年末となる12/30,31に、チームからビジネスとフットボールそれぞれの観点での2024年総括が出されました。
この内容については各箇所で諸々言いたいことがあるけど、ここでは川岸社長がフットボール総括の際に軸としていた「ゴール期待値」について、自分の勉強がてら深掘りしてみます。
ゴール期待値とは
まずはゴール期待値についておさらい。ゴール期待値とは…
「あるシュートチャンスが得点に結びつく確率」を0~1の範囲で表した指標
https://www.football-lab.jp/pages/expected_goal
値の良し悪しの感覚値を身につけるために、こちらの記事からも引用。
- シュートの殆どはゴール期待値が0.1未満。0.2以上となるシュートは全体の約10%強
- GKとの1vs1などといった、分かりやすく「チャンス」と感じる状況だと、ゴール期待値が0.2以上となりやすい
- ゴール期待値が0.2以上となるシュートは、だいたい1試合で全体の10~20%内
「チャンスを決めきれない」と言っても、実際そのチャンスでゴールが決まる確率ってその程度なんだなぁ。なるほど。
方や、指標に表れない部分として例えば、0.1未満のシュートも、もしかしたらその後に生まれるゴールに繋がる「撒き餌」になっていたかもしれない、っていう感覚も併せて持ち合わせておきたいところ。分かりやすい例で言えば、CBを釣り出すために遠目からでもミドルを打っとけ的なもの。だから0.1未満だろうと必要なシュートはあるはずだし、それで景気が良くなることもあるよっていう。
こうして試合で発生した各シュートに対して、ゴール期待値を算出し、その合計値を積み重ねていくと、その試合でのゴール期待値の合計になると。なので、1つの試合の中で、ゴール期待値の合計を高めていくためには、「加算される(=シュートを撃つ)機会を作る」ことと、「そのシュート機会をゴール期待値が高いものにできる」ことの両方が重要になるだろう。
FC東京のゴール期待値と川岸社長(=クラブ)の認識
ゴール期待値とは、という前提知識を得られたところで、じゃあ今年のFC東京はどうだったのか話に。2024年のFC東京のゴール期待値は1.21だったということで、川岸社長の具体的な説明が下記。
──とすると、チーム作りの方向性としてめざすべきは、ゴール期待値の向上になりますか。
そうですね。それはクラブで共有している部分です。ゴール期待値を上げなければ点はとり続けられない。2024シーズンの上位クラブを見ていくと、神戸やサンフレッチェ広島は1.6とか1.8という数字です。私たちとは大きな差がありますし、それは決定機が少ないということです。この数字を改善していかないと順位も上がっていかないわけです。
https://www.fctokyo.co.jp/fanzone/fctokyofanzone/detail/720
ここで重要なのは、FC東京のゴール期待値1.21とはどの程度のレベルの値なのかということ。リーグ全体で言うと、この1.21という値は16位となる。端的に、ひでぇ値。
https://www.football-lab.jp/summary/team_ranking/j1?year=2024&data=expected
今年のFC東京が、こんなサッカーで、なのに何でこれだけ得点を取り、この順位に位置できたのか。その手応えと実際とのギャップに混乱するサポーターは多かったのでは。その回答として「得点数リーグ7位、順位も7位、けどゴール期待値16位」という事実は、その混乱を「そりゃそうだよね」と少しスッキリさせるものでしょう。
ゴール期待値1.21がリーグ16位程度の代物だと読み手側もアップデートした上で、改めて川岸社長の説明を読み返すと、うわぁこの人、絶妙に嘘ついてねぇな!ってなるww
ゴール期待値を簡単に表現すると、どれだけゴールを決めるチャンスがあったかということです。色々な算出方法があるようですが、データスタジアムによれば、FC東京のゴール期待値は1.21でした。それに対して1試合平均で1.39得点という数字が出ているので、効率良く点をとっていたと言えます。少ないチャンスで決め切ったケースが多かったわけです。期待値はシュートの回数や打った場所などの組み合わせから算出していくのですが、その値が低いということは確率が低いシュートが多かったことになります。結局、ゴールは増えたものの、ゴール前まで行けていないとか、チャンスが少なかった印象を抱かせたのかなと。
長いシーズンやシーズンを繰り返すごとに、ゴール期待値とゴール数は、だいたい近い数字になることはよく言われています。今シーズンは昨シーズン対比でゴール数は増えたので効率良く得点がとれて良かったのですが、これは毎シーズン再現できるものではないとも思っています。
https://www.fctokyo.co.jp/fanzone/fctokyofanzone/detail/720
「印象を抱かせたのかな」、痺れる。
24年のFC東京のゴール期待値がリーグ16位となったボトルネックとは
川岸社長が「ゴールまで行けていないとか、チャンスが少なかった」ことを「印象」と説明した箇所について、もう少しスタッツを紐解いてみる。
https://www.football-lab.jp/fctk?year=2024
Football LABってサイトはよく出来ていて、ちゃんと理解がしやすい流れでページが構成されていることが分かる。つまり、
- 攻撃回数はリーグ7位なくらい行えているけれど、
- シュートはリーグ17位なくらいに撃てておらず、
- だから「シュート数/攻撃回数」で算出されるチャンス構築率も17位です。
- だけどゴール数は何故かリーグ7位で、
- それはシュート成功率リーグ3位だからだよ。
さらに別スタッツからも引用すると、
- 攻撃回数はリーグ7位だけど、
- 相手ゴールから30mまでのエリアに進入した回数はリーグ16位で、
- だからペナルティエリア進入回数もリーグ18位なんだから、
- そりゃゴール期待値もリーグ16位になるに決まってるよね。
- (退場1位はここではスルーしてね)
だからプレーエリアも、リーグ平均と比べてDFラインと両サイドのタッチライン際ばかりでプレーが多くて、相手ゴール前でのプレーが少ないと出るのも当然だよねと。
川岸社長のコメント。
決定機に関しては再現性をどう高めるかについてよく言われますが、一方で似たようなシーンはあるにせよ、全く同じシーンを再現できないのがサッカーです。最後のところは選手のイマジネーションやアイディア、決定力の組み合わせになる。そういう部分も含めてもっともっと突き詰めていかないと、ゴール期待値は上がっていかないと思っています。
ここが、サッカーの試合を観ている人の感覚と、出されたフットボール総括の内容との、認識ギャップの一番大きいところでしょう。
川岸社長はここで何故か最後のシューティング部分を持ち出して言及しているけれど、そもそも「最後のところまで到達できていない」のは「スタッツからも明らか」な訳で。
MIXI時代のここ最近のFC東京が、どういうフットボールスタイルを目指しているのかなんてのは、もはや自分にはよく分からないし、もし何かしらがあったとしてもその正統性の段階からそもそも感じられていない訳だけど。
でも恐らく、目指してるのであればこの辺のスタッツって絶対に見逃しちゃいけない箇所だよね。みんな、ここの具体を一番聞きたいんじゃないの?例えばこの箇所に最低限は触れておきつつ「詳細は新体制発表会で小原GMから詳しく説明させます」ならギリ分かる。けど完全スルー。だから今後も触れられる感じが一切無い。
我々の予算規模はリーグで7〜8番目です。ここから順位を上げていくために、もちろん予算を増やせるように汗をかいていきます。一方で、予算に対して良いパフォーマンスを出せる監督と戦うことも必要であると思っています。
予算規模がリーグで7〜8番目のチームが、ゴール期待値リーグ16位その他諸々でいいんですか?これはどう考えても予算相応のパフォーマンスとは到底言えない代物ですよね?そんなパフォーマンスが出せないのが、まるで監督のせいだみたいな言い方しているけれど、クラブ側がこういうレベルの認識を公表している程度だったら、こんなスタッツになるのも当然なのでは?
そういう、出来てないところに無意識に気づいていないのか、もしくは意図的に言及を避けているのか。けど絶妙に嘘をつかずに構成されているのがこの説明な訳です。
いやクラブもバカじゃないからさ、恐らくこの箇所にもきっと気づいているだろうし、だからこうも絶妙に嘘をついてない総括が公表されているのだと思う。なので恐らく意図的に言及を避けているのだと思いますが、だからこそ尚のことタチが悪いってのが自分の印象です。
ということで、来週10(金)には新体制発表会が行われ、新シーズンが始動になります。FC東京はここで、どんな目標設定を発表し、どんな選手編成を披露し、何について言及し、そして何を言わないのでしょうね。
'25シーズンを楽しみにしている人に向けての、これが少しでも何かしらの補助線になれば幸いです。
ちなみに、同じような見比べ方を24年-23年-22年とで行うと、より示唆が深まります。あとみんな大好きアルビレックス新潟さんがどうだったかとかも。そしてパッと見た感じだと、同じようなことが守備においても言えそうでした。自分としては守備こそ、って思いなのですが。
まぁそれぞれ、興味がある人は更に深掘りして見てみるといいかもね!