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そして徳永悠平は天下取りへの階段を昇り始める

哀しいホイッスルが鳴り響く。
ピッチ中央で整列をする東京イレブンは、対戦相手の選手達そして審判団の面々との握手に移動を始めた。試合終了後の慣例。儀式。しかし、その流れに徳永は加わらない。相手チームに、審判団に、むしろ握手に向かう味方に対しても背を向けて、唇を噛み締めながら独り歩みを始めてしまう。いわゆる「握手拒否」である。


退場者を出した東京は石川ナオを下げて茂庭を投入、平山を右サイドにスライドさせる形でこのピンチに処方を施した。苦境は承知の4-4-1、徹底ブロックで「ゲーム作り」を続ける決断をする。
その中で徳永は、最も困難なタスクを与えられた一人であったと言える。
数的有利でようやくスイッチの入った川崎は、両翼選手をライン際まで広げて待機させ、サイドを使いながら優位にポゼッションを進める。「鳥かご」のようなシチュエーション、それを全て追いかけようものなら東京は即座にガス欠になってしまう。中央に絞って、ギリギリまでブロックを崩さない東京。
その状況でサイドの選手をケアする徳永。サイドにつり出されて、空いたスペースを突かれることを『前提』とした守備。そこにカバーに入ってもらうべき平山・梶山・米本・茂庭との関係性を事前に想定しながらの覚悟の守備。究極の思考準備と実行プレーが求められた。しかし結果はついてこなかった。


センターサークルから背を向けた徳永。向かう先はアウェー側ゴール。ホーム自由席への挨拶に向かうルートからもあえて外れる。わざわざゴール側まで向かって、手に取ったのはボトル。ほかのどのボトルでも良かったろうに、その選択に理由は果たしてあったのか。一度口を濯いでから喉を潤し、役目を果たしたボトルを徳永は思いっきり地面に投げつけた。


一連の行動で、徳永は明らかな怒りを表明してみせた。しかしそれが俺は嬉しかった。それは何も、俺たちのモヤモヤした怒りを代弁してくれたことによる嬉しさではない。
徳永といえば、あまり感情を表に出さない、寡黙な選手という印象が強い。感情を内に秘め、それが「やる気の欠如」とネガティブにとらえられることもあるくらいに。しかし今年は守備のタイトさと攻撃でのアイデアプレーが多く見られるようになり、頼もしい選手になったとファンからの信頼も非常に上げていたところだった。

そんな徳永が怒った。怒りを、感情をハッキリと表に出して見せた。あまり覚えのない徳永の怒れる様子に改めて、変わった、頼もしくなった気持ちを強くした。そして新しい彼のさらなる成長を予感してならなかったのだ。


徳永の握手拒否を俺は支持する。
握手拒否、その他一連の行動が決して褒められるものではないことは分かっている。こんな辺境ブログを読む川崎サポがいるとは思えないが、もしも読んだら気分を害されてしまうかもしれない。しかしここは、自分の素直な感情を表明させていただくことをご容赦願いたい。

徳永が発露した怒りに、俺はこの先の「天下取り」を確信したのである。