとして、ふさわしいポテンシャルはそれぞれが確かに発揮されていた。

ジャーンの退場シーンは、今見ても涙を誘う。

ハイスパート・ハイクオリティが複合しての止むない退場だったとしても、この強烈な打ち合いに水を差されてしまった事は今でも悲しい。このまま11人同士でやりあっていたら、どんな試合をこの両チームが完成させていたのだろう?とは今でも考えてしまう。
しかし、その後はご存知の様に、本来とは違うベクトル方向に、しかし絶対値変わらないクオリティドラマが始まる。

チームとしては、よくも攻め気を失わずに120分間をやり抜いたと。

04決勝を称える上でよく使われる「忍耐」ってフレーズが、必ずしも100%正解で無いなと思わせたのは、10人になっても失わなかった攻めの姿勢。「ジャーンの退場によって、オレとナオのやる事はハッキリした」とあの時の戸田は腹を括ったわけだが、確かにあの時の両槍はハードワークに、ただ引きこもることをせずに、浦和のサイドに脅威を与え続けた。それは質・量ともに、思っていた以上のクオリティを保てていた。

思えばあのタイミングで10人になって、そのまま耐え続ける判断ってのは今考えればアリエナイ。耐え続ける事の難しさも知る様になって、耐えながらも、いかに一矢報いて見せるか?ってプレッシャーを見せ続ける事こそが重要だと、今になって考えればその正解には導けるが…果たしてあの極限集中の状態でその判断が実際に出来たか?自分は恐らく出来ていなかった。しかし原監督はして見せた。

勝ったからこそ、かもしれない。しかしそれは振り返ってみると唯一の正解でもあったのかもしれない。あの瞬間でのあの采配の、その価値を再確認することが今回出来た。

また選手個人を見ても、あのドラマを支えたのがシンプルに「気迫」ただその気持ちだったんだなぁとは改めて思い知らされる。

何と言ってもまずは「ジャーン以降」を支えてくれたフジ。おなじみのパスカットの冴え、その機動力はベテランらしい経験なんて言うよりもまさに青赤戦士を体現してきた気持ちの強さの方が勝って見える。モニが「Just Bring It!」とエメに挑む1対1の気迫も、胸にくる素晴らしさ。血尿と今になっても揶揄されることになるわけだが、説得力抜群の活躍を見てしまうと止むを得ないと。また、エルゴラで5年を経て披露されたエピソード「実はナオは足を吊っていて、交代をお願いしたけど自分の判断でもみ消した」という戸田の美談も、見返すと結構ガッツリとナオが足を吊らせるシーン(担架沙汰)が実はあったんだなという事実を思い知り、それを知った上で見るとただただ戸田ヒデェと笑ってしまう。

ただ、自分にとっては、やっぱり土肥。

「ジャーンが付けてくれたから外すわけにいかなかった」との裏エピソードも知った上で見ると、付けてもらう際の土肥の鬼気迫るその表情は恐ろしさすら。それからは言わずもがな。しかし節々に見せる気迫は画面越しにも伝わるし、あの怒号が声援にかき消される事無くダイレクトに心に突き刺さってくるように空耳してしまう。当時も何度も繰り返して見てしまったPK戦での表情ぶりだって、改めて。それは山田の完全に気圧された表情との対比で今も鮮明に脳に焼き付いているそのままだった。

全体を見ると、この試合がスコアレスとは思えないほどのハイクオリティゲームだったことに驚かされる。それは東京だけでなく、対戦相手である浦和の良さもあってのものだった事も間違いない。攻める浦和の、ゴール決め切れなかった姿勢には、しかし何の悪い部分が見当たらない。個のポテンシャルが、減損無く発揮されるだけのシンプルな造りがこの試合の浦和にはあったし、発揮もされていた。それは本当に、運の問題。「どちらにボールが転がってくれるか、それはボールに聞いてくれ」と、城福監督が語ったある種の達観は、もしかしたらここから来たものなのかもしれない。その説得力も増す、この試合のクオリティだった。

耐えて耐えてのPK勝ちであった。しかし、劣勢ながらも攻めの姿勢を失わずに。まさに「攻激、攻劇、攻撃サッカー。」を体現した、胸を張って良い素晴らしい優勝だった。


今回、こんな幸せな形で試合を振り返れる事になって、改めて湧き上がったのは、必ず優勝したいというピュア剥き出しな感情。

例えば川崎なんかは、恐らく青赤な誰もがあの5年前の思い出に浸りながら、ある意味そこに対する油断にシメシメとしているところなのかもしれないねもしかしたら。自分も確かにそんな時期もあった。カップウィナー記念のタオマフは、一時期は試合ごとに毎度持参していたが、いやそんな事ではダメだとその後あえて意図的に封印する様にもなった。その決断に至った、自分が拙いと思った感情ってのは、川崎者が思うそれに近いものだと思う。

けどね、そんなもんじゃないよ。今回見てよく分かった。

そもそもまず一つに、持ってしまっている成功体験が与える負の影響として考えられる「油断」の部分も、それ自体が我々にはあまり無いように思われる。『作られた決戦』としてその歴史を刻み始めた「多摩川クラシコ」。しかしそんな偶像に、歴史をバックボーンとした世界あらゆる決戦なんかにも負けない「魂」を吹き込む作業ってのを、所詮新参者の我々が楽しむことによって痛感したその事実とは、何よりライバルとして設定された川崎のポテンシャル、その強さだろう。多摩川クラシコを経て、いま対戦相手としての川崎を舐めて迎える者はだれ一人いないはずだ。

何たって、手負いの東京。もはや並べる事はしないが、我々の状況を把握しているならば、そんな油断・甘えなんぞ微塵も入る余地は当然無い。

また、決勝を迎えるに向けてのイメージトレーニングの素材として、川崎が引っ張り出す07決勝対ガンバ戦と、我々が取り出す04決勝対浦和戦とではやはり大きく違う。その違いは言わずもがな、なわけだけど、まず単純に悔しさをバネにするような体験と、我々の成功体験とでは「健康感」が違う。イメトレと言うくらいだからそれは、自分の感情が上がるもの、さらにはそれは求める成果に直結しやすい素材である事に越した事は無い。優勝経験がある事が、こんな単純な所で、意外にも大きな効果を持って差を示すことになるとは。それは自らの体験として味わうことで初めて知った事実。

何より、我々は『カップの奪い方』を知っている。それは、もはやレジェンドとして括らざるを得ないかもしれない、あの日あの頃の勇者たちが教えてくれた。ルーカス。戸田。ケリー。フミ。浄。ジャーン。加地。土肥。そして奇しくも怪我で迎えることになってしまったナオにモニ。スターティングイレブンの中で今回出場を期待できる選手は今野しか居なくなってしまった。しかし、そんな彼らが教えてくれた宝物は、今もクラブに、選手に、そして我々に、確かに残っている。

あのプレー。

あの気迫。

カップの奪い方、そのハウトゥーはこの試合に全て詰め込まれていた。


迎える2度目の舞台…

あの日あの時のレビューは、自然と決戦へのプレビューとなった。

どうだ。これまでの歩みは、こんなにも頼りになるものだったじゃないか?

青赤の歴史を、誇りを、確かに。

「自分を信じていれば、勝利はついてくる」