- 作者: 岩明均
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/07/23
- メディア: コミック
- 購入: 10人 クリック: 67回
- この商品を含むブログ (201件) を見る
岩明均の凄さというか、何故こんなに面白いかというのを説明するのは非常に難しい。何だか個人的に核心をつけれるイメージが湧かないんだけど、ただ、間違いなくこの人は天才です。
例えば、基本線は細いし背景も全てに書き込むっていうタイプの人ではないから、ぱっと見は空白が多くてあまり目立つ原稿ではない。けどだからこそ、たまに線が重なる時、つまり岩明均お得意の残虐シーンだとか人物の感情を表す時の人物の目だとかを見せられた時に、圧倒的に映える。説得力というか、説明に際して非常にインパクトになる。そのインパクトの見せ方、つまりは人物の感情だとかの強弱の見せ方が上手いのだと思う。大ゴマの見せ方についても同種の上手さがあるでしょう。
例えとして個人的に思いついたのは2パターン。一つはストレートの最高速は遅いけど、スローカーブなどの遅いボールが抜群に上手く、緩急で打ち取る投手。元オリックス・阪神の星野投手とか。もう一つは、持ち技自体は少ないが、試合の組み立て方と技の説得力の積み重ねでプロレスリング・マスターとまで呼ばれるようになった武藤敬司。どちらも
自分のマンガの面白さの基準として考えている「才能の見せ方が上手いか」という部分で言えば、4巻73ページの『何やってるほら…もう1つ訊く事があるだろう』って言う、エウメネスの賢さを示すにはあまりにもさりげないセリフなどでも感じるのですが、ただこの場面でもそうですがこの人の作品に関して言えば、作者自身の才能に唸る事の方が多いかもしれない。構成だとか、セリフに込める感情だとかに。
魅力的だが作者が手を入れるだけの空白も多い人物を主人公に据える歴史物、という面では『センゴク』の面白さに近いです。「信長公記」や「王宮日誌エウメネス私書録」からの引用、という形で説得力を高めるという手法まで(しかしエウメネス私書録なんて本当にあるのか?笑)。けど岩明均はさすがと思える老練さが味わえるというか、いや宮下英樹の勢いづくアツい筆も好きだし、まぁ何が言いたいかというと刊行ペースの遅いヒストリエを待っているあいだにセンゴクもいかがですか?っていう宣伝ですよ。自分、関係者じゃないんですけど。