悔いが残る時点でそれは正解ではない 関クラ予選 FC東京U-18-三菱養和

極私的ベストバウトに選定したのが、先月行われたプリンスリーグでの同カード。お互いの技術・テンションのがぶり四つ、それにとどめを刺した倉又監督の超絶采配。「詰め将棋」と形容し、その爽快な解法を見て自分はベストバウトと位置づけた。そこまでを今回も期待するのは酷だが、しかしここにあるのは「東京ダービー」、ソウルもしくは韮崎は金銭的に無理だった事もあったが期待を持ってファーストチョイスで選択。ソウル、もしくは韮崎へと向かう選択をした同志達を思い、(何故か)北ウイングを聞きながら、チャリで向かうは小平グランド。
遅刻。
小平グランドの奥側で行われたこの試合。試合が既に始まっているグランドへと向かうとなかなかの盛況で、人工芝グランドでは消化できないくらいのオーディエンスぶり。三菱養和側も親御さんからベンチ外選手からで盛り上がり、なかなか活気に満ちたコンディションだった。

三菱養和は前回はシンプルな4-4-2だったが、一月経たない内になかなか大胆なシステム変更が。8番安田をアンカーに、9番恵津森を1トップに、そしてその間に4人の攻撃的選手を横一線にズラリと配置。4-1-4-1のフォーメーションはしかしなかなかの好印象。基本は1トップ恵津森へのクサビを、恵津森が収めてくれるという信頼感。それはDFラインでのビルドアップでの繋ぎクサビから、バイタル付近での勝負クサビまで、多くの場面で恵津森の屈強さと柔らかさは発揮される。そのクサビを叩かれる相手は、2列目に陣取る4人の選手達。多種多様の候補達のスキルもそれぞれ高く、信用を持って仕掛ける攻撃に東京は防戦気味。その流れから取った先制点は13番加藤の左足直接FK。勢い十分のゴラッソ。ノーチャンス。また、その過程までに危険な位置での直接FKを相手に与えすぎていた上での失点という意味では、必然とも取れる失点でもあった。
東京は、何だろう。前回ほどに強固とは言えない三菱養和を相手に、しかもその養和を打ち崩したメンバーをそのまま揃えたのに(右SB廣木→久保田のみ)。野心というかギラギラしたものというか。モチベーションの差だろうか。そんな中で期待したいのはやはりセットプレー。CKのこぼれを右サイドから久保田が入れた大きいクロスを畑尾が高い打点で同点ヘッド!前半終了ギリギリの欲しいタイミングでの執念のヘッド。咆哮し、気持ちを爆発させ、オーディエンスを煽る畑尾の姿は本当に素晴らしいものだった。

HT中に入念に指示を与える倉又監督。その甲斐か、後半は東京の攻勢に。しかし、チャンスはいくつかあったが決定的な崩しはそれに見あわず少なかった様に思う。
この日は監督からも選手からも「ワイドに」というかけ声は多かった。DFラインで徹底的に回しながら、FWへロングボールを入れつつ、無理なら戻してサイドチェンジ。ワイドの意識は確かに高かった。しかしそれ故に動きが少なくなってくる。前線にワイドに張り出す選手が多くて、間がない。よく見る光景がそこにはあった。
後半についての自分のメモ書きには「バイタル起点!」との文字が。そう、自分が感じたのは東京がワイドに、そして山村・重松が裏への狙いを強めれば強めるほどにバイタルエリアにスペースが出来、チャンスがあったのにそこを上手く使えなかったというところ。後半の養和がどうシステムを弄ってたは確認し損ねたが、前半からアンカー安田の1ボランチで手薄なバイタルエリアは、傾向として露呈されていた。そこをどう上手く使うか?山村が裏へ狙う手前で、重松が降りてきても良かった。サイドに起点を作ったタイミングで、岩淵がバイタルを狙っても良かった。バイタルに起点を作るクサビを打ったのは、後半で恐らく数度、覚えているだけでは二度のみ。また実際にその内一度は山村が受けた後スナイデルの様に反転してロングシュート→バー直撃の惜しいものもあった。東京がバイタルを使えずに、ワイドに振っても三菱養和は決定的な仕事を相手にはさせない。東京も野心を感じるリスクチャレンジは少ない。このまま、お互いに勝ちきるには説得力の乏しい、妥当な引き分けの結果に終わった。

しかし終わってみれば三菱養和は、それこそ優勝を決めたかの様なはしゃぎっぷり。そして東京は誰もが自然と下を向いてしまう様などんよりとした空気。試合後のクールダウンの様子はドロー決着とは思えない対照的なものだった。
試合終了間際、東京が得たCKを東京はキープに入った。引き分け以上で東京は1位通過が決まり、全国大会出場という視点で見ればそれは既にほぼ決している状況。養和は負けると恐怖の九決行きに限りなく近く、必死こいても引き分け以上の結果でグループ二位を死守しなければならない立場。思えばそもそも両者の、この試合に対するモチベーションには差があったのだろう。東京のコーナーキープに対して、養和も静観し何もないままに終了のホイッスル。
それに対して「何だ!」と不満を表したのがキャプテン畑尾。何故決勝点を狙わない!養和には理由があっても、東京がコーナーキープする理由があるのか?!!そう言わんばかりの不満を整列中も表に出すキャプテン。それがあってかどうか、どんよりとした空気が東京側に包まれてしまう結末に。
東京としては、どちらも正解。出場できれば順位はあまり関係ない(らしい)クラ選予選では、確実なコーナーキープは選択肢として間違っていない。また、どんな試合に対しても勝ちを狙っていきたいというメンタリティも理解できる。また畑尾自身は古巣である養和戦への気合は相当なモノがあったはず。それぞれの立場でそれぞれの正解はあるが、しかしFC東京U-18としての正解は一つであるべきであり、正解が『統一』されてなければならないはず。二つの正解がピッチ上でぶつかる結末となった。ベンチの倉又監督の指示だったのか、もしくはCKキッカー周辺の判断か。少なくとも言いたいのは、
『やってああいう空気になるくらいならば、するな』
その時点で、正解ではなかったはず。コーナーキープを割り切るクールな判断も必要だったかも知れないし、どんな試合にも勝ちきる熱い姿勢は必要だったかも知れない。どちらも正解だが、どちらかに統一されてない時点でそれは、どちらも正解ではなくなる。
彼らは所詮高校生。しかしプロを目指し、プロに教わり、プロに一番近い立場にいる者として、求められるのはやはりプロの姿勢ではないだろうか?プロを目指す者として、今回の件はとことん話し合って正解を統一して欲しいものである。この試合に向けたプランとして統一できなかったことを反省し、今後そのようなことがない様に徹底的にぶつかって統一を目指して欲しい。個人が割り切る結果になろうとも、チームとして正解を統一させる姿勢こそが「プロの姿勢」だ。
クールダウン中にも畑尾の周りでコミュニケーションを図っていた彼らならば必ず出来るはずだと信じているし、プロを目指す者の姿勢として、成長した彼らがまた高いモチベーションをプリンスリーグ再開の桐光学園戦で見せてくれることを期待している。