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今年の大熊東京を現実的に眺める

FC東京

いよいよ今週末に開幕を控える段階にまで来たっていうのに、いまいちスイッチが入りきらない所以は何を隠そう、LIVREのオフ会に参加できなかったからに他ならない。何気に皆勤賞だったというのに都合があって行けなかった不覚あぁ不覚。なので、ひとりオフ会じゃないけど、書くことでちょっとスイッチを入れてみたいという試み。あまりちゃんと触れてこなかったのもあったので、本来段取るべき順序をすっ飛ばして、まずはこの件から。これも、出来ればLIVREでお話伺ってから書きたかった…


表題のとおりに、今年の大熊東京を現実に眺めようって話。考える材料はメディアなどから漏れ聞こえてくる情報と、小平・宮崎・そして今回の敷島でのTMになるだろう。

メディアをどこまで信用するかはさておき、大熊清監督自身がインタビューを受けた記事も比較的多かったのもあるので、少なくともその記事については(編集はされてるだろうけど)信用してもいいだろう。大熊監督の言葉を受け取ることで我々もイメージが生まれ、幸運にもプレシーズンのTMを見ることが出来たのならば、その際の感想は「イメージと実感の擦り合わせ」となるはずだ。

大熊監督が自身でどうコメントしているか?それはどの媒体においても一貫したスタンスから内容もブレずにコメントされており、その中身も分かりやすかったはず。「絶対の部分」「監督が変わっても変わらない東京らしさを植えつける」「選手の自立を促す」パッと思い浮かぶだけでもこれだけのキーワードがあり、そのインタビュー記事自体は多くの人が何らかの媒体で既に読まれているはず。

肝心なのは、それを受け取り手がどう理解するか?

降格した東京にどんな問題があったのか?を大きく分けて”チーム戦術的な部分の問題(選手構成含む)”と”選手の精神・思考・自信等のメンタル部分”の二つあるとする。あるとすると言っても実際に東京はそうだったと思うし、一般論として降格する様なチームなんてそんな感じでしょと。そうした時に大熊監督のコメントを読んでみると、前者の部分についてはほとんど口にすること無く、後者についてばかりを実際にコメントしている。その大熊監督の意思をクラブも受け取り、終いにはクラブスローガンでも自立させっぞ!と宣言しちゃってるくらいに(笑)

つまり大熊監督自身が、今年は2つ問題点がある中で、その片方である選手自身のメンタル部分の改善に注力するよ、チーム戦術的には…。と、そう言ってるものだと自分は受け取った。

それがこれだけアナウンス、しかも大熊監督自身が口にするオフィシャルな効力もあるアナウンスなのだから、それはファンに前提として浸透しているかと思ってたら…しかし意外とそうでもないらしい。

TMを観て、やれ戦術が見えない、やれ形がないと、ぼんやりとした意見しか出てこないのが最たる例。戦術がなさそうだ…っていう自分が受け取った感覚に自信が持てない。なんか戦術がまだあまり見えないんだけど…そういうもんなのたまたまなの?分からないわと。けどこれが、事前に大熊監督のコメントを汲み取ってアタマに入れた上で試合を見ていれば、同じものを見ても「やっぱり無い」となるはず。今シーズン目指しているものにそこは無いことを大熊監督が自身で既に口にしているのを知ってるわけだから、イメージと実感を摺りあわせた際に「納得」があるはずだ。外野としては、そういうものだと”既に理解されている事”が、本来この段階でいるべきスタートラインだと自分は思う。


じゃあそれは問題なのかどうか?というのが次の話になる。

自分は両方に手をつけてどっち付かずになるくらいなら片方に注力した方がいいと思うし、どちらかを選ぶならばその順序はメンタルの改善(クラブ的には「自立」ってフレーズ)からであるべきだと思ってるので、これでいいと思う。やりたい戦術、凝った戦術も、この土台の上に築きあげなければ意味が無い。

ただ今年のJ2では、ウチとの対戦ではハッキリとした格差があるので(同カテゴリーなのに!)相手は強いリスペクトを持って引いてブロック作って守ってくる、というのが通説として語られてる。それがホントにそうなのかすらも分からないくらいに、自分はJ2をさっぱり知らないけれど、実際そうなのだとしたら、東京はJ2で引いた相手をどう崩すんだ!だなんていう文句が、世にWebに溢れかねない。もちろん、引いた相手を崩すことが出来ればそれに越したことはないが…まぁ得点力不足だのも含め、これらは東京によく付きまとう話でもあるので、この際現実的に眺めてみる。

究極な話をを言えば、点さえ取れれば相手を崩す必要はない。相手を崩すことは必須なわけではないということ。崩すことは手段の一つであり、目的ではない(流行りのフレーズ☆)。相手を崩さなければ得点を奪えないという考えに凝り固まってるのならば、それは改めるべきだ。クイックリスタート一発でも得点は奪えるわけで、実際に鹿島にも川崎にもそれで負けてもきた。その試合の教訓が「相手のクイックリスタートを防ぐためにちゃんと誰かがポイントに立つ」だけならば、こんなに寂しいことはない。羽生直剛大竹洋平を始め、東京の選手はクイックリスタートでの得点を(まだまだ甘いながら)ちゃんと狙っている、しかし外野がその発想を疎かにしているのならば意味が無い。このように、サッカーにおいては相手を崩さなくても得点の奪い方はいくらでもある。


個人的に思う、今年の東京の現実的なテーマは『引いた相手を崩さずに点を取る』だ。それを踏まえて今年の東京の現実的な3つのポイント。

一つ目、勝てる勝負を仕掛けていく。

平山相太の高さ。石川直宏のスピード。ペドロジュニオール徳永悠平のフィジカルコンタクトの強さ。森重真人のセットプレー。今野泰幸の対人能力。大熊監督が口にする「相手が嫌がること」「東京が持つ絶対の部分」とはつまりはこの事。

問題はこの活かし方にある。相手にこれならば絶対に勝てるという部分を東京の選手は多く持っている。しかも対J1だったのが対J2になるのだから、相対的にその要素はより多くなるだろうし、実際に他チームとの戦力差は間違いなく大きくある。しかし、それを使えなければ意味が無いということ。

例えば左MFのペドロジュニオールがトイメンの相手にスピード・フィジカルコンタクトで確実に勝てるのであれば、今のこの流れは徹底してPJに預けて勝負させてやろう。という、ピッチ上の選手がLIVEで受け取った皮膚感覚に従い、個々が得点のために勝利のために下す判断。その集合体として、チームがその強みを活かす動きにスタンスがコントロールされていく考え。

今まではクラブが対戦相手をスカウティングして弱点をチームとして突く指示がされることは多かった。もちろんそれは武器のひとつとして携えることには変わりなく。プラスアルファ、ピッチ上の選手でしか分からない感覚を活かし、それを基に「勝つための判断」が選手それぞれ出来るということ。当たり前のことのようだけど、それを個々で判断しチームで自然と共有されていくことは難しいし、東京にはそれが皆無だった。昨年のリーグ最終京都戦はその集大成だった。大熊監督が言う”選手の自立”の一要素。

それはもちろん守備でも同じく。先日のMXでの特番では、TM磐田戦において守備の問題点を監督からはあえて指摘せずに、ピッチ上の選手間での修正に期待したといったコメントがあり、実際にこの要素が現場で検証されているんだなという証言に驚いた。その試合後にちゃんと答え合わせ・反省学習がされたのかどうかは知らないけど。


二つ目、セットプレー。

長らく東京の問題点とされてきたものだが、改めて触れたいのは受け手の問題。クロスでも、もっと本質的なことを言えばパス全般において、セットプレーが何で成立するかといえばそれは”プレースキッカーの精度”と同じくらいに”合わせる選手の強さ”が重要である。

昔のナオや栗沢など、調子悪い時のプレースキックがファーにバイーンとゆるふわなボールばかりだったことや、東京が直接FKでの得点があまりにも少ないせいもあって、セットプレーではキッカーの精度が注目されやすい。そしてそれが行きすぎると「プレースキッカーがいないからセットプレーは期待しない」レベルにまで要求が歪んでしまった。しかし、そうではないということ。精度がなければ中の選手の強さで修正されればいい。改めて、中でクロスを受ける選手の強さをクローズアップすべきだろう。ペナルティエリアの中に佐原秀樹ほど強い選手がいれば、近藤祐介がCKキッカーを勤めても得点が奪えることを我々は既に知っているはず

今年は大竹がスタメンに近い活躍が期待できる事もあって、プレースキッカーがピッチ上にいる可能性が高いのもそうだし、ナオだってキッカーとしての精度はかなり上がっている。そして大熊東京の特徴として、また後述するポイントの副産物として、今年の東京はCKのチャンスが非常に多くなる。先日の2.26TM草津戦では相手が2つなのに対して東京は10つのCKを得ているし、強い相手との試合においても例えば、昨年の天皇杯鹿島戦では相手2つに対して4つ。これを活かさない手は無い。

具体的には先ほどの強みを活かすって部分で、森重真人の強さは昨年から既に周知のものだし、それはとことん使っていくべき。さらには平山・今野・吉本一謙と他の選手も”強くなるべき”。徳永はいい加減CK守備でやられすぎてる問題を解決しなければいけないだろう。ロベルトセザー・ペドロジュニオールの空中戦の強さはいかほどか?

それだけでなく、ショートコーナーみたいな揺さぶり、サインプレーの様な小ネタだってどんどん仕込んでいくべきだ。そんなのは前泊のホテルで、大竹と今野だけで「あしたこれやってみようぜ」って密談して決めといたっていい。セットプレーで得点を奪うためにいくらでもアイデアを発揮し工夫すればいい。それは試合前、練習時間を使わなくても決められる事だ。それも”選手の自立”の一要素かもしれないし、分かりやすい目安になると思う。


最後が、『SBのクロス』。

ここまでずっと「戦術は無い」と言い続けてきたけど、実は戦術はある。守備はプレッシングで高い位置からも奪いに行く。奪ったボールは速攻ならば素早く、遅攻ならば冷静に技術を活かしながら、共にサイドに展開。サイドでは数的有利と個の強さで支配し、上げられるクロスに対し中の人数をちゃんと揃える運動量・意識を求める。これが大熊東京のサッカーだ。そのスタイルがあまりにもシンプルであり、かつ(ゆえに?)そのスタイルの完成が昨年の時点で実は既にかなりされているから、無いように見えているだけである。大熊監督の本心として、チーム戦術として今よりさらにやりたい事があるのかもしれないし、元々そんなものもないのかもしれない。少なくとも今年はそこに着手することは無い。

大熊東京のキモはサイドにある。相手がブロック敷こうが引いてこようが、サイドでならば個vs個の勝負に持ち込めやすいし、そこで東京は勝てる。現実的に考えて、ナオのスピード・PJのフィジカルコンタクトを封じれる個がJ2にあるとは思えない。そこをシンプルに活かすのが大熊監督が考えるサッカー。

東京が持っている強みの中で、現時点で一番得点に直結する強みはSBのクロス精度だと思う。椋原は選手名鑑などで間違った事が書かれてるせいもあって「クロス精度が低い」と、今ですら言われてるかもしれないが、実際は椋原のクロス精度は相当に高い。相手を抜くためでなく、クロスを上げるためのボール運びが出来る様になった事でちゃんとクロスを上げきれるようになったし、実際のクロスの質はあの大黒将志にも認められたほどだ(昨年の何処かの試合後に「椋原から質の高いクロスが上がっているのに、中の自分のせいで決めれてない」とコメントした)。徳永はフィジカルコンタクトの強さで相手を2枚は引きつけられるし、TM草津戦ではDF2枚の間からクロスを上げるセンスも見せた。左を見れば阿部巧草津戦でのアシストは言わずもがなだ。

それに平山が合わせるのが今年の東京の得点パターン。平山だけでなく、クロスに対して中央をどれだけ揃えられるか?が大熊監督が就任以降ずっとこだわってきたこと。そしてそれは、ブロックの外からブロックの隙間にポイントを合わせる作業であって、大部分は”引いた相手を崩す”パターンと呼べるものではない種類。この武器を磨き上げること。フィニッシュの形と、形に持ち込むまでの流れ。大熊東京の戦術は、この部分だろう。


「引いた相手を崩さずに点を取る」だけで、実際はこれだけのポイントが挙げられる。ただ性質上、これだけ攻めて(例えばボールポゼッション率やシュート数ってスタッツを引用して)それでもこれだけしか点が取れなかった、って部分は、今年は(もしくは大熊東京のやり方として)仕方ない。「引いた相手を崩さず点を取る」んだから、そこの燃費の悪さはあって当たり前。だから純粋な”その日の”力の差がスコア差に反映されにくい事にはなるだろうが、その分ちゃんと勝てればそれでいいし、この部分がちゃんとするようになれば、東京は簡単に負けるチームにはならない。負け試合なのに勝ち点3が拾えるようになる。「引いた相手を崩さず点を取る」事の強みを馬鹿にしてはいけない。実際に昨年の名古屋の優勝はそれが要素として大きく関わっていたのを東京サポは知ってるはずだ。

個の強みを活かしたシンプルなサッカーのために。その為の仕事には1mmの妥協も許さない。と姿勢を打ち出し実行するのであれば、それはそれで監督としてプロの仕事であり、「難しい戦術にチャレンジする監督」とその価値は等しい。大熊さんがプロフェッショナルな監督として、今のこのサッカーのためにこだわる仕事は山ほどある。だから、大熊監督の仕事に対して「戦術がない」と指摘するのはある種の無粋になるだろう。具体的に凝った戦術を作るとは大熊監督はほぼ一度も言及していないのだから。引いた相手をどう崩すんだ?ではなく、そこに縛られない、大熊監督のやり方に沿った得点の奪い方について、批評のターゲットを向けられるべきだ。

具体的には、個の強さで押しこむ戦いでいくのならば、それを支えるのは選手のコンディションを作ること・調整すること・起用の際に見極めることであるはず。コンディションを見極めて選ばれるスターティングイレブンと、コンディションが悪くても強みを期待してのベンチメンバー入り、そして途中投入に采配の妙を見せて欲しい。選手層の厚さ戦力差はラスト10分ラスト10節にこそ活きてくるはずだし、そこに強さを見せる東京を是非作り上げて欲しい。コンディションは大熊東京のサッカーを支える要素であり、戦力差的には今年の東京の大きな強みであり、代表招集等の絡みで言えば今年の東京の大きな弱みでもある。だからこそ、その点については大熊監督を厳しく見ていきたい。


ここまできて、最後かつ最大の話”それでJ2勝てるのか?”に辿りつく。

まず、今年の東京における、全てにおいて優先されるべき目標は『J1復帰』。

無敗だのぶっちぎりだの優勝だのは付加価値でしかなくて、目標を邪魔する存在であるならば完全に排除されるべきだとすら自分は考える。もちろん、無敗でぶっちぎりで毎試合夢のスコアで優勝してくれれば、J1復帰という目標をさらに保証する保険・安心感として大いに歓迎はするけれど。

実は、その「全てにおいて優先されるべき目標」の”設定”も本来は選択の余地があった。J2でしっかりと腰を据えてでも強くなる、という選択肢だって本当はあった。しかし実際は、J1バジェットにクラブサイズが決まりきっている中で、バジェットがJ2レベルにサイズダウンされてしまう事態は相当にありえない。FC東京U-15深川・むさしの片方を潰さざるを得なくなる事態になりかねない。それもこれも、全ては東京がJ2にいるから。J2クラブであるが故の収入減のせいだ。その未来が決まるのは今年の東京がどのような成績を得られるか?その1点でしかない。村林裕前社長がメディアに口にした「まずは1年でのJ1復帰に全力、それを逃したら腰を据えることも考えなければいけないかもしれない」という認識は全くもって正しかった。

その目標のために取られた手段も、出来る限りのことをクラブはやってみせた。来年起こるかもしれない、選手契約による編成の大きな変化にも準備しておく必要がある中で、「自前での育成を放棄」した今季のメンバー構成も、現実的な判断として納得できるし、どうせやるならと思い切りやりきったことも好感。リーダーシップが取れる選手がいないと思えば、高松大樹ホベルト上里一将と他クラブのキャプテン経験者を東京に迎えた。強化部としては回答を示したと思う。これで「東京をJ2に落とした選手たち」が変わらなければどうしようもない。

この東京で、選手に自立を仕込みながら、戦力差を活かしたシンプルなサッカーで相手をねじ伏せることで、J1復帰が成し遂げられるか?これこそが最大の焦点となる。

自分は、出来ると思う。ただ、それはJ2というものを全く知らない、対J2での戦いというものさしが非常に精度が低い状態で言っている感想でもある。何の信憑性もない意見。ここから先の話は自分は本当に分からない。

だから今後J2を戦っていく中で、J2を知り、対J2のものさしも精度が上がっていけば、やっぱりこの東京ではJ1復帰は出来ないとなるのかもしれない。もしくは、ここまでの一連は『大熊監督は選手に自立ならば仕込むことが出来る』という前提のもとで成り立っている話であるから、それが出来ないままに無駄に勝ち点を落とし続けJ1復帰が叶わなくなるパターンもあるかもしれない。逆に、戦力差・個の強みを存分に活かして選手がJ2で得点・勝ち点を荒稼ぎするかもしれない。大熊東京と同じくサイドで個の強みを活かしてナビスコ杯を掻っ攫った原博実時代のようなイケイケさがJ2で旋風を巻き起こすことも。

ここから先は、蓋を開けてみなければ分からない。


自分はJ2のことが全く分からないから、J2が怖い。我々が手にしているものさしは、果たしてJ2に通用するのか?初めての不安を抱えながら、J2探検がこれから始まる。