ノーゲーム時の対策を怠ったJリーグ側の責任は大きい

本日は結婚式に出席してきまして。他人の幸せに自分も浮かれながら、結果ふらん腐乱の中でさっき帰宅して、まずはJの結果を確かめようかとパソコンを開いてみたら、驚いた。鹿島-川崎の首位決戦が、豪雨により中止。ノーゲームとなったらしい。

とうとう、こんな天王山においてこのようなことが起きてしまった。


天候不順による試合途中での試合中止については、以前から個人的に気にかかっていたことであった。それは一昨年の鳥栖-湘南戦について、そして昨年の北京五輪代表壮行試合の対アルゼンチン戦。それらについて書き残したのはこちら。

前者は事実として起きたことを埋もれさせないために、と共にこういった事が起こってしまった「前例」が未来にどう影響するかを危惧するもの。そして後者は試合が中断する事態になった時、観客の安全を確保するために運営側に高い意識付けを求めたエントリ。どちらも視点は大きく違うものだが、こういった事態になった時に感じた「よりよく事を進められるため…」の素直な感想を、下手なりに提言として残したものである。


さて、今回の事例。恐らく一番起きてはならない試合で起きてしまったこの件について。

まず、試合中止という判断自体の是非は、所詮外野の自分があれこれ言えるわけはなく。自分はスパサカで様子を見ただけでしかなく、試合をTV中継でしっかり見ていた人、何よりスタジアムに足を運んでいた人の方が判断はつくだろうから何とも言いようが無い。例えそれが豪雨「のみ」を理由とした中止だとしても。

そう、過去の2例と大きく違うのが、「雷雨」か「豪雨のみ」かということ。

サッカーの試合を中止するかの基準として、何より重視されているのはご存じのように「雷があるかどうか」。落雷による被害は世界各国に起きており、何より日本でも高槻市のサッカー大会で落雷事故が起こり、3億の賠償命令が昨年高裁で判決が下りたばかりである。このように落雷については身近レベルで起こりうる危険として、JFAも全国あらゆるサッカー大会に、厳しい基準で落雷には注意を払うように命令が下っている。

しかし、今回は落雷の心配はあまりあったわけではないらしく、豪雨による「ピッチコンディション不良のみ」が試合中止の要因となったらしい(実際自分が見たスパサカではボールを上から落として、跳ねの具合を確認しての中止といった映像があった)

前述の前置きを踏まえた上で私見を述べれば、これは理由にはならないとは思う。何故ならば過去何度も「サッカーにならないピッチ」での試合は行われてきたから。水溜りの酷いピッチ然り、雪が積もったピッチ然り。しかし、人命にかかわらない限りは試合は行われ続けてきた(豪雨もしくは雪によって「交通機関に影響」があった場合は、試合は行われなかったが)また「試合にならない」という点で言えば昨年の鹿島-FC東京戦に代表される「濃霧」の方がよっぽど、試合を行うという点においては酷かったように思う。


しかし、起こってしまった事はもはや仕方が無い。その決断自体への文句は時すでに遅しである。その上で、事として起こってしまった『後』について、思った事を二つ。

まず、過去の事例は探ってはいないが、豪雨のみでの中止裁定は恐らく初の事。そうなるとここでまず一つ思うのは、鳥栖-湘南戦の際にも述べたように、これでひとつ「前例が生まれてしまった」事への不安。前例があるから、とハードルが下がったことで、さらにもっと「起きてはならない試合中断」が起きてしまうかもしれない。そして次は我が身に、非常に納得しない形で振るかかるかもしれない。そんなifを生んでしまったことの不安。

そしてもう一つ、それ以上に感じたのは、中止の裁定後に起きたあたふたした混乱に対する不満だ。

ゲリラ豪雨という単語が定着し、その威力も各自が皮膚感覚でまじまじと実感しているほどの浸透の中で、今後ももちろん、こういった事は起こるだろう。しかし、そうなった時に果たしてどうなるのか?どうするのか?試合は後半29分まで経過した、その試合が中断されると、再試合はどういう形からどのように行われるのか?

そういった基準を、Jリーグとしてあらかじめ準備することができたのではないだろうか?自分が少なくとも知っている2例、鳥栖-湘南戦の件は理事会会議にかけられ、チェアマン裁定にまで持ち込まれたわけだし、アルヘン戦は誰もに注目された試合だった。つまり、Jリーグ側が危機感を持ち、対策を打たねばならないと『気づける機会』はこれまで少なくとも2度あったわけだ。

しかしそこでは何も対策はされず、結果この試合も理事会にかけられ、イチから議論して、恐らく誰もが納得しない結論が出されるのだろう。気づいておけば、そして危機感を感じておけば、例えば「75分間試合が行われれば試合は成立とする」といった基準を規約に盛り込んでおけば、文句はありながらももっとスムースに話が進んでいたはずだ。

それだけでなく、もっとクラブに直結した「カネ」に関する取り決めだって必要なのかもしれない。再試合でのアウェイチームの遠征費をどうするか?などはJ2クラブにとっては切実な問題なはず。もっと突っ込んだ話をすれば、この日テセが決めた2ゴールが契約更改の際にどういった「価値」となるのか、ってのもクラブにとっては直結した問題だ
(ちなみに鳥栖-湘南戦で「幻のゴール」を決めたアジエルに対し、帰りのバスの中で湘南・真壁社長が「あの幻のゴールは査定にしっかり加えるからな」とアジエル本人に直接伝えた、というエピソードもある)


何はともあれ、この手の問題はもはや「定期的に起こりかねない問題」であったはず。起きてしまった今回の問題の「決断面」での是非はひとまず置いておいて、その後の手際において、Jリーグ側はもっと規約面で万全の基準作りが出来たのではないだろうか?基準さえあれば、それに照らし合わした不満で済んでいたし、その基準が無いから、不満はヒトの欲を取り込み、変な形で肥大しかねない事態にもなる。

そういった混乱を余計に大きくさせたのは、Jリーグ側の準備不足。過去2件の事例を思えば、怠慢と言っていいとすら思う。これほどのビックマッチを潰し、混乱した責任を重く受け止め、15日の理事長会議では一歩踏み込んだ対策にまで議論が及ぶことを望む。