止まった時計の針を「MOVING」するのは・・・ プレビュー -新潟戦

先週の札幌戦を観た鹿島サポの友人は、その試合で活躍した(らしい)伊野波選手を観てこう評した。「運動量といい、どんどん追い越していく感覚といい、今までの鹿島のCBには無い新しいイメージの選手」。しかしそれに対して自分は伊野波選手なんてあまり興味が湧かなかったから「ふーん」と空返事をしてしまったわけだけど、ただその後はっと思い、直ちにこう返し直した。「ウチはむしろ鹿島のイメージなCBが欲しいんだけどね」。
ジャーンが退団しての07年、FC東京に足りなかったもの・困ったもの・欲しかったタイプの選手は、ザックリと言えば「鹿島系CB」だっただろう。バチバチに相手に当たり、陸戦、空中戦共にパワーを発揮してくれるような。そんなどっしりとした「鹿島系CB」を。そういう意味で、自分は佐原に対する期待が結構高かった。荒くても、カード大好きでも、それでも昨年まで続いた反省とその教訓を思えば佐原を頼る場面は必ず訪れるはずだから。それだけに佐原が肉離れで戦線離脱したと聞いた時には結構の不安に駆られた。夢の島でブルーノを観た時の評価とも合わさって。
日曜日の夢の島ではブルーノ・吉本でCBを組んでいたが、その時に感じたブルーノ評は「腰が高いなぁ」。概念的なものの言い方になるけど感覚としては、ポジションは違うけど稲本や今野がボールを奪取する時に感じるような、どっしりとした「腰の低さ」の反対。CBとしてあの腰の高い感覚が軽さに繋がらないと良いけど、という懸念が夢の島でちょっと芽生えていた。って、こんな話も(そして神戸戦のレビューもだけど)国士舘大との惨敗TMの後に言ってもただの「後出しジャンケン」な訳だけど。
(ブルーノについてフォローをしておくと、懸念として述べたその「腰の高さ」は裏を返せばボールを持った時の「懐の深さ」に繋がると思っている。例えばあの梶山の様に。故にボランチ起用が最適、使えばなかなか頼れるものが完成するのではと期待しているが。また、佐原のようなタイプとのコンビならばCBだってまだまだ面白いとも)
ただ、この不安がチャンスとなる選手がいるわけだ。吉本一謙。ゆえに意外なこのタイミングで出番が廻ってきそうな訳だから。
吉本に足元はない。多色ビブスでのボール回しでは毎回苦労していた。しかし回数を重ねて観てみると、不器用ながら奪ったボールをダイレクトに前線に出そうをしたり、技術以外の面でハッとする場面も徐々に観ることが増えてきた。視野と思考で必死にカバーしようとする努力の跡は確実に見られた。その頑張りを観ていた身としては、意外でありながらも、しかし来るべくして来たタイミングでもあるのかな、とも。
吉本が対する矢野は、代表での高さ一辺倒という使われ方よりかはむしろ「高さ+速さ+ボディバランスの高次元さ」が売り。そういう意味では「圧倒的な高さ」を売りにしたい吉本としてはまともにぶつかれば分が悪い場面が出てくる可能性も。なので吉本としてはその高次元さで勝負される前に高さとパワーで勝負を終わらせておきたいところ。新潟がまともにスカウティングしてきて、狙いを試合に還元しようとするならばまずはSBの脇を狙うはず。特に土曜日に不安だった長友の脇。知らない選手だけどなかなかの評判そうなダヴィの左足から対角線に、流れる矢野がここを狙うパターンは考えられる。そこを思い切りよく吉本が当たっていけるか。そのキーは去年の開幕戦でポッキリ折られた「思い切り」。思い切りの良さで先手を奪う。速めにパワーで潰す。そしてそれを支える周囲の「カバー」。その吉本の空いた位置を、こぼれたボールを、徹底的にウチが「カバー」出来るか。そしてサポーターの声援でその両方を後押ししてやれるか。

FC東京の念願だった「鹿島系CB」は佐原に頼りたいところだったが、偶然か必然かそのチャンスは吉本に巡ってきた。その巡り合わせを周りの選手もサポーターも、必死でカバーしてあげたいところだ。止まった針を動かせるのは、吉本だけではない。全員で、止まった針を動かしに、いざビックスワンへ。
さて、5時間後にはもう出発だが。途中、暴論に走りすぎてしまって全部消したらこんな時間に。こんな事しててオレはまともにいけるのかねぇ?っていけなきゃ困るわ!
オレも針を動かすんだ。