まず確認すべき事はフクアリのピッチコンディションだろう。見た目にも芝は非常に剥げていた。踏み込んだ軸足が持ってかれる場面もいくつかあった。しかし、そこまで影響があるほどとは思えなかった。芝は剥げてたが、凸凹だったかと言えば前回の江戸川ほどではないし、根っこが緩いかと言えば味スタの方が断然緩い代物。岩淵も「あまり気にならなかった」とコメントしたが、いわゆる「繋げられる地面」ではあったと思うし、事実、第一試合では柏-東京Vの素晴らしいパスサッカーの攻防が行われたばかりだった。
実際、立ち上がり猛攻を仕掛けた大分は自らのスタイルであろう、柏U-18の様なパスを繋ぐサッカーで東京ゴールを脅かした。両サイドから非常に深く、そして中央に向けてえぐられる場面が何度と訪れ、東京にとって苦しい時間帯は早々に訪れた。東京は椋原を中心としたDF陣で何とか跳ね返すが、2ndもことごとく拾われ、完全に大分が立ち上がりの流れを掴む。
為す術無い立ち上がりを、しかし東京としては何とか無失点で堪えた。ここからやっと、東京がこの試合で狙うスタイルが段々と披露され始める。局面では前回は多用されなかったダイレクトのショートパスを狙うが、その局面に辿り着くまでのボール運びは、ボール奪取直後切り替えの速さからのシンプルな前線へのフィードによるもの。9番岡田と22番岩淵の巧みなフィジカルコンタクトでボールを収め、きっかけとしての役割を遂行した。そこからあまり手数を掛けずにゴールを目指したのが前回の千葉SC戦だったが、今日はそこから少しアジャストした形。しかし、むしろこちらが本来の東京U-18のスタイルな予感も、プレーからは漂う。
先制点は36分。左浅い位置からFK。キッカー大竹のボールは一番ファーに突っ込む2番田中へ。千葉SC戦でも惜しい場面を生んだパターンであり、チームの狙いが実ったゴールだった。1−0。
引き続きロングボールを東京2トップが追いつめる展開が続く。東京ペースのまま44分には右サイドを起点とし、連続してグラウンダーのパスで相手をサイドに流れさせるパスが続き、最後は岩淵がPA内で倒されてPKゲット。大竹が落ち着いて決めて2−0に。とはいえ、これは東京サポ側から見ても「違うんじゃ・・」と思わせるジャッジ。
とにかくこの日は審判が不安定だった。どうでも良い場面だったらまだ良いが、PA内の最終局面ジャッジが特に不安定なのが尚更タチが悪い。PKの場面よりもその一つ前のプレーと、後半開始直後めの方がどうなの・・・と思わせる怪しさぶり。
57分のゴールも、中央でこねた大竹が、ゴールに近い(そして選択肢としては難しい方だった)岡田に向けたタッチパスを、岡田は前にトラップしてゴールに流し込んだのだが、正直トラップの場面でハンドを獲られても・・・といったプレーではあった。ただ、これは大竹と岡田の良さ、共に生活し続けてきた成果で、素晴らしい一連のプレーでもあったことは付け加えておく。
しかしこれで納得いかないのが大分。PKの場面と不可解ジャッジ合わせ技一本で、この3点目で完全に集中の意図が途切れた。明らかに出足と、東京のプレスを察知するアンテナが個々で働かなくなり、逆に出足が良くなった東京にスパスパとカットされる場面のみが目立ち始める。
こうなると東京の、いや岩淵の独壇場。競って良し、起点良し、抜いて良し、シュート良しと怒濤の10分ハットトリック。許容もなく、慈悲もなく。いや恐ろしい。
しかし、このハットトリックが無くても、この日の岩淵は別次元だった。梶山、大竹とはまた違う空間を持った感じ。抜群のボディバランスでボールを受けてからは、ボールの置く位置の良さと相手の意識の逆を突く形で、難なく前を向けてしまうし入れ替われてしまう。綺麗なミートを見てもテクニックがあるのは伺えるし、心憎いプレーで東京を動かしていく。
この感じ誰かに似てるな・・・と思ったら福西だった。岩淵のプレーは福西を見てスゲェなって思うのに近いプレーだったと思う。個人的には岩淵を「福西の後継者」と認識しました。トップに上がって、37番着てくれ。惚れました。
結果としては6−0という大差だったし、自分としてもスコア通りの実力差はあるとは思えない。ただ、例えば立ち上がりの危険な時間帯では、倉又監督がピッチ近くで「カバー!カバー!!」と大声で指示する場面が多く観られた。試合後の監督・選手のコメントを見るとある程度、対大分のスカウティングも対策も準備が出来ていた様に伺える。となると、危険ではあったが「予測していた危険」だったのかも知れない。対する大分はスコア差の動揺と共に、選手交代でいじるごとにチームの混乱に拍車を掛けた部分もあった訳で、そこを見ても、審判が勝負のアヤに関与してしまったとは言えども、狙いを実らせた東京の勝利はふさわしいものであったと言える。
東京は、この日の3チームに比べれば、局面では同じく技巧を発揮できても、自陣深く最初から最後まで細かく繋いで華麗に攻める、というチームではないかもしれない。しかし、ボールを奪った直後の切り替えの速さで、フィジカルと走力に優れた2トップを縦パス一本で走らせるプレーは、他のどのチームのプレーよりも、あまりにもゴールに直結してしまうプレーで、相手としては恐怖の度合いは非常に高かったのではないかと思う。これは他のチームとは違うけど、東京が手にしている強力な武器だ。
この頼れる武器を引っさげて、次回は神戸ユニバーで大宮ユースと対戦。柏-G大阪側のトーナメントの山の過酷さを考えたら、東京は此処で負けているわけにはいかない。良さを発揮し切って、去年の同じ日同じ場所での無念を晴らして欲しい。
あー、見に行きたいけどいけないだろうなぁ。行きたい行きたい行きたい・・・