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荒れた博打に勝った報酬は -清水戦

たまに書くなら、そりゃ勝ち試合(笑)

空白期間のあいだには、それはまぁ多くの事が起きました。だからそのそれぞれに対して、じゃあ自分はどう考えてきたか?という、いわば「妄想の過程」が本来無いと、いざ久しぶりに書いてみても何故いきなりそう言っているのかが分からない。なんて箇所が多々あるとは思いますが… けど今回は、まず今を吐き出す事を優先してみました。過程がこの先埋まる事は…どうでしょう(笑)。あまりに膨大過ぎるってのもあるので。

さて。


J1残留という命題に向けての、厳しい道程。

そもそも残留争いの当事者として巻き込まれているのだから、もちろん周囲に立ち込める空気は悪い。疑心暗鬼、将来への不安、周囲に耳を傾ければ聞こえてくるのは惨めな皮肉。先を見通せないほどに、そのもやは濃く、辺りを包む。先が見えないとは、こうも怖いのか…

残留争いに挑み、成果を掴むためには、まずはそれを払う様な何かきっかけが、いわば起爆剤みたいなものがなければいけなかった。その起爆剤とは、残留を手繰り寄せる(と錯覚できる)魔法のカードとも言えるだろう。しかしそれはもちろん、数限られた貴重なものでもある。

東京においては、そのカードは3枚しか無かったと考える。


東京は1枚目のカードを、磐田戦後に切った。「監督交代」である。

城福監督から大熊監督への交代劇は、急であり、しかし迅速に行われた。試合内容的には、その前のホーム浦和戦の方が「監督のクビが飛ぶ試合」だったとスタジアムで実感していただけに、アウェー磐田戦の敗戦を受けての監督交代というのは、決断する側としてはギリギリまで我慢した、それこそ最後のタイミングだったと思う。

2枚目のカードは「ナオの復活」。

プロフェッショナルな努力により何とか開幕に間に合わせてきてくれたナオだが、しかし彼が本当の意味で復活を遂げるのは、実際はまだ先の話だった。ピッチには立っていたものの、ゴールへの明確な意思を観衆に発散させながら、簡単に、笑顔でゴールを決め続けた「あの」ナオではなかった。ナオが東京の象徴であったからこそ、彼が迷い、苦しむ姿はまるでチームの苦しみを映し出す鏡の様であったし、そう状況を重ね合わせて考えていたファンも少なくないはず。ナオの復活を、焦れったくもずっと待っていた。

そう、このカードは偶発的な要素を多く含み、それこそ例えばナオがゴールしてくれるまで、巡り合わせをただひたすら待つしかなかった。我々が思うタイミングでカードを切ることが出来ない、もどかしいカードであったとも言える。

ゴールからの呪縛から解かれるのは奇しくも第1次城福政権ラストゲームとなったアウェー磐田戦であったが、それは同点にまではまだ届かない1点だったこともあって、本来の復活とまでは行かなかった印象が強い。あの強烈な笑顔振りまきながら「道筋に流し込んだ」ホーム湘南戦でのあのゴールこそが、本当の「ナオの復活」であったとする事に異論はないはずだろう。

しかし、それでも、もやは晴れなかった。大熊東京初戦の大宮戦は、変化を実感しながらもカウンターに沈む敗戦。ナオの復活で挑んだ仙台戦は、悔しい逆転負け。限りある3枚のカードのうち2枚を切り、しかし空気が晴れることは無かった様に思う。

当たり前の話だが、起爆剤ってのは炸裂しなければ意味が無い。そして炸裂し損ねてしまうと、その反動は非常に大きい。例えば夏の海岸で、開けたばかりの線香花火が湿気ってて火が付かなければどう思うか?心情的に、心にクル。起爆剤として期待されたこの2枚のカードは(瞬間的な意味で)大きな成果を伴わずに終わってしまった。

だからこそ、残された最後のカードである「米本の復帰」、このカードは必ず成功しなければならなかった。確実に炸裂させなければならなかった。

それ故に、使い方が難しい。


米本が小平でフルメニューこなしたのが9/28、TMに出場したのが10/4の対草津戦。ここからタイミングの模索が始まる。米本がどれだけ取り戻せるか?米本投入で「必ず勝つ」ために、我慢と観察の日々。

自分は10/14の小平練習を見学することが出来、その際に久しぶりに動く米本の様子を見ている。ヨネらしいしなやかなキックがまた見れたことに感動する一方、しかし実戦投入はまだ大分先だろうというのが正直な感想だった。ボールを受けるにも顔出しは甘いし、紅白戦というピッチ上での「流れ」にプツリと乗れずに消えることが非常に多かった。ミスが起きるのはどの選手も一緒だが、ヨネのミスは明らかに「試合勘の無さ」による非常に怖いミスだった。

長期のリハビリ明けだからそれが当たり前なんだけど、「ヨネ全体練習合流」というグッドニュースと、それが生む周囲の期待に反して、まだまだ難しいという自分の感覚とのギャップが怖かった。「米本の復帰」という起爆剤の大きさと、また予測されるその反動の大きさを実感する。

カードを切るタイミングの一つとして、その次週10/23ホーム新潟戦が浮上する。しかしこの試合ですら自分はまだ早い、出すべきではないと思っていた。この試合でヨネはベンチ入りは果たすものの、試合の展開もあってここでは出場機会は訪れなかった。試合は内容悪いながら最後の一手で望みをつなぐドロー決着。

タイミングの模索は続く。しかしタイムリミットが迫る。

新潟戦の時点で、累積警告による出場停止の可能性がある主力選手が多々いた。そしてキムヨングンのアジア大会韓国代表招集による長期離脱。この大会、韓国は優勝して得られる兵役免除をかけて、ホンミョンボ監督はセルティックキ・ソンヨンオーバーエイジASモナコパク・ジュヨンなど、本気メンバーを招集している(キ・ソンヨンは最終的にセルティックが招集を拒んだ)。そんな『最強』アジア大会韓国代表の合宿が10/29に沖縄でスタートしていた。この場合でのタイムリミットとは、これら試合に出せない選手達の絡みによって「いやでもヨネを使わざるを得ない」状況が近い未来に控えていたということ。タイミングを測るどころかそれすら出来ない状況はすぐそこに来ていた。

それ程に、ヨネの起用ってのはタイミングの難しいものだった。

それら複雑な状況が絡まりながら、いよいよカードを切るタイミングが、清水戦と決まる。しかも徳永の出場停止もあって、スタメンでの起用に。我らが大熊監督が大博打を決断した瞬間だった。


我慢して我慢して打ったその大博打は、ついに実る。

大熊監督について言えば、采配が良かった。

難しい状況で監督に就任した大熊監督だが、就任2ヶ月にも満たない中で既に良さも悪さもはっきりと出る仕事を見せてくれている。それは早い段階から大熊色がオモテに出ているという事なわけだからいい傾向だと思うし、トータルで大熊監督がこれまで行なってきた「整理」の仕事ぶりってのは自分は正しいと考えている。

前述した「良さも悪さも」の悪さの部分ってのは、采配の部分。特にアウェー仙台戦、ホーム新潟戦なんかは交代策を間違えて余計な勝ち点を落としたものだった。この2戦から自分は大熊監督の采配部分はあまり信用をしていない。

選手交代の流れ的に分かりやすかった2戦に比べると、清水戦は展開的に非常に選手交代が難しい試合だった。いい意味で代える選手も見当たらず、全体の流れもいい中で、しかしこの悪天候で交代させずに90分を続けられるわけもないし、復帰戦のヨネだっている訳だから、緩やかにでも手は打っていかないといけなかったという状況。

大前の見事なファーストタッチゴールで2-1にまで迫られた事で、逆にシチュエーション的に選手交代はしやすくなった事実はあるにしろ、ここで大熊監督が下した羽生→松下、大黒→重松の交代は正しかったと思う。逆にヨングン大作戦は今までの大熊監督の悪い部分が出た采配だったけど、それは今回はご愛嬌。この試合における大熊監督の采配は素晴らしかった。ヨネを起用して勝ったことが全て。それが何より大きい。

もちろんヨネ自身も頑張った。長期離脱明けの復帰戦としては一番相応しくないコンディションであろうと、それに微塵もビビらずに、攻撃では長短のパスを、ピッチコンディションで精度を落とすこと無くスパスパと通し、守備では相手ボールホルダーへのチェック、よりさらに深くまで相手の身体をえぐり、ボールを奪い切る守備でドンドンと相手攻撃の芽を摘んだ。スタミナが空になっても、なったなりにすべき事をする姿は他の選手の模範にすらなるものだった。


あの日、小平で見たヨネは確かにまだまだだった。もうちょっと時間がかかる、これでは使い方が難しいというレベルでしかなかった。しかしそれ以降、TM筑波大戦では58分、TMジェフ千葉戦では90分フル、TM中大戦で45分と、他の選手よりも多く出場時間を割き、特別な調整でこの大一番に仕上げてきた。スタッフ陣の仕事の賜物であろうし、何よりヨネ自身が頑張ったということ。

そうして掴んだ大博打の報酬は、勝ち点3に帯封が付いた特別仕様。ヨネのシャーで誰もが涙を流し、しかしその涙を拭えば、目指すべき未来が見えた。起爆剤が炸裂し、もやが晴れた。

残留に向けての未来が明らかになった以上、やるべきことはハッキリする。これからヨングンが抜け、まず梶山が累積で出られなくなり、ヨネの反動も睨みながら(今週のTM長野パルセイロ戦は34分の出場に留めた)迎える次のガンバ戦こそが重要。2枚目のカードを炸裂しそこねたのは、その次の仙台戦のせい。選手スタッフもそうだが、サポも風船を割るだなんていう糞みたいな行動を取っている様では同罪だ。

当然、同じことを次してはいけない。選手は選手で、スタッフはスタッフで、そして、我々は我々で。やれることはしなくちゃいけない。1失点されたくらいで溜息ついてるヒマなんて無いんだ。

やれることをやる。やるべきことをやる。その上で、「相手の嫌がることをやる」。大熊イズムで、目指すは先は残留ただひとつ。その道は、ヨネが照らしてくれた。あとは我々が、胸張って、堂々と、戦うだけだ。