2017ユース応援企画御礼と、FC東京U-18であり続けてくれた感謝と

哲学において有名なパラドックスとして「テセウスの船」というものがある事を最近知った。例えばギリシャ神話においてはこういったエピソードがあるらしい。

テセウスアテネの若者と共に(クレタ島から)帰還した船には30本の櫂があり、アテネの人々はこれをファレロンのデメトリウスの時代にも保存していた。このため、朽ちた木材は徐々に新たな木材に置き換えられていき、論理的な問題から哲学者らにとって恰好の議論の的となった。すなわち、ある者はその船はもはや同じものとは言えないとし、別の者はまだ同じものだと主張したのである。

 

このエピソードを引用したプルタルコスは、全部の部品が置き換えられたとき、その船が同じものと言えるのかという疑問を投げかけている。また、ここから派生する問題として、置き換えられた古い部品を集めて何とか別の船を組み立てた場合、どちらがテセウスの船なのかという疑問が生じる…

と、ここまでWikipediaからのコピペではあるが、なるほど確かに面白い思考実験だろう。

そして、サッカーファンがこういうエピソードに触れると、恐らくこんな事を考え始めてしまうはずだ。「私があの時に愛したクラブチームは、今もなお同じチームであると言えるのであろうか」と。


歴代最高の成績を収めた昨シーズンの体制そのままに、今シーズンを迎えることが出来ないのが育成年代の常である。多くのカップを掲げた達成感と、最終戦で目標が潰えた悔しさとを背負った高3生は卒業し、方や沢山の夢を抱えて高1生が新たに加入。こうして毎年ざっくりと、1/3 の選手の入れ替わりをU-18は繰り返す。

もちろんそれは、チームとして決して小さくない変化である。しかしだからと言って、昨シーズンの成績と比較してしまう周囲の目から、逃れられる訳ではない。ましてや2冠という偉業ともなれば尚更だ。その比較により生まれる期待、もしくは受け止めざるを得ない重責とは、所詮外野の人間からは計り知れないものがあっただろう。

それ故に、日本クラブユース選手権連覇を達成した事は非常に価値が大きい。昨年以上に難しいことを今年は達成したのだと、全ての選手スタッフたちは胸を張っていい。


ただその道のりは、改めて振り返ると苦しいものだった。

高円宮杯プレミアリーグEASTが開幕するより4週間も早くに、3月上旬には一足先にJ3リーグが開幕。昨年に比べてOAの起用を減らしていく大方針が加えられるも、開幕時には既に多くの怪我人が発生していたU-23は、人数不足を補うために早速U-18から8名の選手を加えて挑む事になった。

遅れて開幕したプレミアEASTでは、そんなU-23で既に数試合の経験を積んできた選手たちがズラリとスタメンに並ぶ。パッと見は豪華に見える布陣ながら、結果はATの失点で清水ユース相手にショッキングな敗戦。その後のU-18は勝ち点3の獲得が続いたものの、その内容はハッキリと芳しくなかった。当時は「今年のチームは大丈夫なのか?」と心配する声の方が多かったくらいだろう。

この時期には、欠けた 1/3 の偉大さを感じる場面も多かった。進級によってT1、プレミア、J3と戦うDiv.をそれぞれ上げた選手たちは、スピードやフィジカルのレベルだけでなく、試合自体が持つ意味も一気に大きくなる状況において、思った様なプレーが出来ずに苦しんだ。またチーム造りに重要な春休みシーズンに、U-23とU-18とでスケジュールが分かれてしまった事も大きかっただろう。

単純な実力不足だけでなく、多忙なスケジュールという要因も重なり、苦しみ続けたU-18。その苦しさは、クラ選が始まった7月下旬にもまだ続いていた様に伺える。


そんな欠けた1/3が埋まってきたと感じたのが、クラ選R16セレッソ大阪U-18戦。

競技場としての水捌け設備が施されていない、まるで田んぼのような会場に、前日に降った局地的大雨。水たまりの域を越え、転がったボールがすぐ止まる劣悪ピッチ。加えて相手は、同じくU-23で貴重な経験を積んでいる強豪セレッソ。そのようなシチュエーションに対し、若き青赤戦士たちは、技術で気迫で走りで、泥まみれになりながらその環境をねじ伏せた。2-1での勝利。タフに戦ってみせた選手たちの姿は、シーズン当初にそれぞれのDiv.でペシャンコに潰されてきた苦しさを乗り越えて、掴んだ逞しさそのものだった。

だからこそ達成できた連覇…だったのかと言えば、それだけではない。クラ選決勝、浦和ユースを相手に披露されたのは、むしろチームとして元々目指してきた「ひたむきさ」や「一体感」、「球際」に「ハードワーク」。昨年から続く、変わらないU-18の強みの方だった。

それは言わば、欠けた 1/3 ではなく、残された 2/3 の方。たとえ毎年 1/3 が代わり続けようとも、3年経てばすべての選手が入れ替わろうとも、これまで10数年とFC東京U-18として変わらずに積み重ねてきた「2/3」の歴史の価値だ。

元々、この日出場した多くの選手たちは、昨年のクラ選決勝ではスタンドでピッチ上の仲間を見守る側だった。カップを掲げる仲間たちの晴れやかな姿を、共に喜び、もしくは貢献できなかった悔しさを西が丘で噛み締めた、言わば 2/3 の「受け手」側だった。

そんな彼らが、今度は自ら西が丘のピッチに立ち、欠けた 1/3 を埋めてみせた成長だけでなく、2/3 の受け手として譲り受けた歴史をもピッチ上で表現し、掴んだ連覇。

そういう意味では、2017年クラブユース選手権優勝というのは、今年のチームが手にしたタイトルなのには間違いないが、これまでの全ての世代において関わってきた全ての人による、あくまでFC東京U-18という船が辿り着いた偉業だったのかもしれない。

歴史の積み重ね。思想や精神の継承。

ここに、FC東京U-18における「テセウスの船」というパラドックスの、ひとつの解がある様に思えてならない。


これからは受け手の戦いが始まる。今年の西が丘で何を受け取り、そしてそれをどう表現できるか。勝手に空いた席にただ座ったことに価値など無い事を、周囲はみんな分かっている。堂々と、その席が自分の席だと言える様に。そして歴史の体現者となれる様に。

方や「出し手」となった選手たちにとっても、自らの成長だけでなく、FC東京U-18という船に何を残していけるか?が問われてくるだろう。もちろんそれはピッチ上にいなければ出来ないもの、だけではない。それを選手は、トップチームの「18」から既に学んでいるはずだ。

こうして一歩ずつ一歩ずつ、出し手と受け手とでパスを繋ぎ、繰り返す。2/3 の積み重ねからでしか、強いチーム、強くあり続ける船は造れない。

これからもずっと、FC東京U-18という船が、FC東京U-18であり続けることを願って。船の航路はキミたちにかかっている。

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FC東京アカデミーを勝手に応援する企画に、寄稿した原稿を今年も例によって公開いたします。企画にご賛同頂いたみなさま、本当にありがとうございました!

とは言え9月にお渡しして、今はもう12月。気を抜いてたら、いつの間にかこの時期に。高円宮杯プレミアリーグEASTも最終節を残すのみとなってしまいました。


今回も例年同様、夏のクラ選を見届けてから書き始めました。2017年を戦うU-18の立ち上げ以降を見てきて、チームの夏の結果を受けて。9月のお渡しまでに何とかせねば…と悩んでいた時期は、奇しくもトップチームでも激動を迎えていた時期でした。

8月末にはルヴァン杯川崎Fにボコボコにされ。9月アタマにはセレッソにボコボコにされ。そして9/10には篠田監督が解任され。

トップチームとU-18はあくまで別物なので、比較したり感情を引きずったりはしないようにと、自身心がけて観戦してはいますが…正直なところ今回の原稿について、それぞれの感情を遮断して書けているか?と言えばそれは否です。やっぱり無理でした。その結果が上のものです。今改めて読んでみてどうですか?悪くねぇんじゃないっすかね?(いつものように自画自賛


今年ほど「積み重ね」の大切さを実感した年はありません。クラ選連覇を達成した西が丘で真っ先に浮かんだのは、これまでFC東京アカデミーで戦ってくれた選手たちへの感謝でした。

ある人は昇格が叶い、ある人は他クラブで高校で大学でサッカーを続け、またある人は選手としての第一線からは卒業し。

多くのOBたちが、西が丘に集まって、もしくはSNS等で気にしてくれて。そしてみんなが今のU-18を応援してくれて。そんな彼ら越しに、クラ選連覇を祝う事が出来たのが本当に嬉しかった。

思い起こすのはあの時の、例え結果が出ようが出まいが、外的要因が邪魔をしようとも、自らをモチベートし、その場その時を懸命に頑張ってくれた歴代の青赤戦士たちの姿。FC東京にとっての「当たり前」な光景。

その積み重ねがあって、迎えた今なんだなと。説得力を伴って感じる次第です。おかげで、今もなおFC東京U-18という船は、FC東京U-18という船であり続けている。これまで歴代戦ってきてくれた全ての選手・スタッフで掴んだ連覇だったと、改めて言いたいです。

もちろんその感謝は当然、いま懸命にその船を守り、次に繋げてくれようとしている現役選手たちに・チームスタッフの皆さんに向けても然りです。それを改めて、最後にチームに直接伝えに、最終節の小平に向かおうと思っています。

 

高円宮杯プレミアリーグEAST、2017年度の最終節を整理します。

◯プレミアEAST順位表 

 

◯最終節試合情報

 第18節 2017年12月10日 13:00 KickOff

 

FC東京U-18 優勝条件

  • FC東京U-18自力優勝は無し。逆転のためには、まず東京の勝利はマスト
  • その上で、清水ユースが引き分け以下の結果の場合のみ

そもそも我々は今年、首位である清水ユースに1分1敗と一度も勝てませんでした。もっと言えば最終節の対戦相手である青森山田とは、今年含めて3年間一度も勝ったことがありません。

FC東京U-18が他チームに比べて、相対的に強さがあるのは事実でしょう。それによって優勝候補だとか期待を受けるのも当たり前だと思います。しかしこうして並べてみると、自力優勝できる立場には無いのだから当然ではありますが、我々に何かを言える権利など無いということが分かります。

やはり、青森山田に勝てていないチームが「優勝」を口にしたらダメでしょう。勝たなければノーチャンス、至って「正しい」と思います。

そう、高円宮杯プレミアリーグEASTは今年も非常に正しく、白熱した最高のリーグでした。いち観戦者として、本当に楽しかった!

そんなリーグも今週末でラスト。FC東京U-18のみならず、青森山田も清水ユースも、全てのチームが、全力プレーで出し尽くせる事を願います。