Ceremonyは終わらない -新潟戦

前日に優勝の芽が摘まれ、しかし個人的にはこれでスッキリ出来た。思えば、『勝てば○○』という試合を繰り返してきた今季のFC東京。勝ち点を計算する「楽しみ」と、いざそれを抱えて試合する事の「重圧」。経験出来て分かった、雑音という名の大敵。そんな煩悩に振り回され、トータルで負け越してしまった感は否めないが、それがこのタイミングで振り返れたのはそれはそれで幸せな事だ。1年通して右肩上がりに成長出来たかは分からないけど、「3歩進んで4歩下がる事もあったかもしれないけれど」、しかし『上を向いて歩いて来れた』一年だった。残留出来れば良しだった今シーズンで、下を向かずに、上を向いて来れた今年は素晴らしいものだったよ。
まだシーズン終わるわけでもないし、ましてやホーム最終戦を迎える前の話。けど自分は岩政のゴールが決まったと知ってから、今年を振り返っていた。
そして辿り着いたのは結局、感謝。
京王線飛田給に近づくにつれ続々と乗り込んでくる青赤の仲間たち。飛田給を降りればやんややんやのお祭り騒ぎ。喧騒の中歩いていけば味スタの無骨な屋根が覗いてくる。一歩一歩確実に高ぶる感情。幸せだよ、例え直前に競馬で打ちのめされていても(笑)
dia obrigado。ホーム新潟戦。ただ一つを求め、スッキリと臨む一戦。

梶山と徳永、主要選手がいない今節。代わりは金沢とエメルソン。エメが左に張り、2トップのカボレ・平山もタテに近い関係、平山MF型の4-2-3-1パターンに見えた。サイドに置いたエメの起点、下げた平山の所での収まりに期待する思惑。
梶山抜きを割り切ったサッカーだった。前節が象徴していたが、ファーストタッチのブレが個人的に気になった梶山のあんな出来でも、しかしボールは梶山に集まった。今年の見慣れた東京ではボランチがボールを触る機会は多いし、良くも悪くも梶山が目立つ。それだけに今日の狙いも内容も、「あぁ梶山がいないんだ」と分かりやすく感じる内容だった。シンプルに、サイドに前線に。長いボールでまず縦に。モニが自陣ファウルをDF裏に放り込んだのを観て、それらが狙いと捉えた。捨てた、と言っても良い。
そうなると期待するのは金沢の優しく急所を突くロングパスだが、ルックアップしても出し所に困ってもたついていたのが、結果この試合通した出来を象徴していたと思う。
新潟は田中亜土夢が全て。DFラインに絶妙に張り付かないポジショニング、トップ脇でアレをやられるとブロックで守る東京は厳しい。アトムがチョロマカ動き、危険なシーンも生まれるが、そこは我らが塩田仁史である。相手のチャンスを消す間合いの詰め方が、今は神懸かっている。
後半アタマからエメ→大竹。エメは狙いが分かるだけに呼吸が合わないのがもどかしい。緩いパスをかっさらわれる事が多かっただけに交代はやむなしだったが…代わった大竹も、しかし個人的には不満。周りが生んだ選択肢の問題もあるのだろうが、どうもイキッてるというか、ビッグプレー欲が悪い方向に行きかけている感はあった。結果どでかいミドルをぶっ放し、CKでアシスト決めてしまう辺りとんでもないのだが。しかしシンプルに捌き、より自らが勝負するステージを組み立てる作業は忘れないで欲しい。こう大竹を評価するだけあって、大竹投入が功を奏して、とは思えないのだが、結果後半は東京が流れを押し返す。フリーでボールが持てる事も多くなったし、綺麗にサイドにボールが流れるシーンが目立った。

交代はナオ→達也、平山→赤嶺。新潟が全くいじってこなかっただけに早めの交代策。

平山は良く競り、良く収めていたと思う。例えばリバウンド王桜木花道が腰を痛めたように、空中戦で何度も競らなければいけないというのは観ている以上にキツイものなのだろう。比較的競り合いにも勝てていた平山も、足を伸ばす仕草を見せた以降は空中戦も勝てなくなっていた。足がもつれて倒れた(ような)プレーの直後に達也が呼ばれ、ナオが交代したのと同じく、そういった意味では平山もっと早くが代え時だったのかもしれないが。梶山がいないこの試合で、収まり所としてチームからかなり期待とボールが集まっていたので、お疲れさんだろう。
そして投入された赤嶺は、またしてもシンゴ・インザーギに。一発必中、「なぁぜそこで飛び込まない!!」と堀池巧に等々力に続きハテナを生ませそうなゴールだった。何だろう、不思議すぎるが納得なゴールである。
結果これが決勝点となり、東京はスミイチでの勝利を手にしたが、この内容でスミイチってのがある意味今年の東京らしくもある。負け試合を引き分けに。そして引き分け試合を勝ちに。苦しくともそう変換するある意味帳尻合わせも優勝を狙うには必要な事。内容を、質を、もっと言えば個人的にはDFライン設定やクロス対策などの守備全般(ライン上げて中盤をコンパクトに、とはお決まりなフレーズだが確かに中盤を3枚で構成するには必要不可欠な措置。チェルシー-アーセナル戦を観て、よくよく観るとコイツら恐ろしいライン設定でやってるなと刺激も受けた)を高めて欲しいが、それは来シーズンに向けての事。終わり良ければ…の総仕上げには何より結果である。3万5千の観衆を満足させる事が全てであろう。

対する新潟はアトムが面白い方向へとちょろまかし始めたと思うので、相手FWを考えればもっと軸が決まると思う。外国人補強とかをみても矢野貴章を絶対軸に据えているだろう様子は分かるが、もうワンランク上に行くならば切るべき。器用貧乏に終わりかけてるし、矢野を脅かすようにクラブが持っていかない限り新潟のブレイクスルーは無い。あと、チャントの繋ぎでの変な合いの手、入れるところすげー多いけど個人的には無しで。


優勝の芽が無くなった悔しさもありながら、しかし神戸戦での分けでぼやけてしまった目標が試合を前にクリアになった事は悪くなかったと思っている。いろいろ物思いにふけられる一晩だったのではないだろうか?そういった緊張感的なものはこの日は全くなかった。酸いも甘いも振り返り、整理して臨めたホーム最終戦だった。
そうして振り返れた経験。それを活かすのはしかし来季ではなく今季である。せっかくこのタイミングで、今季が終わる前に振り返れたんだからそれを活かさないでどうするか?
12.6。
12.20。
12.29。
そして、
1.1。
ACL、元旦国立、その旗印はまだ取れていない」