FC東京U-23はもしかしたら儲かるかもしれない、というざっくりマンデー

FC東京U-23でチームを結成しJ3リーグ興行を行うにあたり、クラブスタッフ的には「チケット代金は500円でもいい」とも考えていたらしい…なんて話をチラッと伺った。それが結果的に¥1,700(ホーム大人前売)というプライシングとなったのは、周辺クラブ運営への配慮が要素として大きかったとのことである。

適当にクラブをピックアップし、チケット最安値を並べてみた。ここからは様々な示唆が得られそうではあるが、本題に沿ったものだけに絞ってみると「平均チケット価格は所属Div毎で大体の傾向がある」。ざっくりとJ1は¥2,500、J2は¥2,000弱、J3は¥1,500で、JFLになると¥1,000を切る。

クラブの財政規模は当然、所属Divによって大きく違ってくる。そして、チケット収入はクラブ収益にとって大きな要素でもあるわけだから、チケット価格はクラブの規模に直結する。その規模感の実態、もしくはクラブとしての自己認識(実態に対する「ポーズ」「見栄」)が透けて見える各プライシングには個人的に非常に納得感があった。

FC東京としては、U-23J3に参戦するとは言え所詮セカンドチームである。U-23に財政の主軸を担わせる訳でもないし、稼ぎのメインは当然トップチームなわけだから、U-23で儲けようと考える必要が無い。前述の「500円でもいい」という感覚は正直ベースな話だろう。

しかし視点の軸を他クラブに据えてみると、話はもちろん変わってくる。トップチームがJ2・J3JFLで稼ぎの主軸を担うとなれば、当然それなりの価格でそれなりな観客をあつめ、財政の安定に努めなければならない。チケット価格としては絶対にこれ以下を切るわけにはいかない、というボーダーがあるはずだし、それを下回ればクラブ消滅となりかねない。

どちらの立場にも事情はあり、故にどちらの考え方も正解だ。そして今回FC東京U-23参戦にあたって、チケット価格の部分で「譲った」のであれば、これも判断としては恐らく正解だろう。価格競争を仕掛け、近隣クラブ同士で泥沼の消耗戦になったところで、最終的に不幸を見るのは選手であり、サポーターだ。これぐらいの「談合」はあって然るべきだろう。FC東京U-23のプライシングの話は、嘘かマコトか適当に聞いた話とは言え、信憑性のある話でもあった。

※ちなみにG大阪U-23C大阪U-23J3参戦に際し、それぞれ¥1,000・¥800とプライシングしている。彼らにとって気にするべき近隣と言えば、京都サンガFC大阪辺りになるのだろうが、そういった事情を乗り越えて着地したプライシングという理解でいいのだろうか。もちろんプライシングの事情はそれだけではないし、特に両クラブ共に自前スタ持ちもしくは指定管理スタ持ちである事も「事情」としては大きいだろう。

こうした末に、いよいよ始まったFC東京U-23J3初参戦である。第2節はFC琉球を迎えての、初めてのホーム戦。西が丘サッカー場の公式入場者数は3,584人を記録した。

この数字を見て、さて貴方はどう思いますか?

自分は「儲けられるかもしれない」と思いました(ようやく本題です)。

 

FC東京U-23のチケットは、トップチームの年間チケット購入者であれば通常より安い¥1,500で購入することが可能だ。これでざっくり入場者数とかけ算すると¥5,376,000なので、ざっくりと500万円のチケット収入があったとしてみる(よく分からないのでサッカー少年団の招待系のお客さんは考慮しない)。さてこの500万円から、いくらお金が残るのか?ということになる。

自分が「わりと残りそうだな」と思う理由を並べてみる。

  1. 適度なスタジアムキャパ。特に西が丘であれば国立だから費用が安そう
  2. J1試合運営とのリソース融通。特にJ3ではスポボラが運営の大きな部分を担っている
  3. 入場者予測がしやすいため、過多な運営コストを事前に準備しなくていい

FC東京U-23は、J3参戦最大の懸念であったホームスタジアム手配問題を、西が丘サッカー場を中心に駒沢陸上競技場・夢の島競技場の併用という形で乗り切った。高価と思われる「味の素スタジアム」を使用しないで"済んだ"だけ大成果と言えよう。1.は言い換えれば、適した規模に対して適した器が用意できたという部分を指す。とは言えもちろん、一番の理想はガンバやセレッソなどの様に、自由が効くスタジアムを保有することがベストではある。

2.に関しては、特に琉球戦で実感した部分となる。普段は業務領域を制限されている「FC東京市民スポーツボランティア」が、J3ではチケットもぎりを務める姿が目に付いた。J1運営で活躍する「黄色いジャケット」が非常に少なく見受けられたのは、J3らしいダウンサイジングな運営の現れだろう。

規模の大小を無視すれば、FC東京というクラブが主催する興行は、J1の17試合にJ3の15試合が足され「32試合」となった。(厳密にはこれにACL+ナビスコ杯が加わる)。ほぼ倍に近い数に対して、それに当たるクラブスタッフも比例にして倍になる、わけでは当然無い。良く言えば「融通を効かせたリソース運用」、悪く言えば…まぁいくらでも言える。J1の片手間で準備されるJ3ホーム興行、その費用効率は、トップチームがJ3で戦う組織においてかかるそれとは変わってくるだろう。

3.が、個人的にかなり重要と捉えている。2016シーズンのJ3では、FC東京U-23はいわゆる「回数券」的な運用を行っていない。年間チケット保有者に対しても、特別価格設定はあれど「チケットを買ってご来場ください」というスタンス。ものぐさ怠惰な自分にとっては、わざわざ毎回チケットを買う行為はすこぶる面倒くさいので何とかならんのか…な仕組みではあるが、方や運営側にとっては動員見込みが立てやすく、それによって無駄のない運営が可能となる。これが「年間チケット保有者は入場自由」としてしまうと、前売券の販売は2,000枚だけどSOCIO9,000人の内の"何人か"が来るかもしれないから、動員は2,000人から5,000人くらいまでを念のため考慮して…と、この振れ幅が何より困る。SOICIO利便を考えたら年チケ優遇もしくは回数券系チケ販売が期待されるところだけど、ここに舵を切るのはそれなりな判断だろう。逆に得られるメリットに、ここではフォーカスしてみた。

長々と書いたが、要は「適度なサイズの器の中で、融通と限定を効かせた運営が効率よくされている気がした」ということになる。もちろん、それを実現したクラブスタッフに、何よりスポボラの方々には頭がさがるばかりだ。 今後もSOCIOとして、J3来場の際にはスポボラを助けるくらいの気持ちで来場したいところである。

 

閑話休題。その結果として、試合運営にかかった経費が果たしていくらか?

参考になりそうな資料は、2014年度J3クラブの経営情報開示資料くらいしか無かった。12チームによる3回戦制、計33試合でホーム開催は18試合。

SOCCER DBによれば、2014年のJ3において観客動員数が平均3,000人を越えたクラブAC長野パルセイロFC町田ゼルビアツエーゲン金沢SC相模原ガイナーレ鳥取の5クラブ。その5クラブの「試合関連経費」は平均2160万円。18試合で割れば、1試合あたり120万円となる。

この120万円が、ざっくり平均3,000人のサッカー興行にかかる経費とすれば。J3の5クラブがかかっている試合関連経費120万円に比べて、FC東京U-23の試合関連経費は多いのか少ないのかを定性的に妄想してみれば。そして、琉球戦のチケット収入を500万円と考えれば…

この数字を見て、さて貴方はどう思いますか?

自分は「儲けられるかもしれない」と思いました(話はたらたらともう少し続きます)。

 

話を現実に戻すと。

サッカー興行を成り立たせるために必要な支出は当然、試合関連経費だけとはいかない。2チーム運用のために選手の保有人数はより多く確保しなければいけないし、その単価はJ1基準での契約額が中心だろう。逆にクラブ運営費や管理費などは2チーム運用故に吸収できる箇所があるかもしれない。様々な増減要素を考慮しはじめると…結局は、1回の興行単位では無くて「クラブ全体」で収支を見なければ意味が無いとぶちあたる。

上記の引用Tweetは、同じくセカンドチームのJ3参戦を狙っていたサガン鳥栖が、説明会でサポーター向けに発言されたものらしい。J3クラブの平均財政規模が3億円弱なことを考えれば、運営費1.4億円はある程度妥当な目安かなと思う。

 

ホーム開幕vsFC琉球戦の観客動員数3,584人が、FC東京U-23にとってピークとなることはほぼ間違いないだろう。勝てない。つまらない。端的に下手。所詮「居るべくして居るメンバーで揃えられたチームの試合」だ。様々な要因によって今後、動員数が右肩下がりとなることは予測として当たり前だ。

それでも、SC相模原戦のアウェーに駆けつけたと言われるFC東京サポが約2,000人だったとの話を考えても、最終的には平均2,000人は越える位で着地するのでは…と見積りたくなる。そしてそれがチケット単価¥1,500で叶うのであれば、平均2,000人ホーム試合15回で、およそチケット収入が5000万円。

もちろん、運営費1億4000万円を賄おうとすると、その額ではまだまだ足りない。むしろ、チケット収入だけで賄うのは構造的に不可能だろう。本来のクラブ経営観点で考えるのであれば、チケット収入だけでなく例えば今回の琉球戦におけるアミノバイタルの様にJ3開催独自のマッチスポンサーを引っ張ってくる等の、あらゆる手段で相当の底上げが必要だろうし、それは長い期間をかけて解決すべき困難なタスクだ。J3のセカンドチーム参戦において、一番のリスクは、元々はこのコストの部分にあった。

しかしこれが当初想定していたリスクよりも、ふたを開けてみたらポジティブ寄りに着地したのでは?というのがここまでの話だ。年間でのチケット収入が5000万円、これは先ほどの2014年度J3経営情報開示と照らし合わせれば、長野パルセイロガイナーレ鳥取とほぼ同額、J3クラブ平均の倍の数字だ。そう考えれば、このチケット収入はかなり立派な数字に見えてくる。ハイリスクだと換算していたコスト部分が、想定していたよりも「がんばり様がある」かもしれないと思えてくる。

そうなると、期待されるリターンはより輝いて見えてくる。選手は育ち、J1で優勝し、賞金をゲットし、ACLでの活躍で欧州の目が注がれ…億単位で選手がバンバンと欧州クラブに売れていけば!

ホラぁFC東京U-23は儲かったと言えるじゃないですか!(これがオチ)

 

元々自分は、今回のセカンドチームJ3挑戦には全面的に賛同する立場にある。

それは、一足先にU-18年代で始めていたセカンドチーム運営を観てきたからであり、それによって得られたリターンを実感してきたからである。

強制的に代替わりが発生する特殊性がある2種リーグ戦においては、それこそチームの主軸であった武藤嘉紀太田宏介がチームから去る様な状況が毎年毎回繰り返される。その中であっても、U-18トップチームがトップチームとして強さを保つためには、よっちやコースケに代わる選手が下から常に台頭してくる様な「体制づくり」が不可欠だ。FC東京U-18が、壮絶な昇格争いを勝ち抜いた世代がごっそり抜けた後でも、翌年プレミアリーグで堂々と戦ってこれたのは伊達ではない。セカンドチームで選手が既に鍛えられ済みであったことが、年代最高峰リーグにおいても強さを保ち続けられた理由の全てだ。

野球で一流の打者になる為にはバットを振り続けるしか無いし、一流のピアノ弾きになりたいのであればピアノを引き続けるしか無い。試合で活躍する選手へと成長したいのであれば、試合に出続けるしか無い。悩み、苦しみ、負け続ける事に心の底から悔しがり、それらを覆さんと腹括って日常を生きる。その積み重ねしか無い。

彼らには試合が必要だ。だから自分は、この施策のリターンに確信を持っている。

そのためのリスクとして懸念されていたコスト問題に、こうしてポジティブな光を感じれたのだから、このビッグチャレンジもまずは良いスタートを切れたのではないか。と、相模原・西が丘に足を運んでみて感じた次第である。

 

サポの誰もが、我がクラブの選手に期待する。実際、その才能は疑いないだろう。しかしそれでも時に選手は、様々な要因に邪魔をされ、中途半端に能力燻って小さく着地してしまう場合がこれまでも多くあった。選手を育ててバンバン売れば…と先ほどはドライに書きはしたが、選手が燻り消えていく姿を見させられるのに比べたら、選手が期待通りに才能を開花し、それこそ一気に欧州移籍まで駆け上がるくらいに突き抜けてもらった方が、見ている方としてはよっぽど健康的でもある。そしてそれがFC東京という器からであれば最高だ。

そういう循環の器としてFC東京U-23はこれから徐々に経験を重ね、こうして"FC東京アカデミー"は結実していくわけである。

 

 

シリーズ「セカンドチームのJ3参戦を考える」第1回目はいかがだったでしょうか。観客動員数の、意外なほどの良結果。ガンバサポ・セレッソサポからも、J3数試合やってみてどう思ったか是非聞いてみたいところです。しかし、たった一度のホーム試合興行だけで、これだけ適当に試算して勝手言えるのは楽しいものですね。今年度分の経営情報開示が楽しみになりました。

そんな本シリーズの第2回、次回は「U-23J3参戦だなんて、他のマジメに昇格を目指している他クラブに失礼だろ論者って何なの?馬鹿なの??失礼なのはお前だろってばよ」をお送りする予定ですお楽しみに(適当)