ボールを繋ぐことを阻害させる大きな要因が、圧力に窒息させられ、パワーで潰されることであるのは、FC東京のトップチームを近年追いかけてきた人であれば身にしみて理解するだろう。
第三種(U-15)→第二種(U-18)→第一種(U-22/社会人アマ・プロ)と階級が上がるごとに、そしてアマチュア→J3→J2→J1とDiv.が上がるごとに、パワーと圧力、総じて「フィジカル」の要求レベルは顕著になっていく。
フィジカル要求レベルがガツンと上がった近年のJ1トレンドを追いかける様に、今年の高円宮杯プレミアリーグEASTにもフィジカル要求の波が来ているように感じられる。要求レベルに適応できたチームと遅れているチームとの差が、勝ち点にハッキリと反映されている印象があり、その中で、FC東京U-18は「世代トップに離されず追いかけている位のレベル」には位置できていると言えるだろう。
一般的に、フィジカルの要求レベルが上がった要因は、交代5人制の導入が大きいとされている。加えて育成年代で言えば、忌まわしい流行病の時期に練習制限等が強いられたことで、結果的に「選手を大きく育てるためには、食事と休息が必須。今の選手は練習をさせ過ぎているせいで、身体を大きくするための十分な栄養が足りていない」という言説が、鈴木彩艶のエピソードなどで証明されつつあることも大きいだろう。
骨端線を観察しながらウェイトトレーニングの開始時期を探る取り組みも一般化されつつあり、様々な要因により、第二種でもフィジカルトレンドが盛り上がっているのが昨今であろう。
そもそもFC東京は、この第二種から第一種J1までの飛び級フィジカル適応に、FC東京U-23活動時代から苦労し悩まされてきた過去がある。
U-18選手たちがU-23の『穴埋め』として、時には一日で別会場の二試合を掛け持ち出場する等のブラック稼働をもって第一種フィジカル要求を体験。その場その試合では不十分なフィジカルステータスなりに適応できたとしても、シーズンを続けて疲労も重なる中でも出場を(させられ)続けたことで、例えばコンタクト時の身体コントロールが通常よりも効かなくなり、着地や踏ん張りの制御乱れから重大な怪我が発生してしまうなんてことも非常に多かった。
難しいのは、U-18年代トップDiv.の高円宮杯プレミアリーグと、その一つ下のプリンスリーグとでも、かなり埋めがたいフィジカル差が既に存在していたことだ。つまり、プレミアリーグは第二種年代としては十分に、世代トップを冠するに相応しいフィジカル要求を実現できていた。
「第一種って、J3でもコレなのに、J1の要求レベルってコレ以上なの…?プレミア級でも十分コレなのに…?」
「プロ予備軍としてのJアカデミーは、どこまで、どうやって、この要求レベルに応えるフィジカルを”予め”用意しておかないといけないの?」
なので高卒新人は、結果的に出場機会を得られない一年目をむしろ利用して、第一種に適応できる身体を作り上げるのが一般的だ。逆に、中途半端に一年目に出場機会を継続的に得られてしまったがせいで、身体を作る時間を得られずに後々苦労するパターンも少なくない。
FC東京の歴史において高卒新人がいきなりJ1フィジカル要求に適応し活躍できたのは、恐らく松木玖生くらいだろう。
フィジカルエリートとして、また自身の人間性も相まって、高卒一年目からあそこまで身体を作りあげ適応してみせたのは、そもそも基準になり難い異常個体としか言い様がない。最近、シーズンオフに帰国して国内でトレーニングに励んでいる玖生の写真を観たが、両腕の太さは、ほぼ青木マッチョだった。
サウサウプトン所属の松木玖生選手✨
— エアライズ戸田 (@airise_toda) 2026年6月20日
がトレーニングに来てくれました。
オフシーズンにもかかわらず、しっかり追い込んでいただきました!!
世界で活躍するトップ選手もトレーニングを行う
エアライズ戸田で皆様も一緒に熱く燃え上がりましょう。
#低酸素トレーニング#松木玖生#高地トレーニング pic.twitter.com/jWArG421HY
また、高卒新人がいきなり活躍と言えば米本拓司が過ぎるかもしれないが、彼は高卒一年目にナビスコ杯MVPを取り、しかし二年目のプレシーズンに左膝に重大な怪我をしてしまった。
「活躍をすること」と「活躍をし続けられること」には大きな差がある。簡単ではない。
だからこそ活躍し続ける経験というのは、例えどのDiv.での経験であろうと貴重なものであり、総じて『継続的な出場機会』の獲得こそがプロサッカー選手として最も重要と言えるのである。
話を戻して。
対戦相手の鹿島アントラーズユースは、近年のフィジカル要求にいち早く適応した、世代トップ級のフィジカルを備えたチームの一つと言える。
クラウドファンディングで大人から毎年お布施を募り、選手寮やグラウンドなどハード面を次々に刷新。現在のメンバーはJY時代に全国優勝を果たしたメンバーを揃えながらも、さらに世代別代表級の選手を外部から4名も招聘に成功。
結果、昨年は全国3冠を達成。日本の育成年代サッカーの歴史全体をみても屈指の、選手が揃ったチームだろう。
世代トップ級のフィジカルを実現させているのは、ハード面の充実だけではなく、鹿島が「U-21を保有しない」と決断した事情にも関係している。それはイコール「ポストユース育成を外部クラブへのレンタル移籍によって進める」という決断でもある。
つまりそのためには、第一種での実績なしにレンタルを受け入れてもらえるだけの「箔」を第二種時点でつけておく必要性にも繋がってくる。また最大の理想として「高卒即レンタル」を実現させるためにも、「ユース時代のうちにフィジカルを完成させ、かつアントラーズへの帰属意識やフィロソフィーを備え”終えておく”」という、本来は高卒一年目でのOJTをアカデミーで既に終わらせておこうという方針によるところが大きいと思われる。
(これは前FD吉岡宗重のインタビューからの話なので、今それが継続されているかは不明だが、当時のこの方針が今の隆盛を支えているのは確かだろう)
FC東京はFC東京で、昨今よく言葉として出しているのが「育成の前倒し」。
その実現性はさておき(さておき)、鹿島アカデミーとは根っこの部分では考え方は共通しているだろう。方やU-21チーム保有方針など手法に違いはあるわけで、今回の対戦を通じてその現状・未来を窺うことも、ひとつ楽しみと言えるかもしれない。
高円宮杯プレミアリーグEASTは今節をもって中断期間に入り、再開は9月となる。
これはJFA通達により、酷暑対策として育成年代における7月8月の公式戦実施が原則禁止となったのがその理由。結果、夏の全国大会として数十年間、日本サッカー界を支えてきたクラブユース選手権も冬開催にスライドされた。
この試合をもって選手たちは、日本クラブユース界隈でも初めての「何もない夏」に突入することになる。
その代わりとなれているかはアレではあるが、全国から明確なターゲットクラブとして目を向けられている鹿島アントラーズユースを”味の素スタジアム”で迎え撃つ、今回のこのシチュエーション。
昨年の味スタ開催では、”あの味スタ”での試合に最初ビビったプレーになってしまっていたのも、今となっては憧れ故の御愛嬌。
少なくとも選手は、今年のこの機会に燃えに燃えている様子。
トレンドの変遷や、Jリーグのシーズン移行のしわ寄せ等、様々に過渡期を感じる今シーズンではあるが、今このシチュエーションでのこの試合に、あまりにも様々な要素が集結した。
伸るか反るか。
ベンチや観戦スタンドを含めて、両チームの”らしさ”に、外野の我々は、あくまで寛容に、しかしバチバチに熱く。
サッカー少年少女たちも、親でもない大人たちも、是非味スタに集結して見守ってあげて欲しいなと強く願います。
Road to 2030。
W杯による「サッカー観戦したい願望」「何でもいいから味スタいきたい願望」を満たすには十分すぎる位に、単純にサッカーの見応えとしても超面白い試合になると思いますよ〜。
高円宮杯U-18プレミアリーグEAST第11節
FC東京U-18 vs 鹿島アントラーズユース
6月28日(日)17:30キックオフ @味の素スタジアム