こだわりを積み重ねて レビュー -C大阪戦 -大宮戦

一手五年。

寿司における理想の形状は、「地紙の型」と呼ばれる。これを強すぎず弱すぎずの絶妙な力加減で、寿司職人は握ってみせなければならない。しかし、扱うのは生の魚。人の体温で長く触るのは鮮度に関わる死活問題だ。そのために、いかに魚に触れることなく素早く、手数をかけずに握れるかが寿司を握るにあたって重要なのである。

5手で握れれば一人前。そこから1手減らして4手で握れるようになるためには5年を要すると言われている。そしてまた1手減らすのに3手…

小政で4手、大政で握るのに3手かかる。鳳の親方だと何と2手。そして1手で握ってしまうと…

と、これが将太の寿司からの引用だなんて事は言うまでも無いですよね?


なーんでか分からないけれど、どうも先週は大変だった様で。思うようにブログに取り掛かれずに結果、セレッソ戦と大宮戦をいっぺんに、って話になってしまいました。前述のまくらはセレッソ戦レビューの書きかけの使い回しなんだけど、まぁ大宮戦においても同じ事は言えるでしょう。

大概だったと正直に思ったセレッソ。9人にまで減った大宮。

この2試合で2得点ってのは、やっぱり不満というか気になるわけですよ。もちろん、人の不在を嘆くってパターンではなくて。そのあたりはもう割り切っているつもり。ただ、そうでなくても、今いる人で出来ることがあるでしょうと。そういう部分。

つまりは適切な判断を重ねて、それを実現しうるだけのワンプレーへのこだわりが、しっかり発揮されさえすれば、もっと何かあったんじゃないの?と。

大宮戦後に書いているので大宮戦でのイメージが強いまま書くけれど、やはりパス一本にでもこう、タラタラしたボールスピードでないで、ピシャッとさ、そういうのは無いのかよ?って言いたいんですよ。オッサンみたいな物言いですけど。釜本さんみたいな物言いですけど。あ、ヤンマー(笑)

セレッソの守備は、5-4でとりあえずドン引いて、っていう、人数を揃える守備で、ボールホルダーへのプレッシャーはかなり緩かった。大宮は人数少なくなったのもあって、中央を固めざるを得ない形。

つまり、どちらの試合においても「自分たちのやりたい事」がやりやすい状況だったってのが事実だと思う。相手の長所を消しにかかられる事の多い中で、この2戦はやりたい事を遮る要素は随分と少なかったはず。

それで、これだからね。

となると、自分たちのやりたい事を遮った要因は自分たちにあると考えるのが自然でしょう。それが何か?これが前述にある「適切な判断を重ねて、それを実現しうるだけのワンプレーへのこだわり」が足りなかったんだと。自分は思うわけです。

パスに精度が無い。スピードが無い。バウンドしたパスを平気で蹴る。5センチズレたパスを、受ける側も、その5センチを修正するトラップが出来ずに、今度は10センチの誤差として次の相手にパスを送る。それが積もり積もって…シュートする所まで来たときには、その誤差はシュートが枠内から外れるまでの誤差にまで広がる。

むしろ求められるのは、先取りの精度。相手に5センチの誤差を許さないパスではなく、5センチの誤差をも認めるだけの精度のパス。バウンドされたボールを一発でピタリと止めるだとか、浮いたパスをダイレで返すときはグラウンドで返してやるだとか。っていうプレー一本レベルの話だけでなく、右のエリアがフリーだからそこにトラップつけやすいパスを出してやるだとかさ。それがゴール前になれば「コレは右足ダイレでシュート打ってくださいよ!」ってメッセージを込めた落としを意識してやるだとかさ。「先を示すパス」だってあるはず。

それが出来てたシーンは実際にかなり惜しいレベルのチャンスになっていた。キムジンヒョンもしくは北野貴之のグッドセーブでこれは止むなし、って段階。けど数える程度、数度のみ。まだまだ足りないし、今回の件においてはそれが幾度も出せる機会だったはずでしょ?

とは言っても、ただでさえ水物だと言われている攻撃部分の問題を、毎度毎度プレーディテールの甘さに求めるのは、そんなのこれからもうそう言えるじゃん、下手したら今シーズンずっとレビューではここのみを問題にできてしまえるし(笑)それはひねり出す側としてはすんげー楽だけれどもそれじゃあつまらないので、もうちょいひねった見方を考えてみると…まくらに入れた「手数」の部分になるのかなぁ?って事になるのです。


結局、シュートまでの必要手が必要以上に掛かっているのが現在。適切な判断とプレーを積み重ねていけば、手数は自ずと減っていくものだというのが持論。そんな自分の好みを多少譲るとしても、例えば3手かけるべきプレーで6手かかってしまうだとか、逆に6手かけるべきプレーを3手でいこうとして失敗するだとかね。

適切な手数で。機を逃さない手数で。そのためには、技術的な問題で手数がかかってしまっているだとかそういうのは論外として(いや実際これがスゲー多いんだけど)例えば自分の近く数人のみを選択肢にするのではなくて、遠く含めた見方10人を選択肢に出来なければ実現は難しい。奥の選手に向けた「手前を飛ばすパス」ってのがこの2試合は極端に少なかったと思う。となりとなりに順々に展開していけば、それももちろん「余計な手数をかける」事になるわけだし、実際にそのせいで、左から右へサイドを変えても時間がかかりすぎて既に機を逸してしまっているだとかさ。多いわけですそういうのが。で、たまに遠くが見えた、パス出してみたとなっても、ピシャッと行かずに悠々パスカットされるとかね。

とにかく、気持ち良くボールが動かない。

縦にパスを入れる、ってのは初期の段階で問題としてあったけれど、それは随分と意識は上がったと思う。羽生・徳永の両ボランチにしてもそうだし、受ける側としても平山に加えて赤嶺が選択肢として変化があった。赤嶺は苦労しながらもポスト役として仕事をしてくれているし、赤嶺が前線にいてくれることで平山が大きく動きながらポストプレイに関わる昨年のような形も復活しつつある。この点は開幕からひと月弱で良くなってきた。

だから、次はタイミング。機を逸しないパス出し。誰もが分かる、よっこいしょな「テレフォン縦パス」ではなくて。カットされにくい、ピシャッとしたパスの「質」。段階を踏んで、次に行かねば。総得点3は、余りにも寂しい。得失点差が稼げる絶好のシチュエーションだった大宮戦で+2しか稼げなかったことは痛恨だった。全ては12月のために。12月に得失点差で毎年泣き笑っている事実を今の段階から明確に意識して、堂々と優勝争いしてやろうじゃないか!って目標なのだから。


まぁそれらの諸々の不満は、現地では相当レベルのイライラとしてあった。けどその後に、「重松の初出場初ゴール」を振り返り、噛み締めると、噛み締めるごとに「いや、これは素晴らしい試合だったんじゃないか?」と思えるようになってしまうんだから。こうは言ってても、単純な自分なわけですよ(笑)

自分なんかは所詮、先取りして重松を見てきたのなんて2年間程度しかないんだけれど、それでも、あの、オレの重松がさぁ、って思うとね。長友からのあの滞空時間の長いクロスの間に、重松ゴールへの期待感が、声量としてどんどんとボリューム上げていく感じが、最高に…気持ちよかった!!

彼のプレーの、良さ悪さなんてまだ少ししか出てはいないだろうし。むしろ相手が二人少なかったことを思えばこれからは悪さの方がより出てくるんだとは思う。けどあの試合で、彼が『託し甲斐のあるFW』であること、それは十分に示されたのでは?彼の一番の良さがあの日ナクスタにいたみんなに伝わっていることが、あの声量から感じれたことが、何より嬉しかった。


ただ重松はこれからもまだまだ爪痕を残し続けていかなくてはならないし、それは他の選手にとっても同じ。週2で試合が組まれるスケジュールにいよいよ突入し、春の気配もやっとこさ見えてきた。シーズンが本格化してきた。シンプルに、彼らなりのこだわりを今日も期待します。

なんか、急ぎで書いててグチャグチャですね。自分も早くシーズン始めないとです。こだわり、しっかりしたもんがそろそろ書きたいもんです。