立場が生んだメンタルゲーム 高円宮杯 GL F組 広島Y-FC東京U-18 

予選突破のための、一番のヤマであった前節G大阪戦で勝利を収め、難所を乗り切った東京。そんな東京が2戦目も順調に、開始4分にゴールを挙げ、そのまま勝ちきったら、お前らどんだけメンタル図太い大人のチームなんだよと言いたくなる。実際に先制点を奪った時にはスタンドでそうつぶやいてしまったし、これでしっかり完勝しきったらこのチームとんでもねぇぞ、とも。その辺、やはりサッカーは団体スポーツであり、メンタルが非常に重要なスポーツであることがよく見えた試合だったと思う。
試合の展開的に立ち上がりに先制点が「奪えてしまった」事が試合を難しくしたが、だからといって重松の先制点が色あせるものでは全くない。メモ書きには「すげーシゲマツっぽいゴール」と。前を向いたらゴリゴリとただゴールに向かい、独特のボールタッチで相手が足出す寸前にボールに触りかわし続け、強引にコースにシュートをねじ込んだ。まさにKING of むさし、ルーニーっぽいと形容されるプレースタイルそのままの素晴らしいゴールだった。
広島が素晴らしかっただけで、東京は取りたてて悪いところがあったわけではない。重松・岩淵の2トップは献身的に守備にボールを追い続けてくれた。特に重松は一時期に比べたらこの意識が非常に徹底されるようになってきた。この辺りにも重松の成長を感じた。成長といえば廣木。守備で抜群の安定感、あの足が出る感覚は先輩である椋原に非常に似てきている。また所属チーム、そしてU-16日本代表で定位置を掴んでいる自信がプレーから滲み出ている。オーバーラップで勝負しても、抜ききらないながらも確実に精度高いクロスを入れる様は金沢とダブる。トイメンの阿部が非常に目立つが、廣木も1年ながら安心のプレーぶりである。
それでも、広島の気持ちがこの試合は上回った。選手もスタンドのサポーターも、気持ちが乗っていた。東京の厳しいプレスも、確実にDFとMFとでパスを回していなして見せたし、横のパスワークを混ぜながらもゴールに向けたチャレンジが非常に多かった。特に、前回注目とした4番板倉が大活躍。大きな展開パスも確実に収め、得意のドリブルでアタッカーらしく東京ゴールを狙い続けた。結果二度の同点ゴールは広島を褒めるべき成果だっただろう。サッカーは相手があってのもの、そう簡単ではない。

こんな言い方は広島に失礼だが、結局は腐っても名門ということ。今年は厳しいとの評価だった広島だが、やはり潜在力のある、歴史のある、名門である。予選突破には崖っぷちの第2戦は、チームとして気持ちの乗った試合をやり切った。この日の広島は、先週の桐光戦でみせられた失望を挽回する素晴らしいサッカーだった。また東京としても、気持ちが上回る名門相手にドローというのは考えようによっては立派なもので、実力差を気持ちでイーブンにさせたと観るならば、本来の東京のポテンシャルは素晴らしいものだと、強引に押しつけることも出来る。
連勝記録が途切れたのがいつぶりだかは調べてはいないが、選手は久しぶりの「勝ちではない結果」にショックを受けていた。キャプテン畑尾は挨拶の際に、むしり取るようにキャプテンマークを剥がしていた。しかし、とにもかくにも、次である。中1日ですぐ、大事な第3戦が待ちかまえている。第3戦を楽にしたい願望もあったが、こうなった以上は切り替えて、次、である。こういう時にこそ、全員の気持ちをまとめきるキャプテン畑尾が観たいし、東京が観たい。
取り返しの効くGLでこの結果を出しておいたのは悪くなかったし、リバウンドメンタリティが問われる第3戦も悪くない。確実に予選突破を決めたい。