2024年12月27日。25年度のチーム立ち上げに向けた、年末恒例のフェスティバル。
言ってしまえば「ただの練習試合」に、国士館大学楓の杜メインスタンドからゴール裏に至るまでビッチリと埋め尽くす横断幕。親でもないのに駆けつけた熱いサポーターの視線と、会場制約の中で最大限繰り広げられるチャントの応酬。年末の平日午前としては、あまりにも異様な緊張感。
理由は唯一つ、これが『東京ダービー』だから。
結果はスコアレス、内容は防戦一方。ヴェルディユースは前年のU-17 Jユースカップを制し、その後11年ぶりとなるリーグ昇格を成し遂げた世代だ。FC東京U-18としてはむしろよく堪えたし、今年のトップレベルを肌感で知るには最適な機会にもなった。
だが、何より突きつけられたのは、2025年は「東京ダービーがあるシーズン」だということ。こうして、佐藤由紀彦監督の下、2年目のFC東京U-18は走り出した。
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2025年の高円宮杯プレミアリーグEAST、FC東京U-18の中断前までの成績は5勝2敗4分の5位。負けの数はリーグ最少だが、引き分けの多さに足を取られる。
引き分けの中身を見ると、4月に行われたアウェイ東京ダービー「2nd leg」は二度追いついての2-2と、12月の出来を思えばまずまずの試合。それ以外は、相手チームとの成熟度の差を得点差に結びつけきれず勝ちを取りこぼした悔しいドローだ。
立ち上げから、チームは確実に成長している。GKを絡めたビルドアップは、立ち位置もボールスピードも相手スライド守備を上回る意識が高く、相手プレスに対する「+1」を上手く作れている。ワイドにボールを受けたSBには、ボランチもしくはSHが並行サポートに入り、前向きのフリー状態から攻略を図る。局面で相手を「技術で剥がす」ことにも正面から挑んでおり、1試合平均2得点は十分な成果だろう。また、守備でも局面変化に応じてすべての選手が「関わり続ける」ことを徹底。ポジションを戻せていない選手に対しては、たとえプロ契約選手であろうとも容赦ない声がベンチから飛ぶ。攻守にいい方向へ進んでいるように伺える。
だからこそ次の課題は、それを最終スコアに反映するための振る舞いだ。獲り切る、守り切る、勝ち切るための、90分間・選手スタッフ全員での取り組み。サッカーvsサッカーの勝負を超え、「集団vs集団のチーム競技」としての側面。
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リーグ中断前のアウェイ鹿島アントラーズユース戦は、その集団vs集団を問われる象徴的な試合だった。
試合前、首位鹿島ユースと3位東京の勝ち点差は2。優勝を口にするためにも勝利が必要な東京は、前半に先制、81分の勝ち越しゴールで2-0とする。しかしその後のラスト9分+ATですべてがひっくり返る。2-3。悪夢のような逆転負け。
振り返ればきっかけは些細なアクシデントに過ぎなかった。そこではそう解釈してすぐに切り替えるべきだった。そのきっかけから鹿島ユースは「ホームで絶対に負けたくない」と執念を膨らませ、一方で東京は鹿島に真正面から飲み込まれてしまった。それは、サッカーvsサッカーの側面と同じくらいに、集団vs集団の「闘い」の部分での敗戦と言えた。
試合後に泣き伏せる選手たち。この試合の意味、スコアの意味。そこに至るプロセスの意味。サッカーとして、集団として、様々に痛感させられる経験を得て、リーグは中断する。
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夏の全国大会、クラブユース選手権では、準々決勝で東京ダービーが実現した。遠い宮崎の地で行われた「3rd leg」は、FC東京U-18が2-0でヴェルディユースに勝利する。
この試合では、2-0リードで迎えた後半飲水タイムにベンチから「カシマを思い出すよ!」との声かけがあった。鹿島ユース戦を教訓として、サッカーだけでなく、個として集団としての成長に向き合ってきたであろうFC東京U-18。そんな中たまたま迎えた東京ダービーという舞台が、集団としての闘いをさらに引き上げていく。
『東京ダービー』が極上の肥やしとして成長を促す。
所属ディビジョンの違いから、高校年代のリーグ戦に東京ダービーがあるシーズンは実に2011年以来。それでも『東京』には『東京ダービー』があり続けた。
小学生の頃から同じ地域で共に育った仲間たちは青赤と緑のユニフォームに分かれ、中学世代では何度もリーグ公式戦を戦ってきた。高1では国体東京都代表として合同チームを組み、『東京』を背負う仲間として全国優勝を目指しもした。
選手たちはずっと、東京ダービーの歴史と地政学の当事者だった。何を言われずとも球際の強度が数段上がる。そんな機会が、12月のただの練習試合から存在している。東京ダービーとは、この街の宿命であり、この街だけの幸運でもある。だからこそ『東京』は、日本サッカーにおいて、もっと突き抜けなければならない。
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クラ選3位。素晴らしい成績だが、準決勝で敗れた相手があの鹿島ユースであったことで、どうしても感情的な悔しさが募る。
元々今年のU-18は、意識のエアポケットのような場面での失点や、守備基準についてベンチからの声掛けが多くあった。Bチームでも、T1リーグ中断前の多摩大目黒戦では相手「集団」の圧力を跳ね返せず粛々と飲み込まれる負け方を経験していた。
サッカーとしても、集団としても、まだまだ改善していかないといけない箇所は多々ある。1ヶ月程度ですべて改善される訳がない。
だが、アスリートが「満を持して」チャンスを迎えるなんてことは無理な話だ。だから選手はどんな状況であろうと常に成長を加速させ、完璧な準備をし続けないといけないのだ。
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夏を経て、リーグが再開する。9月には今年最後の東京ダービー「4th leg」。鹿島ユースとの対戦も11月30日に予定されている。
目指すは勝利、個の成長、FC東京U-18という「集団の成長」。
ディテールを突かれてから気づくのは三流。
ディテールの過程を振り返って反省するだけなら二流。
ディテールを先回りして気づき、潰しておける者こそが一流。
所属選手44人全員の、いや、スタッフも含めた全員分のディテールを拾い上げて、要求して、突き詰めて。サッカーとして、集団として、両面で突き抜けた選手となれるように。
念願のチャンスは、いつも不意に訪れる。夢は待ってくれない。だから、時間が足りないのだ。
U-18・U-15深川・U-15むさしと、FC東京アカデミーを勝手に応援するこの企画。2025年も無事に行うことが出来ました。参加いただきました皆様、ありがとうございました。そして今年も、Tシャツと一緒にレポートを同封する機会を頂き、今回は上記の文章を送らせていただきました。
って早速ですが、どデカイ訂正があります。
東京ダービーは夏までに3回対戦があって、9月には4回目を控えていると書きましたが、2月の東京都クラブユース新人戦でヴェルディユースと対戦していた事を完全に忘れてました。正しくは、夏までに既に4回対戦があって、9月のは5th legでしたww 大事な縦軸を豪快に間違えてしまったww
けどまぁ、内容に大きく影響は無いから別にいっか(懺悔おしまい)。
ということで今回の縦軸は、U-18においても復活した東京ダービーでした。
当然、すこぶる不安だった。トップの東京ダービーが、久しぶりに蓋を開けてみたら特にピッチ外において巨神兵並みに腐っていた惨状を観ていたのもあって。ましてやアカデミーにおける東京ダービーは、(自分の捉え方で言えば)意味合いもセンシティブさもトップのそれとは相当に異なってくる。
そんな不安MAXな中で観に行ったのが、冒頭で触れた前年12月の「ただの練習試合」。

シンプルに「この試合は、確実に両選手を成長させてくれる抜群の養分になる」と。そしてそんな試合を12月のこのタイミングで、言うなれば東京ダービーだからって”だけ”で得ることができる。「12月にこの試合が出来といて良かったな」この幸運は、ヴェルディユース側の方々も同じく実感してくれたところではないかなと勝手に思っている。
(そして、それが今後もし壊れてしまう事があるとすれば、その原因はピッチ上ではなく間違いなくピッチ外でしかないだろうから。全ては自分たち次第だな、とも。)
文章内からは外したエピソードをここで供養させてください。夏の全国大会、クラブユース選手権準々決勝で実現した東京ダービー「4th leg」@宮﨑シーガイア。
この試合では、同じ東京都内でFC東京・ヴェルディと共にクラブユース界隈を盛り上げる古豪・三菱養和SCの選手たちが観戦に来てくれた。
今年のクラ選グループステージではFC東京と三菱養和は同組となり、第2戦で激突していた。同会場で共に戦っていた養和の選手たちが、グループステージ敗退となった翌日、共に勝ち進んだ東京のライバルたちの試合であればと、残って観戦しに来てくれた流れ。「東京ダービーだもんなぁ絶対面白くなるからな〜」といった会話は、様々な観点で「当事者目線」のリアルな声として、端から聞いていて嬉しくもあった。
凄いなと思ったのが、観戦する養和の選手たちがキレイに「FC東京寄り」「ヴェルディ寄り」「中立(中央付近)」とグループ分けされていたこと。

青赤派な養和っ子たちは、我々の(?)試合前円陣にも加わってくれた。
今年のクラ選では、親御さんたちにサポーターが混ざらせて頂く形で、試合前に一緒に円陣を組んで気合い入れを行うことが恒例となっていた。(こんな流れですみませんが、宮﨑現地でお世話になった親御さん方、本当に色々とありがとうございました…!)。
言わば「円陣のプロ」である養和っ子達からすれば、素人おじさんおばさん達の円陣なんて拙かったかもしれないが、一緒に出来て、そして東京ダービーを応援できたのが凄く嬉しかった。
そして自分はこの光景にものすごく、FC東京とかヴェルディとかって東京ダービーの枠組みを超えた、東京都全体としての、言うなれば『トーキョーフットボールカルチャー』を勝手に強く感じてしまった。世界屈指にカネとヒトが集まる、この豊かな土壌であるトーキョーにおいて、勿論まだまだ小さい範囲かもしれないけど、サッカーを営み続けてきたことで定着した「プレーする文化」「観る文化」「応援する文化」様々な文化たちが、トーキョーに確実に定着している。それが、遠い宮崎の会場で強く表現されていると。そんな事を強く実感させてくれる嬉しい出来事だった。
(その数カ月後、三菱養和出身の相馬勇紀・望月ヘンリー海輝に、国立競技場でトーキョーフットボールカルチャーを存分に”おかわり”喰らわされる事になるわけだが…www)
だからこそ、責任の重さも痛感したわけで。最高の才能が生まれ育ち、最高のライバルも存在するこのトーキョー。いや、もっとやれなきゃイカンでしょと。
今回、オモテの縦軸が東京ダービーだったのに対して、ウラの縦軸は鹿島アントラーズユースでした。土地柄、EAST方面しか状況は把握していないですが、現在のユース界隈における覇権クラブは間違いなく鹿島ユースでしょう。執筆していた当時は、FC東京U-18は内容も成績も高円宮杯のリーグ優勝を伺っていい立場だった。そんな中で、夏前に、そしてクラ選準決勝で、鹿島ユースには差を体感させられる負け方を喫してしまった。
リベンジの機会とターゲットにしていた、11/30ホーム小平開催。スコア上は3-0の勝利とリベンジを果たした格好ではあるものの、実際相手は既にリーグ優勝を決め終えていた。優勝を争う最後の勝負をここで迎えるつもりだったけど、それ以前にこちらは勝ち点を取りこぼし、鹿島の独走に振り切られ、当初の思惑からは程遠い舞台となってしまった。
選手たち、特に3年生が意地を見せてくれたゲームでした。試合への入り方、時間の使い方など、選手たちが意見を出し合いながらプランを練りました。さまざまな意見をうまく取りまとめてこの試合に臨みました。前節の敗戦から選手たちがファイティングポーズを取り、言動や行動で表現してくれましたが、鹿島はその作業を(シーズンの)最初からやっていたと思います。その差がわれわれとの順位の差に出たのではないかと思います。
https://www.jfa.jp/match/takamado_jfa_u18_premier2025/news/00035816/
ユキヒコ監督は象徴的な良いコメントを残してくれはしたけど、自分からもっと言わせてもらえれば、シーズンの最初どころかシーズン前からやるべきでしょうと言いたい。
何故なら我々には、12月に東京ダービーがあったのだから。
そしてU-18のBチームは東京都1部リーグで18試合もの公式戦を経験できる。U-15深川・むさしもある。シーズンの最初どころか、シーズン前から、昨年のBチームから、もっと前のU-15から。
選手としての成長、チームとしての成長があまりにも最終学年・シーズン終盤に偏りすぎているのは、FC東京アカデミー全体の大きな課題だと自分は常々感じています。FC東京アカデミーは、これだけの豊かなトーキョーフットボールカルチャーの上に存在させてもらえているのだから。いくらでも機会が直ぐ側にあるのだから。
東京ダービーがある”のに”、とはなって欲しくないんだよ。
文中であえて「だからこそ『東京』は、日本サッカーにおいて、もっと突き抜けなければならない。」って書き方をしたのは、これがFC東京だけでなく、ヴェルディにも向けて書いたからです。
年が明けて1月からは、恒例の東京都クラブユース新人戦が始まります。ヴェルディとも三菱養和とも、そして横河武蔵野や町田ゼルビアなど様々な「トーキョーのライバルたち」とも戦える幸運を改めて感じつつ、そのアドバンテージをムダ無く自身の成長に繋げてくれることを大いに期待します。
もちろんその前に、今週末はU-18の'25シーズン最終戦。今のすべてを、悔いなく出し切れることを願います。今年もありがとうございました!