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「プレッシャーとの戦いを楽しめるか?これを続けるのがプロである」 インカレ決勝 筑波大-中央大

サッカー

まるでインカレ準決勝の流経大戦の続きを観ている様だった。溜まった疲労。ぶれる技術。ただ、この一勝、この舞台での勝利にはふさわしくなかった。ここまでだった。

  • 相性から読みとれる戦前予想

流経大戦で気にした様に、決勝でも対中大戦での相性を確認してみると、関東リーグでは2-4 0-2の筑波の2敗らしい。流経相手に相性の良い筑波も、中大には分が悪い。
記憶の断片からイメージを膨らましてみる。
中大のイメージは、人数をかけて津波の様にダッと押し込んでくる、ある意味勢い重視の攻撃。淀みをあまり作らずに、数的優位で一気に押し込むスピーディさとその力強さ。前期の国士舘大とかを彷彿させる形というか。筑波がやられるときのパターンは、その中大の勢いにDF陣が飲み込まれる時か?決勝に向けて、パターンをイメージして観戦に臨む。

  • イメージ通りに筑波を飲み込んだ中大ビッグウェーブ

結果、そのイメージそのまんまの90分だった。中大は4-4-2とは言っても、攻撃時にはボランチ5村田がアンカーとしてどっしり構え、残り5枚は勢いのままにダッと押し寄せる。出場停止の6永木の代わりの26櫛引は夏頃にはFWとして起用されていたのを見かけた事がある。佐藤監督がこの大舞台に櫛引をボランチにチョイスしたところに、中大というチームとして、また櫛引自身としてもポリバレントではないがそこに中大の分厚さ、そして中大らしい攻撃のための処置が透けて見える。
かくして5枚のイケイケなアタッカー達が筑波守備陣にどんどんと仕掛ける。助走を付けて、思いのままにドリブルで相手を切り裂くし、それを成立させる、舞台を仕立てるに必要十分な繋ぎの技術・展開力も有する。失敗してもこぼれ球はアンカー村田が拾い、的確に散らす。彼等の良さを活かすための下地を整えたのが中大サッカー。
計4枚もの出場停止選手を抱えながら、行われたサッカーは純度高い中大サッカー。また、夏頃に比べれば中大津波サッカーも、思い返せば洗練されていた様に思える。結果、決勝ゴールが26櫛引によって生まれたところも含めて、中大が出し切った全てを結果としてモノにして見せた。
正直なところを言えば、中大サッカー部の雰囲気、それはスタンドの在り方も含めて全国タイトルにふさわしいとはとても思えない。しかし、インカレ決勝というこの場で中大は、彼等らしい武器をさらに洗練された形で、見事な津波を作り出し、勝利にふさわしいサッカーを見せたと思う。

  • 層の薄さと括るのが良いのかどうか

準決勝・流経大戦の続きを観ている様だ、と表現した筑波。明らかに好調時に比べて、動きが無い。比べずに言えば、必要な動作を怠っていた。唯一それが出来ていた7永芳の孤軍奮闘ぶりが全てを表す。そしてその疲労に輪をかける様に、パスがぶれ、技術がぶれる。「足元がこれだけズレたら、しょうがない」風間監督もお手上げだった。
「ベンチメンバーも悩まない」ほどに、選手はボロボロで、人数がいなかったという。しかしそれだけでなく、恐らく監督が信頼に足る選手がこの段階でこの人数しかいなかった、という表現のが正しい。自らが考え、行動し、その個々の行動が集まって「チームの戦術」が生まれると考える風間八宏監督。それが出来る選手は就任時は全くいなかったのが、インカレ前の記事で「10何人かは出来る様になった」とコメントしていた。今年観戦できた数試合で観た、監督の起用と途中交代の幅の少なさがそのまま、その十数人の選手達だった、という事だろう。この日のスタメン+交代選手、そしてケガで欠場した18原田までが、風間監督の信頼足る選手だった。
1年目の指導でこの結果。育成の面では良くできた方ではあろうが、その年最後に行われたインカレ決勝を勝つ、という点ではそれでは足りなかった。そういう事だろう。

  • 密集を通す技術を求め続けた風間監督

彼等は監督の一定の評価を与えられた選手達であり、ゆえにこの日彼等が具現化したのが(この日見せたパフォーマンスの低さは当然あるが)風間八宏の思想そのものといっても良いだろう。
某ユースな人との質疑応答が面白かった。質問のニュアンスは、

全体的に攻撃が中に中に行ってしまっていたが、もっとサイドの有効活用含めて試合中に何か指示をしたか?

某ユースな人の質問通り、この試合で筑波のサイド攻撃はほとんど無かった。中盤の選手が中から外から、9木島11西川の2トップに向けてパスを狙い、それを24新井がことごとく弾いたのがこの試合のパターンで、試合のポイントを探ればここで中大が筑波を潰せれたこと、また潰した24新井の殊勲が勝負の決め手であった。
それに対して7永芳なんかは「ボールを受けて離して」のリズムでひっぺかえそうとしたし、受け手の11西川は「足元へのパスが多かったが、まずはエリアを広げるために裏を狙うパスが欲しかった」旨の発言をしていて、出し手と受け手の狙いのズレが透けて見えた。
ここで風間監督はこう受け答える。

今日の試合、攻撃が中央に片寄りすぎと言われたが、うちは外を攻める気はない。外はあいているもの。中央から崩せないのは、ペナルティエリアの中に入っていくための技術や力が足りないだけ。うちが目指しているのはスペースを探さず人を崩すサッカー。個々の力で中を崩せなければこの先は意味がない。
〜関西学生サッカー:選手・スタッフコメント〜

現代の日本サッカーは、ピッチ上にスペースが無い状況から、連続した動きでスペースを強引に作り出し、そこを活かすサッカーを目指していると認識している。しかしそれとは真逆の思考が風間監督からは披露されている。
例えば、どん引いた相手にいかにこじ開けるか的な、アジア予選でよく言われる光景。それに対して「もっと動け!」とは言うけれど、ぶっちゃけ引いて人数かけてブロック作ってる様な割り切ってる人間に対して、動きで吊って綻び作ってなんて、結構難しい話だと思う。「もっと動け!」と文句言われる場面も、実は『動いてはいるけど、相手の割り切りの方が強くて相手が吊られない』だけなのかもしれない。
そんなシチュエーション、国内・国外含め多くのサッカーを観てきた天才が考える現時点の答えが恐らくコレ。「スペースを探さず人を崩すサッカー」。それは、空いているサイドのスペースに惑わされずにただゴールに向かう意識。密集狭いスキマを通すパスと、そのために必要なタイミングを逃さない視野・キック力・トラップ。
その全ての根底にある『技術力』。

  • 世界に通用する技術を

マンデーフットボールなどのコメントも、この意識のフィルターを通して聞くと、風間八宏の思想がさらによく分かる。求められる精度、それを邪魔するプレッシャー、疲労、しかしそれでもぶれない圧倒的な技術力。風間八宏は筑波大監督として、これを選手に問い続けた。
「ボールを扱う技術は、ボールを蹴っただけしか上手くならない」3時間4時間練習した後に練習試合を組んだりし、苦しい中での技術を求め、選手を鍛えに鍛えた。
「いつでもボールを蹴れる場所にボールを常に置け。」そのために、まず各々その場所を見つける。そして次にそこに置く技術を身につける事を求めた。
「1vs1で負けるな」
そして、「サッカーをなめるなよ」


来年度もこれを筑波に問い続けるのか?来年も筑波の監督を続けるのか?風間八宏監督は「わかんない!」とはぐらかし、笑いを誘っていた。

  • おまけ 若年層に刺激を与えろ!

余談になるけど、インカレ決勝のエントリをサボっている間に何か動きがあったのでそれについても少し。

Jリーグ 若年層プレーヤー改革プロジェクト「J.LEAGUE Under age players Move up Project」を発足

ブコメにもあった様に、Jリーグ主導であり、小野も布もいないところで有意義な議論を尽くそうよというプロジェクト。ガンバの上野山氏をJリーグに出向させるなど、メンバーにも本気の様子が伺える。スペイン的なサイド攻撃ガンガンハラヒロミと、「サイド使う気ありませんけど何か」風間やっひーの志向は恐らく真逆だし(笑)、西村-ヒロミコンビは「宇佐美ンは話にならないよ」でおなじみなど、すげぇ傍聴したい感じに。つかこの傍聴したい感じの中心はハラヒロミなわけだけど。
FC東京だけでなく、多くのクラブが高卒選手を育てきれない環境に置かれているのは間違いない。それでいて、小澤がJFLに、そして由紀彦の移籍先が決まらないなど、それほどにJには良い選手で溢れかえっているのか?というベテランその他の処遇に関する不満も感じる。そういった契約的な構造も含めて、何より選手が悔いなく技術が伸びる環境が、トッププロリーグとして普通に持てる環境になる様に。その一歩として是非このプロジェクトには頑張って貰いたいし、その推移は見守っていきたいところ。
その中で、天才風間八宏が『技術』という全ての根底である部分に、日本に刺激を与える事になれば嬉しいなと願うばかり、なのです。