エヴァじゃないよ、ヱヴァだよ

国立競技場でFC東京が勝ってくれたから、その勢いでヱヴァ見てきました。完全にエヴァ世代な自分ですが、この日友人が誘ってくれなかったら、そしてFC東京が勝たなければ見に行く事はなかったですから。ありがたい運命ですね。
新宿ミラノ座初日21時台の回。1000円で見れました。入りはほぼ満席。思ったよりも「オタク」って感じの人が多くに並び、それを眺める冷やかしの構図が劇場前には。尋常じゃないグッズ売り場の行列をよそに座席へ。そして本当に数年ぶりの映画鑑賞。
とりあえず意外や意外、宇多田が非常に良かった!元々宇多田そんなに嫌いじゃないし、宇多田の面を見ないで曲を聴く分には問題ないよ(その日のCDTVで見た顔面周辺の劣化ぶりを思えば)。
ってことで以下ネタバレ。ネタバレて(笑)
とは笑ったものの、これはネタバレが存在してしまうくらいにただの焼き増しじゃあなかったっていうのが正解です。正直驚いた。
まず目につくのがやはり作画のクオリティ。色が自由に使える恩恵をフルに活用したこの画面は素晴らしいクオリティ。メカニカルな細かい部分のこだわりが凄まじく、昔はオタク批評かましたテメェが一番オタクやんけ!的な部分を実証してしまうほどの凄まじさ。今でもクオリティを感じるアニメは(大して詳しくないけど)ある中で、やはりヱヴァは断トツと言っていいのでしょう。何というか、センスです。
しかし、ストーリーの編集は正直上手くいってない。見せるべき場面、セリフを使って間が欲しい場面が短縮され、まるで倍速で振り返っているかの様な忙しさ。それでいてムダとも思われるセリフが追加されてたり、細かい設定ディテールが変更されているのもあからさまで耳につく(NERVのロゴ変更だとかセリフのいじり方だとか、ペンペンのくだりとか)。この時思ったのは、エヴァという作品を作っていく内にどんどん後付けされた設定を踏まえて作品を作り直すために、これだけ説明口調が鼻につくのかなと。だからこんなにシンジが喋るのか、まじシンジ喋りすぎだろこんなのシンジじゃねぇよ!と。そしてそれをするならあまりにもスクラップ・ビルドが甘いと。知ってる人じゃなければついていけない代物にしかなってないと。
あれ?と思ったのは綾波の説明をする時の「一番目の適格者」と言うセリフの時。ここで「なんでチルドレンって単語を避けてるのか?まさかニュータイプなトミ(略」に気付き、今までチルドレンって単語使ってないよな、じゃあこれからも使わないのか?何かが違うという疑念を抱きながら見続ける。
ヤシマ作戦ラミエルのあまりにもぶりに「え!」と思わず声を出してしまってすいません、周りの皆さん。このヤシマ作戦、あとから確認したらここを大きく変えるというのがこの映画のウリだったらしく、その通りだったと思います。ただ、自分には作画は大満足なものの、ストーリーは大きく不満でした。そもそもここまでで既にシンジが喋りすぎでイライラしていて、それを修正するミサトって構図があまりにも熱血というかスポ根的というかで。信じる信じないだとか、ここで応援メッセージを紹介しますだとか、しかもセントラルドグマ連れてっちゃうしさ。シンジとミサトのキャラ変更が酷すぎやしないかい?こんなのエヴァじゃないやい、とか思ってました。
そして、全て観終わってみて気付いたのです。『これ本当にエヴァじゃなかったわ』と。
ラストのカヲル君登場(ここで二度目の「え〜!」)と次回予告(月より飛来する〜で3度目の「え〜!」しかしこれは他のお客さんもハッキリ言ってた)を観て確信に変わるのです、これはエヴァではない、ヱヴァなんだと。
節々で気になっていた、ただ焼き増すだけなら全く意味のないディテール変更、特に明らかに変わっていたシンジのキャラ設定、世界観の変更(日本の形すら違ったと思う。しかも中央線て)をわざわざ行った理由、それが最後のカヲル君と次回予告を観る事で明らかになるのです。
あぁこれは新しいヱヴァを作るんだな、と。
今回の作品は「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」であり、「新世紀エヴァンゲリオン」ではない。ならば『新世紀』という言葉が抜かれた事をどう見るか?
と、様々な妄想が働きまくった帰りの電車がとにかく楽しかったです。その妄想の全てを友人と話しながら。個人的には最近のジョジョの様な「パラレルワールド」の可能性は非常に高いと結論付けたけど、家に帰ってパソコン立ち上げたら驚きの感想は多くで見られたし、2ちゃんねるでは早速謎・伏線について活発な議論がなされていた。結構自分が思っていたパラレルワールド説が多くの人もしっかり感じ取っていたみたいで(庵野総監督の言葉を借りて、ループ説としている)そこに参加してあれやこれやと言い合うのがスゴイ楽しかった。(変更点・伏線らしき事柄が全部書き出されてるんで気になった人はエヴァ板へ。)
思えば、エヴァがあったあの頃は2ちゃんねるが無かった。謎と解釈を持ち合わせても自由に吐き出せる場所が狭かった。それを大いに吐き出し、あれやこれやと妄想を働かせるのがこの映画の楽しみ方でしょう。そして確認したところその議論も既に一周したみたいで。初日に映画を見て、その議論の一週目に参加できた事がスゲー楽しかった。勝ち組の一人だったと思いますよ自分は。
そしてあれやこれやを楽しんで、4作目でガッカリするところまでが『ヱヴァを楽しむ』というくだりです。しかし言い返せば3作目までは確実に面白いかもねっていう超ポジティブ思考すらしてますよ自分は(笑)まぁ何だかんだ言ってもエヴァ世代でありエヴァにどっぷり浸かった思春期だった自分なんで、これだけの評価というかワクワクをしちゃったんだろうけどね。
悔しいけどさ。