敵を我に求められるか? 関東大学サッカー 流経大-筑波大

土曜日は大学サッカー。
会場であるたつのこフィールドには初めて足を運んだ。大学サッカーを多く観に行きたがる者としては、もはや大学サッカー界の巨人となった流経大の本拠地にはやはり一度は行っておきたかった。使用頻度の高さを思わせるボッコボコのグラウンド、取ってつけたスタンドと殺風景な中にポツンとできた様な会場だったが、選手寮から歩いて数分足らずの絶好立地に出来たホームグランド、その効果は非常に大きいはず。
備忘録も込みでアクセスを残しておくと、最寄り駅は常磐線佐貫駅。路線バス「白羽一丁目」行き(龍ヶ崎市HPで時間を確認すべし)に乗って「さんさん館」バス停を下車。目の前にある「たつのこ山」を左回りで迂回すればたつのこフィールドがあるはず。ただ、どうせ来たならとりあえずたつのこ山を登っとけ。一発で分かるはずだし、周囲の感じも透けて見えるさ。


第一試合は省略で。神大神大らしく勝ち、専修は昨年の専修らしさが全く無かった。アイデアは雑で、のせる技術も丁寧さが無い。交代選手も監督無視して下がるし(負けてるわけだから不機嫌なのは当然だが)ちょっと「サッカー舐めてる」感がピッチに出ていた。昨年の専修サッカーが好きだっただけに非常に残念、まずは丁寧にサッカーに取り組むべきか。
まあいい。しょうがない。目的は第2試合、流経大-筑波大の「茨城ダービー」である。


関東一部の大学を巡っていく上で、どうしても流経大は「後回し」になってしまう。現在の主力を担うような選手は昨年から大体見ているし、中野総監督は「選手を犠牲にする」様なことを絶対しない人だから、ある程度の選手が揃っている以上は弱くなるわけがない。それぐらいの鉄板ブランドに個人的にはなってしまっているからね。
対する筑波。積み直しとなってしまった今年を戦う上で、先日観戦した対東海大戦では「アンカー2須藤」という「今年の形」をやっと見出せた。そこからの進捗状況確認、みたいな。

そんな両者の「近況」などはでも、実はどうでもいいくらいに、何より「茨城ダービー」。説明するまでもなく、この看板も昨年大きく価値を上げてしまったから。どうしてもその期待は集まってしまう。この試合を迎えるにあたって両スタッフも、この事を(野次馬の期待を?)試合前も後もイヤ!ってくらいに聞かれたんだろうな(笑)

  • 渋く手堅く勝ち切る「看板らしからぬ」試合に

メンバー等は省略。筑波はキャプテン大塚が不在、ケガかはたまた時期的に教育実習系か?流経もそろそろそうらしいけど、多くの選手の実習先が流経柏なために「本田先生に頼めばダイジョーブでしょ!」らしい(笑)

開始2分にいきなり流経。相手DFの間にスッと入った11武藤は中央にふわっと入るボールをフリックでそらす。それを受けた9船山はそのままズドン。出会い頭にいきなり先制、スタンドで見守るギャラリー全てが「やっぱり…」と思い始める。
しかしその後が渋る。流経は試合を優勢に進めながら追加点が奪えない。特に筑波の守備陣はぽっかりと数的同数になる場面があったりで、流経攻撃陣に人が付けてなかった。武藤・船山の2トップは2トップとしての連携を考えた動きが出来ていただけに。逆にそれを考え過ぎてしまったとも言えるが。まぁそれよりもフォローが薄かったかね。オレの10金久保は消えてたし、6宇賀神も前線にボールが入った時に遠い位置にいることが多かった印象があるが。筑波もお得意のMF連携からラストパスを狙うが、山村・及川の2CB「もうひと山」が越えられない。
前半は1ー0で終える。


後半も形勢変わらずながら、徐々に筑波に勢いが出始めてきた。やはり筑波の選手達はパスコースを作るのが上手い。受け手がギャップに顔を出すのは当然として、注目すべきは出し手の発想。「止まる勇気」を知っている。出したいシチュエーションでパスコースが無くても、そのコンマ数秒後に小さいコースが出来ることを予知し、もしくは期待して「何もしない」ってプレーができる。あのボールホルダーの間合い感覚はJではヤットくらいしか思い浮かばないが、筑波の彼らはそれをツールとして身につけている。びっくりするパスコースを使いながらビルドアップしていく特殊さはやはり筑波の魅力。
そんな嫌な流れの中で流経が得た追加点は非常に大きいものだった。金久保のCKをどんぴしゃヘッドで及川準!両親の目の前で「親孝行ができた」と嬉しいヘッダー。おいちゃんスバラシス!
しかし直後に筑波が反撃弾。混戦から小澤→田中→最後に瀬沼。ワンチャンスを決めれば面目躍如みたいなプレーをしていた瀬沼だったが、ツーチャンス目で決めた(笑)
流経は立て続けに選手交代2トップも武藤に代えて30上條が入る。今季の流経大はこの3枚をローテーションで争う形。その中で9船山がまたしても結果を出す。8千明から受けたパスを左サイドで受けると右足に持ち替えて即座にファーにシュートを流し込んだ。DFが若干ブラインド気味になって頼みの1碓井も若干反応が遅れてしまった。これで勝負あり。
3-1で流経大は盤石の勝利。結局全体的にそつなく勝ち切ってしまった。

  • 瀬沼の革命を待つ筑波。

いやー、試合をしっかり振り返る文章って久しぶりだな、読み返したくない(笑)ってことでこれからは言いたい事言うたります。
まず筑波。終盤はガクンとスタミナ切れを起こしてしまった。反撃に力は無かったね。確かに元々「先行逃げ切り」タイプ。前半に圧倒的攻撃力を見せつけて、試合を決めたら後半流すスタイルで勝つことが多かった。しかし今年はその攻撃力が影を潜めている。10試合で11得点。あまりにも得点が少ない。
その理由は単純、「FWがいない」。得点王コンビ木島・西川が抜けた穴があまりにも大きい。
「筑波スキー」兼「瀬沼スキー」な自分としては、瀬沼がその穴を埋めてくれることを期待していた。高校時代のあの膨らんで受ける「消える能力」は、「天性の消える才能」を決め手に木島・西川をFWに抜擢した風間監督とは相性がいいと思ったし、何よりその瀬沼のゴールゲッターぶりは西川にそっくりだった。期待よりも早くに試合への出場機会を得た瀬沼だったが、しかし今日を見ると当然「西川の後継者」と呼ぶにはまだまだであることに痛感させられる。
瀬沼は今日、とにかく膨らんだ。DFを外して受けようとした。ゴールを取るために。しかしそれだけだった。
足元へ受けるポストプレイが出来ない。スキルフルな中盤を揃える筑波MF陣から、受ける事のできたパスはいったい何本だっただろう?いったん受けてから勝負にかかる、みたいな動きを瀬沼がせずに、ただ一発ウラを取りに行ってしまうから、多彩なはずの筑波の攻撃がMF止まりの非常に「平面」な形になる。もっとFWを使ったパス回しをしないと、最終局面で相手の綻びは生まれない。西川はそれが出来ていたが、今の瀬沼は出来てない。
簡単な対処は2トップにすること。一応形式上は小澤・瀬沼の2トップに、今もなってるんだろうけれど、やはりどうしても小澤はそういった選手じゃない(できるけど)。しかし今は、ある程度割り切って、耐えて瀬沼を使っている感もある。ならば応えるべきは瀬沼。瀬沼が革命しなければ筑波は次に進めない。このFWさえ固まれば、またインカレで爆発してくれるだろう「伸びしろ」はやはり感じてしまうのだが。
正直に、筑波がこの試合で勝てるとは思っていなかった。この時点での実力差はありありとあったし、やはりサッカーは甘いものではない。ただ、このカードが持つ「看板」が筑波の何か「きっかけ」となれば…それを期待してこの試合を観戦した。でもこの試合は「きっかけ」とはならなかった。何とかインカレ出場権を獲得できる展開にまで、間に合えばいいのだけど…

  • 敵のいない関東で全国が見えるか?

久し振りの選手が多い中で、武藤は多少成長を見せた。ギャップに降りてきてのポストプレイを覚えているんだな、という様子はビシバシ伝わってきた。昔はワンタッチゴーラーとして、ある意味「チームを構成する一人」としてのプレーを免除されてきた(もしくは出来なかった)。しかしそれで済んだのは1年の時だけ。モンスター流経大で2年時から「11」を背負う選手として、もう3年の武藤はこうでは困る。今日もアシストはするが上條と途中交代、まだまだ。貴重なゴールを決めた4及川も、行きたがる3山村とのコンビの中で安定したプレー。今日のMOMでしょう。6宇賀神はもはや欠かせないピースに。10金久保はこの日はイマイチでまだまだこれから。9船山は流石キャプテンの2ゴール、ひらりひらりとよく走った。


流経大を見る前から「優勝は流経大」とは思っていたが、今日見て確信、関東制覇は決まりでしょうね。だらしないライバルたちのおかげもあって、単勝1倍台です。決定機を外す味方に対して「そこしっかり決めるところだろ!」とチーム内から厳しい声が出るのは流経大ぐらいでしょう。
だからこそ、総理大臣杯・インカレと「対全国」に向けたチーム力アップが出来るのか?この先リーグで躓くこともあるだろうけど、関東の相手程度ではもう自らを磨く事は出来ない。
敵は内にあり。自分をライバルとして、黙々と実力を上げていくしかない状況。これはちょっと辛い。
流経大って組織があぁだから、選手個人に負荷をかけようとすればいくらでもできるだろうけど、チームに負荷がかけられない。厳しい戦いに揉まれて、みたいに「チームが」成長できない。これが目標の3冠に向けて障害になるのは間違いない。
流経大がどうチーム力をあげて、しかるべき大会に挑むか?その結果はどうか?楽しみでもあり、不安でもあるところでしょう。関東で強過ぎるのも、これはこれで厄介だねぇ。