課題も、収穫も、勝ち点3も、もち豚も レビュー -新潟戦

しかし、今年は「速報性」を重視したいとか言ってたのにこの体たらく。もうちょい、何とかしないとなぁ。そんな新潟戦。いやーいろんなものが詰まりすぎってくらいな試合だった。こんな試合内容だと感情的にアホに書き殴りたい衝動に駆られるけど、そこは少し抑えて。
前半いきなりの3得点は唖然の一言。遠目ながら、美しくボールが動いた一点目。梶山から石川への完璧なグラウンダーパスをダイレクトで中央に返した石川のアイデアで勝負アリ。けど見返してみるとその後のエメルソンのトラップ→シュートの一連の冷静ぶりもこれまたスゴかった。その直後に二点目。ショートコーナーのリターンを受けた石川がそのまま強烈なシュート。ポジションの甘さもあったGK北野がこぼした球を詰めたのはカボレ。「そこにいた」嗅覚はさすがの一言。立て続けの3点目は今ちゃんの大手柄。北野とDF永田との間に生まれたエアポケットを突く一撃。試合の流れを、スタジアムを絶望に落とし込むには完璧な3点目にアウェー側スタンドは狂喜乱舞。「東京ブギウギ」「東京なめんなよ」とお祭り騒ぎ。そしてオレはケータイを無くす(笑)
いきなりの3-0という展開で、助けられたのが吉本。「思い切り」よくチャレンジしていく姿勢がこの試合では求められたが、まずそもそものチャレンジ機会が少ない展開になった。一週間で(しかも悪夢のTMを経てだったのに)どう変わったのか、中盤からかかる寄せが強烈になり、ボールに対して多人数でガツンと取る守備が多く見られた。その密集を抜けられたらもちろん数的不利+セットの崩れた形での逆襲となるわけだが、そこでやっと2CBの出番に。空中戦には吉本ががむしゃらに前を奪い、背後への追いかけっこは茂庭が盤石の体制でセーフティにボール奪取。適度な守備機会で確実に相手を力強く跳ね返す姿はなかなかの頼もしさだっただろう。
ケータイも見つかり(しかし機構がどことなく鈍くなる。替えてばっかりなのに・・・)安堵のHTを経て、一転しての後半。さすがにこのままでは終われない新潟がやっと目を覚ました。加えて東京のスタミナが厳しくなり、緩いチェックに終わる場面が増えてきたことでDFラインが晒される機会が増えてくる。中央の跳ね返しは効きつつも、そのこぼれ球を受けそれをサイドから展開されることが増えていき、徐々に東京陣内を侵食されていく。新潟の1点目は長友を絶妙のファーストタッチで抜き去り左足ズドン、2点目はラインの崩れた徳永の裏を矢野がフィジカルでぶち抜き怒濤の連続得点。現状の東京の守備の穴が見事に表に出た場面と言っていいだろう。
石川が監督のそばに寄って指示をしっかり受け取りながら、念入りにポジション修正は繰り返された。後半になってからは石川は右サイドに寄る場面が増え、恐らくチーム内貢献度がまだまだ低いカボレのことを踏まえてエメルソンを前に推しだし4-4-2の様な形をメインに据えたと思われる。しかしその機能以前のスタミナ切れが既に起きていた。前目の位置でボールを持てる機会が増えた新潟に対して東京はそれを挟み込めずに受ける向きに全員が揃い始める。苦しい展開。
そこを乗り切れたのには3つの要素があったかと。まずひとつは「交代施策」。「浅利→川口→赤嶺」という交代策は、これで結果失敗しててもしょうがないと言える、現状の東京ではこれしか無いという策だっただろう。現に中継を見返すと頻繁に浅利がジェスチャー付きで指示を繰り返す様も見られ、その効果はピッチ上で大きかったと思われる。ふたつ目が「吉本の高さ」攻勢に出て来た新潟は、もはや揺るぎないチームの中心となった矢野を目がけた、高さを狙ったプレーが増えてきたが、それをまずしっかり吉本が跳ね返すもしくは自由にさせないほどのハードチャージを思い切りよく続けてくれた。その後多くのセカンドを拾われ、ピンチが続くのは変わりない場面も多かったが、まずは吉本がしっかり競ってくれたことは大きかった。最後が「つなぐ意識」。個人的な印象になるが、単純にハッキリとしたクリアを選択する場面は前半の方が多かった様に思える。苦しい展開になった後半で必死にボールを奪った後にでも、ボランチにまずショートパスを預けて自分の形を作ろうとする場面が、後半を見返すと思ったより多かったことに気付く。赤嶺が入った終盤にはただプレーを切るだけでなく赤嶺に競らせてフィフティーを保つクリアも多かった。ここの意識はまさにオフから取り組み続けてきた成果であり、現地では分かりづらかったが見返してみるとハッキリ分かる部分であった。
前半と後半のギャップは見た目にも明らかだが、梶山・羽生が試合中に足をつる場面があった様に、このスタイルが特に中盤にかかる負担が絶大であることが示された格好。そんな試合を観れて、まずは「説得力あるスタミナ切れ」が観られた事は個人的には満足。「お前そのプレーでヒィヒィ言ってるんじゃねぇよ!」って、歴代いろんなチームにぶつけてきた文句を言わなくて済む幸せは今後もある程度保証される期待は持てた。その上で今後。MAXまで使い切った体力を今度はいかにして「90分モード」にしていくかが問われていきそう。城福監督自身が「速攻から遅攻するなどの試合巧者のようにやっていかなければならない。」とコメントする様に、MAXの運動量の配分、それによって試合の流れを上手くコントロールしていくことが「moving football」がこなれていく過程で必要になってくる。
こなれていく上で必要なのは「無駄を無くす」こと。「ムダ走り」に代表される様にもちろん必要なムダもあるが、ここで言うムダとは「判断ミスを減らしていく」ということ。守備に回った時に問われる判断、これは運動量を消費して実行に移されるが、そこで例えば「チェックにもならない寄せ」というのはムダになる。そこの判断を怠慢にしたことで直後に結局大きな代償を払わされる、といったムダな判断を減らし、相手攻撃フェイズをいかに効率よく食い止めるか。もしくは単純にパス回しがもっとこなれてきて、自分たちの時間を作れることになればそれは相手に余計なことをさせなくて済むことになる。そういった「必要なムダを作り、不必要な無駄を無くす」という城福監督の理想の一端が今後どんどん洗練されていけば、運動量のMAX値を増やさなくても90分モードに対応していけることになるだろう。
とにかく、相性の悪い新潟というアウェーの地で、その可能性と課題がハッキリあぶり出された上で「勝ち点3」という結果を手に出来たのは、今の東京には限りない収穫だっただろう。今の東京に欲しい多くのものを手にして、大満足の遠征だった。