敵が知らず、己を知れば百戦危うからず 1/3 那覇西-國學院久我山

一度傾いた流れに抗う気力。大人に対してだって求めても応えてくれない事ばかりなこの難しいスキルを、所詮アマチュアな高校生に求める事は酷である。高校or大学の学生スポーツにおいてはこの根底がある。
1-7の大差が付いた試合。確かにこの試合での実力差はあったとは思う。那覇西にはテクニックがあっても、そのテクニックの使いドコロはもっと改善の余地がある。右から来たボールを左に流せる、相手を背負いながらターンし散らせる、またかわして局面を打開する仕掛け、それぞれある程度はあったようだがその場所がセンターライン付近では自らの首を絞める事に繋がりかねない。テクニックを適切な場所で表現出来れば…そんな気持ちで前半を観終えた。
0-4で迎えた後半、しかしここで気持ちを切り替えてしっかりと戦った那覇西の選手達。メタメタにやられた前半で気持ちは完全に切れていたが、HTでしっかりと気持ちを入れ直してきた。そんなプレーが後半は多く観られ、結果、強欲さが美しかったロングシュートで1得点。そしてそれは選手だけではない。絶えることなく響く三振の美しい調べ。スタンドの応援も選手に負けじと気持ちが良かった。
思えば前日は、「あの」と付けて良いであろう佐賀東との激戦があった。その場では気付かなかったが、それによるコンディションはしっかりと差し引かなければならない。那覇西をこの試合のみで計るのは早計なのだろう。
「来年また帰ってきます!」済んだ青空の下で明るく宣言したスタンドの白塗り兄ちゃんに盛大な拍手。今後の糧になる後半をやり切った那覇西の、来年が楽しみである。

さて久我山。2戦連続の7得点。勢いはとどまる事を知らない。
那覇西に対してこちらは早々に流れを手にする事で勝ち進んできた。突っかけては後ろに落として、突っかけては後ろに落として。その繰り返しでどんどんと相手のラインをズルズル下げる威圧の攻撃は確かに素晴らしいクオリティ。野洲に比べれば久我山は間から顔を出す動きに長けている。攻撃に迷いがないからリズムが崩れない。
対して守備。どうも危ない。我らがカピタン畑尾と同じく、早稲田スポ薦内定の高橋も含めてだが、どうも違和感を感じる。恐らく1vs1は強い。しかしボールを手にしてからのクリアだとか繋ぎだとか、その為のトラップだとかボールの置き方だとかはどうも違和感を感じずにはいられない。それに加えてGKはこの日2度、横からのボールを取り損ねたりと、判断・連携が良くない。
長所の攻撃と短所の守備。ここにも久我山のメンタルが問われると予想する。
勢いで飲みこむ事が多かった試合が続き、しかしこの先はそうはいかない。長所の攻撃が最初に目立って、試合の主導権をまず握ってきたが、それが逆になった時。そういうチーム、って割り切りが、果たして本人達が出来ているか?悪い言い方をすれば、この攻撃力、この守備なくせに、それでいて点取られてしょげる様だと観てるこちらとしては「なんじゃそりゃ?」となる。「点を取られてもかまわねぇ、1点取られたら3点返す」それくらいの割り切りをメンタルとして備えていれば、彼等にはまだまだ「この先」があるだろう。

5日の相手は前橋育英久我山が特殊なチーム故に、お互い知らないチームとの対戦となる事が自らに有利に働いていたが、次はそうはいかない。何より前橋育英。プリンス・高円宮それぞれで見せた攻撃力は本物だ。
次の試合はかなりの確立で、今まで2戦では求められなかったメンタルが問われる試合となる。國學院久我山の真価はここで明らかになるだろう。
田邊草民もそれは同じ。ただこの日はこの日で、真価を見せれていたとは思うが。個人的にはこの選手については「相変わらず東京は(つーか強化部は)(つーか鈴k)はこんな選手が好きだなぁ」って程度で過剰に悪くは感じないのだが。ただ、面白い選手である事には間違いないはず。この日は我らが城福監督も観戦していたらしい。『LEONの皮を被ったマッドサイエンティスト』が「グヘヘヘ…!」とどう改造を施すのかを我らは楽しみに待てばいいじゃないかな?