その2からだいぶ遅くなったので、前回までのあらすじ。
セレッソ戦では12人もの人を招待することに成功した我々(殆どは友人のおかげ)。試合は負けてしまったとは言え、海外サッカー厨に「いやぁJリーグ舐めてたわ、面白かった」と言わせるくらいには、みんな満足して帰ってくれました。
しかし、それは苦労の末にようやく与えることの出来た満足でもありました(苦労の殆どは友人が背負ってくれたけど)。
では招待のお客様が、他者の苦労無く普通に味スタに来てしまっていたら、果たしてどうなるのか?
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- 来たところで、招待券引き換えテントの混雑で長時間待たされ、その間に試合開始
- ようやく入ったところで、SOCIO(年間チケット購入者)先行入場により既に席が占拠されて、座る席が無い
- 腹減ったからと飲食に並んだところで、尋常ではない行列と、謎の殺気
待ち構えるこれらの地獄から考える、現行招待制度の限界と、その先を考えるのが今回です。最終回。
- 来たところで、招待券引き換えテントの混雑で長時間待たされ、その間に試合開始
それぞれの地獄について紐解いていこうと思いますが、3番目に関しては、殺気が薄れることは今後あり得ないので早々に諦めるとして、1番目から。
キックオフ直前に様子が気になり、招待券引き換えテントの様子を見に行ってみました。すると案の定、大行列。味スタ周辺の地理に詳しい人向けに説明すれば、室内フットサル場付近に設置されたテントから、最後尾がホーム側ゴル裏付近入場口を越えて階段を降りそうな勢いでズラリと伸びていました。味スタを約1/5週、かなりの行列の最後尾には、さらに今から並ぼうとする人がゾロゾロ。
この、一番最後が恐らく注目でしょう。個人的に意識を改めたのはこの部分。1時間前には来ていたのに、捌けず入場できずであれば大問題です。実際この日がそうだったのかどうかは分からないけど、それ以上に、キックオフ直前の今その時に来る人がホント多い。
些細なきっかけで招待券を貰い「そういえば、ふと味スタ行ってみようかな」と思える人は、その時点で既に「今から行けばギリギリ間に合うかな?」なタイミングな事が多いのかもしれない。もしくは、13時に試合が始まるんだから13時までに行けばいいじゃないかと考えての到着。彼らからすれば、それが当然の発想。
であればこの、人の満ち干きも当然の成り行き。そして、その満ち干きに対応できる体制を運営側として準備するとなると、これは確かに難しい。
それ以前に、まず運営側のマンパワーが足りていない。FC東京・市民スポーツボランティア(いわゆる「スポボラ」)の中の人から事前に聞いた話によれば、そもそもセレッソ戦においては、テントに割ける人員がいなそうだと。あれこれのやり繰りができるほどの選択肢が、ハナから無かった。やれる事は元々少なかったとのことです。
あれだけの動員、4万人の味スタに、例えば青赤横丁をぶつけることが出来たら…あの日、想像に夢を膨らませた人は少なくないでしょう。けど、それは無理。招待券引換テントにすら人員が割けない中で、早い時間から青赤横丁にも人員をだなんて…同時開催なんて出来るわけがない。
もちろん、お金で解決する方法はある。アルバイトスタッフを多く呼べばいい。けど、登録制バイトという性質上、呼びさえすればちゃんと集まるものでもないし、それは持続性のある解決策ではない。
改めて感じるのが、スポボラの重要性。
これまでの2万人の味スタを支え、この日の4万人の味スタを何とか乗り切ってくれた。そして今後の4万人の味スタに向けての布石を打てるかどうかに関わる存在。スポボラの重要性は、こう考えると非常に大きい。この貴重な土台、そのサイズが、味スタの今後の動員数を左右しかねないのがよく分かる。
立ち位置、母数の増減など、恥ずかしながらこれまでちゃんとスポボラを気にすることが無かった。しかし、今後は注視していこうかと。クラブとスポボラとの、独特な関係性。与えられた裁量の変化。そして今後の在り方。
2020年には東京五輪が控えています。当然、ボランティアスタッフの重要性は言わずもがなで、本番の際のボランティアリーダー候補が数多く、リオ五輪に派遣される予定となっている模様。
東京五輪の活気と上手く合わさることで、スポーツボランティアの楽しさがもっと浸透し、全てのスポーツ文化の土台にまで広がっていければ。そしてその先頭をスポボラが走っていければ…これ以上のことはないでしょう。
けどまずは今のスポボラに感謝するところからですね。ゴミはゴミ箱に!
- ようやく入ったところで、SOCIO先行入場により既に席が占拠されて、座る席が無い
普段の2万人の味スタであろうが、もしくはこれまでの招待企画などで動員への手応えを感じつつも何故か届かなかった「3万人の味スタ」であろうが、招待客が味スタに入る頃には既に、対象の席の殆どは既に埋まっている状態。
当然でしょう。見出しの通り、その席は熟練の味スタ経験者が多くを埋めてしまっているのだから。
施策を打てばメイン以外はかなりビッチリ埋まる事は、これまでも分かっていました。3万人の味スタであれば、やろうと思えば時期を問わず確度高く実現可能だった。ではさらにその先、4万人の味スタを目指すには…毎試合、対戦相手に柿谷がいるわけではないし、リパッケージしやすい試合ばかりでもない。
そもそも4万人だろうが2万人だろうが、バクスタの着席率は既に高く、招待客に待ち構える地獄、この根本は変わらない。
セレッソ戦での施策の際は、SOCIOのグレードごとに付与される招待券の席種が変わっていました。しかし、その席種全てはバクスタ席だったと記憶しています。また、普段は着席率の低いバクスタ2階席の活用意識は、クラブサポートメンバー招待券の席種を見ても意識はあるのかなと伺えます。ただ、この日のセレッソ戦の埋まり具合では焼け石に水だった様にも思います。
それら人気の席に、既に埋まっている席に、どうぞお座り下さいご新規様と招待券を渡すのは、果たして本当に正しいのでしょうか。タダでもいいので、どうぞ来てくださいとやってきたお客様には、既に席がない。こんな失礼な話はないでしょう。
ここに、現行の招待企画の限界を感じているのです。つまり今後、既に埋まってる座席に人を呼ぼうとする現行の施策の、そのまま延長上に案を検討していっても意味が無いと考える次第です。
味スタが『今日も4万人越えたね』となるために。では必要なことは何か。
答えは単純、埋まってない席つまりメインスタンドを埋めればいい。抜本的な部分を考え直すのであれば、これまでのバクスタ重視の施策案ではなく「いかにメイン側席を上手く埋めるか」にシフトチェンジしていくべきだと思います。
- 今のメインスタンドに如何程の価値がある?
改めて考える必要があるのは「メインスタンドの価値」です。まず、今の味スタメインスタンド席にどれ程の価値があるでしょうか。
最初にこの事を考え始めたのは、2014年の年間チケット案内の時でした。その時に改めて価格メニューを見てみると、メインスタンドとバックスタンドで、こうも値段が違うのかと。そして、この値段の違いって何なの?と。
いや、違いなんて無いよね。これが結論。
結局、セレッソ戦も「速割」と称してメイン席を半額で販売して、あの様な動員に何とか引き上げた経緯がある。半額、という値段設定とその成果が、リアルな現状を表していると思います。
そのような、メインスタンド席をただ空席にしておくことに、意味があるのでしょうか。安売りしたくない気持ちは分かる。けど、その席にはそもそも、値段相応の価値が無い。であれば…
自分の意見ですがまず、新規の招待客にこそメインスタンド席を使わせればいいのではないかと考えます。初めて味スタに来るお客様に、最大限ストレスを感じさせない手段として。観戦の醍醐味を純粋に味わうために支払わなければいけない、席取りや作法など諸々の「犠牲」を、いきなり初めての人に求めすぎるのは酷ではないでしょうか。
諸々の犠牲にはもちろん「チケット代金」も含まれます。そもそも招待券制度は賛否が分かれる施策であり、その弊害も事例として集まりつつもある現状ではありますが、今回は招待券制度に賛成の立場として思考を進めるとすれば、どうせやるなら中途半端なことはせずにドカンとやるべきだろうと。
ここをケチって最安の席に招待すると、上記の地獄体験が待ち構え、せっかく味スタに来てもらっても効果は期待できない。けどメイン席の招待であれば、純粋な味スタ体験のみで勝負できる。その場でのチケット収入が…なんてケチ臭い視点よりも、それによって10人に1人でも5ゲームスチケットを買ってくれれば…そんなリターンに期待する考え方の方が健全ではないでしょうか。
新規のお客さんの「AX(味スタExperience)」を限りなく高めるために。価値も伴わない今のメインスタンド席をただ空席にしておくくらいならば、こういう使い方でメイン席を埋めていった方がいいのではないでしょうか。
※招待券制度の是非、自分もどちらがより有効なのか立場を決めかねているところはあります。タダ券否定派の意見として、先日の横浜方面の記事(前編)(後編)は大変参考になり、納得するばかりでした。今週末に判明するその成果は非常に楽しみです、良い成果が出ることを祈っています。
- メインスタンドに真の価値を
もちろん、メインスタンドに本来備わるべき「真の価値」を付けていく事も考えなければなりません。むしろここが主軸。
新しいSOCIOを呼ぶためにも、最安のホーム自由席は多少の余裕があるぐらいの方がいいだろうし、そのための一つとして古参ホーム自由席SOCIOをどんどんとメイン側に「追いやる」のは、クラブの入場料収入増加の面でも必要でしょう。でも年収なんて大して上がりゃしないし、今の席にも別に不満が無い。何より、メイン席に移動するメリットが何もない。そんな状況では、メインorバックかの天秤にかける事すらする気にならねーよ。そうです自分のことです。
座席からピッチまでの距離だって変わらないし、椅子の質が変わるわけでもない。ビールの売り子は質も低けりゃ人数も少ない、ビール買うのがバクスタより苦労する。テディ・ベアDayの抽選券が何でバクスタ席と同じ1個だけなんだよ。メイン席専用の青赤横丁とか、特別グッズの販売だとか、そういった物も何もないじゃん…並ばずに席が取れる以外の価値が無いんだよ。
メインスタンドの価値の低さをSNSでネタにした時、様々な意見と「なるほどな」という発見をいくつも頂くことが出来ました。それらが上記であり、それ以外にも、実はこれまでの文章でもいくつかネタに使わせてもらっています。
この辺のやり取りは、些細かつリアルな意見だったと思います。共通するのは、メイン席を薦める理由がない。バック席との違いが、あまりにも無さ過ぎるというのは自分レベルの周囲では「総意」です。
他所のスタジアムでのメインスタンド事例とかを調べるところまでは行かなかったですが、とりあえず上記あたりから取り組んでみるのが現実的ではないでしょうか。
もちろん、挙げた案のどれが当たって成果が出るかなんて分からないし、一つの案だけで成せる話でもない。工夫を効かせてひねり出した小さい案を、これでもかとやり続けていくしか無いし、数を打ち続けていくしか無い。
けど、続けていけば…お高い席なりの価値がいつの間にか付いてくるかもしれない。それに魅力を感じて、年間チケットをアップグレードしようとする人が出てくるかもしれないし、その空いた席を新しいお客さんが座るようになれば、その循環は理想的なものではないでしょうか。
メインとバックには明確な『格差』が無ければダメ。運営側としては、メインとバックでオペレーションがガラリと違う、それくらいでないと本来はいけないのかもしれません。
メインスタンドに、本来の価値を。
まだ2万人の味スタでしかない今からもう、取り組まなければいけない事ではないでしょうか。
●味スタが『今日も4万人越えたね』となるために
久しぶりの、4万人の味スタでした。09年11月8日の浦和戦(4万701人)以来、約4年ぶりだったそうです。
初めての4万人体験だった人も多かったのではないでしょうか。4年ぶり、そして前回の4万人越えが浦和動員のおかげでもあった事を鑑みても、今回の成果の大きさが伺えます。
方や、4万人の弊害もいくつも出ました。運営側の問題点も多く出ただろうし、試合終了後の混雑も凄まじいもので、2万人の味スタに住んでいる人からすれば迷惑ばかりな日だった。何より、観客が多く入ると、FC東京はほぼ必ず、がっかりな試合をしやがる。
それでも、個人的にはやはり「きょうも2万だったね」ではなく「きょうは4万越えたね」となりたいし、「きょうは4万越えたね」ではなく「きょうも4万越えたね」となりたい。
確かに、招待券バラマキによる劇薬的な成果だったかもしれない。けど、これで得られた事は決して少なくなかった。今回露呈した様々な問題を、逆を言えば解決してしまえば4万人の味スタになるわけだから。4万人の運営にクラブが慣れていないのであれば、毎回4万人集めてクラブが慣れてくれればいいし、4万人集まったら勝てないのであれば、勝つのが普通になるくらいに何度も4万人の試合を作ればいい。
何より、4万人の味スタという「非日常」に自身が興奮した。これだけの人が一点に向かって喜怒哀楽をリミッター無く発露し、その集合体が味スタ特有の閉鎖的構造の中でうねる様に、魅了されてしまった!
そしてピッチ上で闘う選手たちがこの4万人と『会話』出来るようになれば、この力がピッチ上に落とされれば、俺の東京はより強くなる。俺のJリーグはよりエキサイティングになる!
味スタを満員に。ぼんやりしていたこの目標が、セレッソ戦のおかげで、少しリアルな輪郭がついたのではないでしょうか。
今回、12人という人数を賄うためには我々の招待券4枚だけでは当然足りず、SNS等で招待券譲渡を募ったところ、おかげさまで多くの方が名乗り上げてくださり、何とかお譲りいただくことができました。
こうして招待券をかき集めて、というやり方に賛否はあろうかと思いますが、個人的にも今回の件をもって見えた部分もかなりあったので、備忘録としてレポートをここに残してみました。
今回の書き殴りによって、少しでもの罪滅ぼしと、今後味スタを本気で満員にするための何かアイデアの種が生まれることを願い、Permalinkを『ご意見箱』に投函しこの項を締めます。
長々と、ありがとうございました。また、チケット確保のためにご協力いただきました全ての方、意見を色々投げてくれたあんな人こんな人も、ありがとうございました。
味スタを満員に!