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「久保建英君」は、日本で成長し「俺らのタケフサ」になった

久保建英君が元々すごい選手だったことは間違いない。ただ、より凄くなっていく「過程」も、自分は日本で見てきたつもりだ。

FC東京には、叱ってくれる仲間がいた。U-15むさし時代、ある試合で自らのボールロストを追いかけない彼を叱ったのは、ピッチ上の仲間だった。それで意識を改めた彼は、直後の同じような場面で今度はボールを相手から奪い返し、そこからのアシストでU-15むさしのゴールを演出してみせた。

中3にして飛び級でU-18に編入された後も、むさし時代からの仲間だけでなくU-18の先輩たちとよく溶け込んだ。ピッチ上では「タケ!」とやり取りしながら。ピッチ外では一緒にビブスやコーナーフラッグ片づけを行いながら。東京都1部リーグを、クラブユース選手権を、そして高円宮杯U-18プレミアEASTを。ゴールを決めればベンチに駆け寄り、仲間と勝利を喜びあいながら。

飛び級での参戦には当然、フィジカルの懸念もあった。例えばJデビュー時には既に180cmあった森本貴幸の様に、彼が立派な体格を備えているわけではなかった。「怪我でもしたらどうするのだ?」周囲からの懸念や多くのご指摘もあったが、そんな外野から言われるまでも無く、現場のスタッフの配慮は既に”丁寧”だった。今シーズンの公式戦通算で「26試合1068分その内フル出場は3回のみ」という出場記録は、U-18監督佐藤一樹をはじめとしたスタッフによる”正しい判断”の賜物だろう。

立ちはだかるライバルもいた。新人戦では、CAセイスラージョスFCトリプレッタ横河武蔵野FC(現:東京武蔵野シティFC)。T1では関東一高・帝京・成立・東久留米総合・実践学園・東京実業。クラ選では千葉SCと予選を戦った。目立つが故に、自分が見た試合では彼に厳しくいくシーンも多くあった。それら全ての本気が、彼にとって経験となり、成長の糧となった。

そんな彼の成長について、個人的に特に印象が強いのはプレミアEASTアウェー市船戦。近年は、正当かつ強烈な圧力を互いにぶつけ合う、見てる側からすればまさに黄金カードと言えるこの試合。そんなU-18年代最高峰のバトルゲームの中で、彼は90分フル出場を果たしてみせた。当たられて倒されながらも、彼は相手を技術でいなし、守備もサボらずやりきった。その上で終了間際に魅せたカットイン右足シュート。飛び級年代への順応と、新たに身につけた日本らしいハードワーク、そして元々彼が持ち合わせていたスキルの煌めき。色々な要素がミックスされたあのプレーは、ゴールこそならなかったが強烈なインパクトとして脳裏に残っている。

そして先週から始まったJユース杯では、これまでの2試合で共に先発出場。終盤でこそ更に守備走りする彼の姿はまさに「青赤印」そのものだった。

 

元々サッカー好きであれば誰もが知っている位の選手である。そんな彼が、ある意味スキャンダラスにFC東京U-15むさしへ加入した事は、様々な人に対して様々なものを否応なしに背負わせる事にもなった。所属選手にも。クラブにも。息子を預ける親御さんもそうだろう。そして些細な事ながらサポーターにも。

バルサからやってきた久保建英君」と、まるで借り物の様な感覚。そんな選手を、果たしてどう応援していけばいいのか?むしろ個人的な感情だけを正直に言えば、これまでむさしで頑張ってきた選手たちと同様に、果たして彼を応援できるのか?とも過ぎったりもした。

しかし、そんなくだらない事を気にするまでも無く、彼はいつしか自然と、誰からにとっても「FC東京のタケフサ」となっていた。

何故そうなったのか?

もちろん彼の実力と結果が周囲を納得させたのももちろん大きい。クラブユース選手権では全ての試合で途中出場ながら5得点、小柏剛(大宮Y)や滝裕太(清水Y)と並んで得点王にもなった。

しかしそれだけではない。つまり、彼が日本に戻ってきてから1年と少しの間で行ってきたのは、日本サッカーへや飛び級年代への「適応」だけではなく、日本サッカー内での「成長」でもあった。得点王などの結果は、決してスペインの貯金"だけ"で成し得たものではない。豊かな土台を基に日本で新たに得たものが、タケフサのプレーから非常に見えたからだ。

彼のスペイン挑戦は多くの大人による尽力のおかげだし、それが彼に大きなものを与えてきたことも間違いない。そしてそんな彼が日本に戻ってきたことで、多くのファン・メディア・ライター・関係者たちが、彼を見ては褒めちぎり、そしてその殆どを「スペインの手柄」としてきた。だが、今の彼があるのがそれだけではない事を、見てる人は見てきたし、少ないながらも形にされてきた。自分もその一端を、前述のように感じている次第である。

 

FC東京が彼を育てた」とはさすがに恐れ多く、口が裂けても言えない。しかし「タケフサがFC東京で育っている」ことも事実だ。そして何より、どんな場所であろうとも、基準を高く保ち努力を続けてきた彼自身の賜物こそが全てだ。

ただ当然ながら、未だにタケフサの未来が「成功」する保証なんてもちろん無い。体格が今後どこまで大きくなっていけるかも不明だし、怪我の不運だって残念ながらあるかもしれない。未来は誰に対しても明るいし、しかし不透明でもある。

だからこそ彼のためにサッカーファンが出来る事とは、余計な喧噪を先入観のままにムダに生むのではなく、いま彼はスペインではなく日本で新米食って「成長」しているという事実を素直に見守ることではないだろうか。あとは、FC東京クラブサポートメンバーに入って、彼や仲間たちにもっと肉と魚と野菜と新米を食わせてやる事くらいだろう。

 

11/5(土)13時KO、対長野パルセイロ戦。巷に流れるニュースや雰囲気から察するに…

 

駒沢陸上競技場にて、U-23への出場機会が巡ってくるかもしれない。


方や、この日はU-18でJユースカップ準々決勝も控えている味スタ西競技場10時KO。相手は宮本恒靖率いるガンバ大阪ユース、説明不要の名門との対決となる。言うまでもなく重要な試合だ。

そのどちらの試合に彼が出場するかは実際のところ分からないが、どちらにしてもJ1の全日程を終えたタイミングで、多くのサポーターが見には来やすい状況ではあろう。このチャンスにもちろん、彼のプレーは見て欲しい。

ただ願わくば、そこでただ見るだけでなく、是非タケフサの成長の過程を見続けて欲しい。11/5だけでなく、Jユースカップは勝ち進めば来週も再来週もある。プレミアEASTもまだ11/27(日)12/4(日)12/11(日)と3節を残し、全部勝てば優勝だ。優勝すれば12/17(土)にプレミアWEST覇者とのチャンピオンシップも控えている。「点」ではなく「線」で見るための機会は十分ある。

彼は決して、スペインからの借り物でもなければ、珍しい見せ物でもない。過程を追い続けていけば、自然と「久保建英君」から「俺らのタケフサ」になるはずだ。

「俺らと一緒に世界を駆け抜けろ!」

多くの人にとって、「久保君」ではなく「タケフサ」となることを願って。長野パルセイロ戦にもし出場するのであれば、そのきっかけになればと思う。ホントに出るかは知らんけど。