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貴方の本質、見せてくれますか? FC東京U-18-JFAアカデミー福島 明治大-中央大

FC東京U-18

高円宮杯プレミアリーグEAST第3節、FC東京U-18-JFAアカデミー福島は、開始20分足らずでFC東京U-18が3-0とリードした。

ラッキーパンチが立て続けに3度も当たるわけもなく、そこには確かに実力差があった。相手のパス回しは、寄せの深さと強度をもって奪い切り、それを素早く賢く展開する。また前節に続いて今のFC東京U-18の攻撃は、明確な意図とランと技術との良いバランスが、相手をズタズタに切り裂く威力を持つ。ボランチ鈴木喜丈による3点目は最たる例で、これまでも「変調の縦パス」にセンスを見せてきた喜丈からのスイッチ⇒連動で自ら抜け出し、冷静にGKとの1vs1を沈めたゴールは、鮮やかであり見事。実力差を感じるには十分な展開だっただろう。誰もが思ったそんなタイミングで…

「こういう時にプレーヤーとしての本質が見えるからなー」

ピッチ上が一瞬の無音な隙間を縫って、やわらかく響く悪魔の声。ボソッとした口調だが、確実にピッチ上の全ての選手に聞こえたであろう佐藤一樹監督のボヤキ。これが出来るからカズキ監督は信用に足る。


目線がどこに向いているか、という話である。3ー0というスコアだけ見れば素晴らしいが、それが前半20分時点のものでかつ実力差がハッキリした上での「既に」3−0であれば、その時点で同じ目線であってはいけなくなる。同じ目線のままであれば、このまま何となく残り70分をやり過ごせればいいだろうし、あわよくばの欲というか「業が勝るプレー」もオモテに出てきていただろう。

そんなことを感じていたまさにそのタイミングでのあの言葉その殺傷力。

また、カズキ監督のその姿勢は後半の采配にも現れた。共に2ゴールを上げていた8大熊健太と10佐藤亮の2名、選手交代で先に大熊を下げたのにはカズキ監督の評価もあってだろう。共に高いレベルで前線での守備タスクをこなしていたが、身体のキレも相まって佐藤の方が若干効果が高かった様に思える。HT明けから前線3枚のセンターを主に佐藤が務めたのも、評価のひとつ。こういう細かいところでも、甲乙付けがたい状況においても明確な指針を選手に向けて、ひとつひとつ示していく。

言われたからか、言わずもがなか、この日のFC東京U-18は90分緩むことがなかった。途中から入ってきた選手こそ、ボールに執着し、アイデアを発揮し、このハイレベルなスタメンに「それでも食い込んでやる」と躍起だった。初戦の鹿島Y戦では、プレミアならではのコンタクトに臆する場面もあり、これは時間がかかるか…とも思ったが、以降の2戦で掴んだ結果が、選手に自信と向上心を生んでいるし、そのスパイラルに心地よさを実感しているところだろう。


奇しくもこの試合の前に観てきた、関東大学リーグ「明治大-中央大」でも近しい感情を持った。中央大FW矢島輝一だ。

関東大学リーグの、現在得点王。4試合5ゴールの結果もそうだし、この日は現在首位の明治大を撃破する決勝ゴーラーでもあった。結果だけを見ると文句も出ようが無いが、この日のプレー全体で観るとそこまで特筆して良いとは思わなかった。ミドルサードで組み立てに関わるにも、展開の読みが甘く出足で相手に負ける場面もあった。

では何故、それでも得点を重ねる事が出来るのか。6得点中5得点がクロスにヘディングで合わせてのゴール、1得点はCKをヘディングで叩いてのこぼれを自ら蹴りこむ形である。

186cmの体格ではあるが、それだけでなく元々「点で合わせる」のに長けた選手である。相手DFとGFの間にはいるボールを突くなど、相手を出し抜き、先に触る嗅覚を感じ取れる選手だったし、落下点に「潜り込める」術も持ち合わせている。FC東京U-18時代はそこまで高さで押して…といったイメージは無かったが、今の中大は彼の高さに合わせた質の高いクロスを入れてくれる。彼にとっては、持って生まれたものを発揮しやすい環境での当然の活躍とも言える。

だからこそである。好調故に、もしくは好調の内容を実際に観た上で、実はいま彼の「プレーヤーとしての本質」が問われている難しい時期なのかもしれないと。

DFラインの組み立てに参加してからゆっくりとボックスに向かっても、大学リーグであればサイドプレーヤーがキープして待ってくれるだろうしそれを相手も許してしまうだろう。相手とのスクリーンアウトを制して落下点を取れるから、クロスに対してファーに立てば、また蹴る側もそれを見越してフワッと高いボールを入れれば、今の彼に勝てるDFはいないと思う。それで結果を手堅く重ねていく内に、何をするのか。何を感じ、何に取り組むのか。そうでない環境を見越したプレーヤーでいられるかどうか。

ハーフナー・マイクはファーを消されてから活躍できなくなった。平山相太はその呪縛から抜け出すのにそこそこの時間を要した。キイチが今後どうなっていくかは、彼に備わる本質次第だろう。


長友も、よっちも、前からすごい選手だったわけではない。この1年足らずのよっちを観ていて改めて思うのは「すごくなっていくその過程がすごい」ということ。成長のスピードが他と大きく違うし、それは他と同じ環境の中にいてそのまま流されていく事で得られるものでは決して無い。

FC東京U-18も、キイチも、プレーヤーの本質をもって他とどういう差をつけていけるのか。続けて観た2試合で、それぞれが夏を経た時にどう成長出来ているのかを楽しみにしながら…

ちなみにこの日はFC東京U-18出身の鴨池陽希も中央大のSBとして出場していたが、彼の場合は「同じユニフォームで90分試合に出た」時点で大きな成長を果たしたと言えるので、この調子で引き続き頑張って欲しいところである。うん、順調!


※追記
JFA-TVで肝心の場面を観ることが出来ます。22分頃から、正確には「選手の本質出るからなー、しっかりやれよー」でした。是非、カズキ監督がこうボヤいた『きっかけ』から堪能いただくことをオススメします。