霧の向こうで、椋原は頑張っていたよ レビュー −鹿島戦

かくいう自分も、バクスタ2階席での観戦だったわけで。TV組よりは見やすい環境だったはずとは言えども、やはりメイン側(テレビ画面でいえば手前側)の方はかなり見えにくかった。全体の俯瞰はしづらかったけれど、ならばTV画面で見えにくかった遠いサイドの話を中心に。
鹿島の洗練された攻撃に対し、東京は組織での守りという点で劣っていた。鹿島は選手それぞれが適度な距離で、適度な角度でフォローに顔を出し、その隙間をピシっと気持ち良くパスを通せていた。例えば東京みたいに、スペースを作って、そこを突いて、みたいな小難しい概念はなくて、ただただシンプルさを突き詰めた美しさが鹿島にはあったと思う。それに対する守備での動きは、ボランチが相手をしっかり捕まえるのか後ろに渡すのか。その甘い連携を突いた鹿島の飛び出しが、東京にとってのピンチになることが多かった。
しかし、個での対応となったときにはなかなかの頑張りを東京は見せていたと思う。佐原は落下点争いに厳しく競り勝ち、藤山はいつも通りの守備を安定して出していた。徳永は霧の向こうでよく見えなかったが(ごめんよ)。
そして、椋原。
椋原が非常に頑張っていたことをTV組の方々にはご報告しておきたい。鹿島としても新人SBは当然狙いどころで、今やオールスター選出で勢いのある新井場が非常に高いポジ取りで対面にプレッシャーをかけていた。それに対し椋原は、個での勝負になったときにはタイトで非常に粘り強い守備を仕掛けれていた様に思う。もちろん、これで「クロスを上げさせない」ところまでできれば満点だったしそこまではできてはいなかったが、十分評価していい出来だったと思う。
また、椋原が守備時に非常に中央を意識したポジション取りを行っていることも評価してあげたい。今までも椋原が出ていた試合で、中央を2トップにぶち抜かれたときに、最終局面で何とかカバーしてくれたのが椋原だった、なんて場面がいくつかあったがその理由の一端を見た気がした。つまり、ボールが逆サイドにある時の守備。ワイドに構える新井場を細かく見ておきながら同時に中央マルキーニョス・田代も細かく首振りチェックをし、優先順位としてまずは中央突破をカバーする絞り気味のポジション取りを細かく修正しながら行っている姿がバクスタからはよく見えたのだ。「つるべの動き」守備の基礎だが、そのポジション取りにこだわりを見せ、実際にマルキーニョス突破をカバーするシチュエーションも作った椋原の守備意識はもっと評価されていい。
椋原−佐原の間に斜めにカットインしてくる選手を捕まえ切れずに、ピンチを迎える場面もあったが、それは連携の問題が大きい。それはそれで課題ではあるが、個の守備で良さを出していた椋原を見直す気持ちには変わりなし。縦に行ける攻撃に優れたSBは今や多いが、守備に優れたSBも等しく、評価してあげたいところだ。
後半はその椋原に代えて長友がいよいよ登場。予定された交代だったのだろう。長友は怪我前のパフォーマンスからはやはり遠いものの、縦への突破の意識は確実に相手に植え付けただろうし怪我明けを思えばよくやった方だろう。
その長友スイッチを中心に、東京は攻撃面では浦和戦の反省を生かしたサイド意識が全体でよく出ていた。サイドを使う、サイドに流れるっていう意識は全体的に高く、タイミングのずれは今後の熟成に期待するとしてそこを使うという気持ちとそれに応えるボールホルダーの仕掛けは十分にあったと思う。何より羽生の動きで確実にスペースを作れていたのが何よりで、そこを使える選手がもう一人いれば…な展開には持ち込めていた。
先制点から同点になり、逆転。1-2。前節の問題点をしっかり修正する意識と、個の頑張りでよく戦えていたと思ったが…
鹿島の3点目4点目は完全に気持ちの切れた東京に責任のある、情けない失点だった。「気持ちの切れた」という点、城福監督は否定をしていたが、バクスタから見る感じではそれは明らかだった。やるべきことをやりきって、1-2、もしかしたら2-2にできたかもしれないし1-3と引き離されていたかもしれない。そんな戦いを逆転後も見たかった。気持ちが切れて、その結果の4失点は失望という意味で正直ショックだった。これでは、上位に挑戦する権利なんてありゃしない。
内容については改善が見られただけ嬉しかった。それだけに。気持ち。がむしゃらさ。原点に立ち返って、気持ちで負けない一戦を。