Jユースサハラカップ。予選Dグループを1位で通過したFC東京U-18は、この決勝トーナメント2回戦からの登場。対するは、三菱養和などの名門を撃破して関東代表の座を勝ち取り、1回戦でジェフ千葉U-18との千葉ダービーを制した千葉SC。千葉SCの親御さんと、まだ声変わりしていないジュニアユースの面々の声援が響く中でキックオフ。
お互い4-4-2の布陣ながら、ロングボールで前にけり出す東京と細かいパスを繋ぐ千葉の戦術は、まさに対極か。東京は比較的小柄な2トップながらそれぞれが身体の向き、当て方が上手く、ロングボールが良く収まる。それを合図として攻撃に掛ける全体の上がりも賢く揃え、確実なフィニッシュが続く。千葉はまさに、先週小瀬で観たあのスタイル。逆サイド、という発想はほぼ皆無で、狭いエリアに人数を掛け、細かいパス回しで相手ゲインを突破する。とは言っても局面での細かい技術はお互い遜色はなく、まさに実力伯仲、がっぷり四つの好ゲームが展開される。
その中でも前半、比較的主導権を握ったのは千葉SCか。前半立ち上がりを凌いだ千葉が、徐々に中盤バランスを掴み始める。局面狭いエリアで千葉が作る数的有利が填り始めたのは、縦の関係を意図的に作る東京ボランチ井澤・大貫と千葉戦術との相性か。東京としては無失点で前半を終える事は出来たが、0-0というスタッツは千葉としてはプラン通りかと思わせる展開。
しかし後半になり、前半全く目立つ事の無かった大竹が途端に目に入る様になり始めてから、東京は変わる。きっかけとしてのロングボールは続くものの、その後の攻撃が全体を使った細かいパスサッカーに変わる。大竹のアイデアがきっかけとなって、明確な意志をチームで疎通しながら細かいパスでフィニッシュを迎える様は、前半には(そしてトップチームには)なかったもの。引き続き好調な千葉ではあったが、東京の狙いもピッチ上に映える様になり、前半とは違うがっぷり四つを見せる。
得点シーンはその流れの中で生まれたもの。東京左サイド、ペナ角付近、ここでも大竹のアイデアがきっかけでスタートした中央へのアタックは、数人の細かいパス回しを経由して、最後は井澤のドリブル突破によるPK奪取に結実する。これを井澤本人が落ち着いて右側に決め1-0。均衡が崩れる。
その後は千葉の猛攻を東京が凌ぐ展開が続く。千葉SCの確実なフィニッシュを、しかし田端のビッグセーブとDF陣の踏ん張りで跳ね返す。GKも上がっての最後のセットプレーを何とか守りきり、念願のタイムアップ。今思えば、東京は意図を発揮できた後半立ち上がりから得点場面の時間帯が、試合の流れを掴めていた時間帯であり、そこで確実に結果を出していたのが勝利に繋がった。そう、あれだけ千葉SCの流れになっても得点が奪えなかったわけだから。その差が最後に、「次へ進める者」と「進めない者」を分けた、些細な差となった。
千葉SCは強かった。12番の選手が見せた足裏の技術などはすばらしかった。関東予選を勝ち抜いてきた、ジェフ千葉U-18を撃破したのはフロックではない。それは行われているサッカーを観て確信した。だからこそ、東京が手堅くしっかりと勝利を掴めた事は良かった、と言うのが素直な感情だ。しかし東京は、自らをもっと楽にさせるやり方、やり様はもう少しあったとも。余り細かく繋がない、ロングボールを多用するというのはこの日の東京にあった明確な意図だが、持てる場面、一度収めて落ち着ける場面でも無理にクリアに近いボールを蹴る場面も多かった。一度しっかり保持し、その上で落ち着いてフィードしても何ら問題ないと思われる場面でも。それは劣悪なピッチコンディションと、千葉SCのプレスがなかなか優秀でそこを警戒しての事だったのだろうが、その警戒が試合が進むごとに恐怖に変わり、その度合いが上がっていったそぶりも見えた気がした。セーフティ判断と言えばそれまでだし、結果としてもその成果は表れた。現に試合中、大竹の不用意なパスから逆襲を受ける場面があり、徹底した意識の統一がなければこんな場面ももっと増え、スミイチの勝利は掴めなかったかも知れない。しかしやはり、ただ何でもかんでも蹴るのではなく、自分の形で落ち着いて蹴るだけの視野・状況判断・いなす技術はもう少し求めたい部分ではあった。ただこれはもちろん、終盤になってもプレスを中心に運動量があまり垂れることの無かった千葉SCがアッパレでもあるわけだけれど。
となると、次の試合で東京がどういう狙いを取るのかに次の興味が向く。パスワークの定評を聞いていただけに、この日の東京のロングボール戦術を観た時には「アレ?」と。ピッチを考えてか。相手を考えてなのか。ならば次回はどの戦術をとるのか。そして、東京U-18の本来のスタイルとはどのような物なのか?
この代のU-18を見ることは初めてだったので、あれが本来のスタイル、実力だったのかは分かりかねる。ただ確実なことは、この日の両者の発揮した実力は限りなく≒だった。そして、魅力的なゲームだった。
クラブとしての規模、設備等に差は確かにあるわけだが、そこで勝手に格の差を感じていては簡単に足をすくわれる。実力差は天皇杯以上に少ない。同じトーナメントだが、この大会に「ジャイアントキリング」は存在しないと分かったことが収穫だった。
次回は12/16(14:00)から大分トリニータU-18と。広島ユースを退けて無敗で予選E組を首位で通過し、4人のトップ昇格が内定している大分は九州でも存在感を発揮し始める強豪。なかなか面白そうなカードとなった中で、しかし「東京」はまだここで負けるわけにはいかない。さらに上を目指すFC東京U-18の次の舞台は、みんな大好き「俺たちのフクアリ」。入場無料。しかもちょっと頑張って早く行けば11:00からの柏-東京Vの試合も見れる(これも予選首位通過同士。好選手が揃った好カード)。
サッカー好き、東京好きは、行くしかないんじゃないですか?!面白いぜサハラカップ!頑張れ東京!!
当ブログは、FC東京U-18を、応援しています。