読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

逆算の美しさ 高円宮杯08 GL F組 桐光-広島Y

西が丘に行く時には、最寄りの本蓮沼よりも十条を使う事が多い。駅前の商店街の、あの雰囲気が好き。個人商店の活気があって、そこに人がどんどん集ってくる感じ。かと思えば近年の大型店舗の波も少なからず受けてるみたいで、怪しい店もちらほら。そんな「何か良い雰囲気」をくぐっていくのは時間的にも苦にならない。まぁくぐった後が長いんだけど。
ダラダラと到着した久々の西が丘は日射しが強烈。皮膚が真っ赤になり、未だに熱が抜けてない。そんな厳しい暑さの中でまずは桐光-広島Y。広島Yは「ユースといえば」の超名門だが、今年は苦戦。怪我人続出らしい現状に加えて看板の岡本知剛が既にトップ昇格で抜けてしまった。難しいやりくりでゴリさんも苦しいか(それでもいつも気もち良い笑顔を見せてくれるけど。いい人だなー)桐光はGL唯一の高体連チーム。どエースのU-19日本代表FW瀬沼がずんずん引っ張り、プリンス関東も堂々残留という結果を残して見せた。肩書きにさすがの差があるだけに下馬評は広島有利、ただ関東プリンスで戦ってきた同士の感覚か「簡単に終わる試合じゃねぇぞ」と確信して、代表戦視聴で眠たいながらも意地で起きて見に来たんだ。
広島のパスサッカーはシンプル。最近っぽい「縦クサビ」多用なスタイルよりかはもっと壁パスの横のショートパスの繋がりで、その中でいざというときには個の仕掛けでゲインを突破していく。けど総じて「チャンスを多く作る」志向ってのはいかにも現代日本サッカーらしい。実際にチャンスを多く作り、見た目のリードは終始広島Yだった。
それでも先制は桐光。広島はCKで逆ペナ角のフリー選手を狙う「名波方式@アジアカップ2000」を狙うが、それが不発。それを奪ってからの桐光の高速カウンターが素晴らしかった。センターラインで残っていた9番寺内にドカンとパスを出した時点で残るDFは既にもう一枚のみ。右サイドの広大なスペースに爆裂フリーランで駆け込む14寺田へ出すとそれを寺田は深い位置から優しいグラウンダークロス、中央堂々待ちかまえる瀬沼が確実にゴールに流し込んだ。まさにEURO08のオランダ代表のアレ、ゴール後に流れる浮かれたSEも併せて気分はオランイェ、いや素晴らしいゴールを見せてもらった。これだけでこの時間に見に来た甲斐がある。
後半立ち上がり47分にさらに追加点。中央で受けた9寺内は前を向くと膝丈くらいに浮かした優しいスルーパス。左に流れながら受ける瀬沼はダイレクトで左足を振り抜いた。とんでもない決定力で2-0。2トップのホットラインが非常に脅威。広島の出鼻をくじく良い時間帯での得点だった。
広島が意地を見せたのは直後の53分。右サイド浅めからのFK、キッカー9沖田はゴロのボールでニアを狙う。3宮本が突っ込んできながら振り抜いた右足シュートはぼてぼての蹴り損ないに、しかしそれをまた上手く14佐伯がシュートし直した。今まで広島が作ってきた、名門ユースらしい綺麗な攻撃とはかけ離れた泥臭いゴールだった。これで2-1。
早い段階でのゴールだったお陰で広島は活気づく。その後はまたしても広島らしいチャンスを何度も作りながら、フィニッシャーが踏ん張りきれずにチャンスをふいにする。つまり「PK狙いのシミュレーションまがい」が非常に多かったわけだが。実際に足がかかってたのかも知れないが、アレは取れない。印象が悪い。身体の使い方があまり上手くない(これは「こけ方」にもつながってくる)。絶えながらもワンチャンスを狙う桐光も、らしいチャンスは数度作り、そんな拮抗のままにタイムアップ。2-1で桐光が金星の勝ち点3を得る。

金星とは言ったが、内容的には桐光勝利がふさわしいものだった。

この試合は、決定機回数にこだわる広島に対して、決定率にこだわる桐光、といった図式だった。そんな桐光はゲリラ雨でまともに見れなかったプリンスリーグFC東京-桐光戦以来だったのでこの機会にじっくりと見たが、それで分かったのはこのチームには徹底した「逆算」があるという事。絶対的なエースである瀬沼にいかに点を取らせるか?その為にこの日の桐光は、攻撃の組み立てに瀬沼を全く関わらせなかった。もちろん瀬沼はボールを受けに降りてくる事もあるし、その体躯とファーストタッチのこだわりもあっていっぱしのポストプレーは出来る。けど使わない。瀬沼を飛ばして周りを使う。周りを使い切って、満を持して中央の瀬沼にラストを託す。そしてそのパスを瀬沼は確実にゴールに沈める。この形が非常に多かった様に見えた。前日にスパサカを見ていたせいもあって、これぞまさに「釜本サッカー」と言いたくなる代物だった。そう、瀬沼は釜本邦茂だった。
それ故に桐光のキーは瀬沼にパスを出す周囲。実際に相手を外すだけの基礎技術と広島以上のフィジカルコンタクトの上手さを全員持ち合わせていた。関東プリンス一部で揉まれてきた実績は伊達じゃない、彼らの技術も立派なものがあった。その中でも瀬沼の相方としては、やはり2トップの相棒9寺内。この2人の関係がバチンと手堅い。ただ基本は寺内→瀬沼の一方通行なので、まずは寺内を潰す事が桐光攻略には必要手か。

見ていない人に伝えておくのは、内容的には順当勝ちだった、ってこと。チャンスの回数勝負に目が眩むと、広島優位ながら…と言いたくなりそうだけど。まぁ見ていた人はみんな、この試合で桐光が勝った事については納得しているでしょう。その後見せたG大阪がアレだったこともあって、充実一途の桐光がもういっちょ大物喰いをかます可能性は少なくないでしょう。土曜日はハシゴ観戦〜!と思う方が居る様ならば、どうせなら第1試合から観戦する事をお勧めします。

  • 注目選手その1 広島4番 板倉大地

広島の右サイドからガンガンに突っかけるアタッカー。この試合では4番の板倉が右MF、9番の沖田が右SBと、どこかのきっかけで入れ替わってしまったのだろう。しかしこの板倉の活きが良い。良い展開から板倉がサイドで勝負するのは広島の核パターンの一つ。良い位置にいるおかげでボールも転がってくるので、得点機会も多い。阿部巧とのガチンコ勝負は土曜日見どころの一つ。

  • 注目選手その2 桐光GK 峯達也

FC東京U-15深川出身の1年生GKが全国大会で堂々のプレーぶり。174cmながら目立つのはハイボール処理の上手さ。ガッチリ掴むだけでなくて的確なパンチング処理なども抜群の安定感。先制点が入った直後にダラダラとボールを蹴り始める所とかはさすが、サッカーを知ってるなぁ。瀬沼が抜ける来季は厳しいプリンス一部になるだろう桐光だが、峯を中心とした守備の堅さが来季のウリになるかもしれない。

  • 注目選手達 桐光ベンチ外組による応援団

高体連と言えば、ベンチ外選手による応援。音楽室から勝手に持ち出したであろう大太鼓を背負い、繰り出すはおなじみの高体連チャントのオンパレード。「瀬沼のゴールが見た〜い〜(ミタイ!)」「ドカンと一発(ドドドン)やってみよ〜ぉ〜」「これから始まる桐光の攻撃何点はいるか分からない!(ヘイ!)(2番は「まだまだ続くよ桐光の攻撃…」)」時々音程がライヴバージョンになったりで(笑)メインスタンドの微笑みを誘っていた。サッカーっぽいチャントに慣れすぎて、近年は高体連でもJクラブのチャントを使うところも増えてきたけど、昔ながらのこういうチャントも、やっぱり好きだなー。きのう今日、気付くとふと「まだまだ続くよ…」と口ずさんでいる自分が怖い。一瞬口ずさんでいる自分に恥ずかしくなって、けどまぁ良いやって結局チャントの終わりまで歌いきって(心の中で)勝手に満足する感じ、分かりますか?分かってくれなきゃオレ、恥ずかしいままですわ…