「勝利へのルーチンワーク」を捨てることにならなければいいが・・・

2008年。寝正月。雑煮喰ってダラダラと過ごしながらも、眺めたTVプログラムは興味深いものがあった。
「プロフェッショナル 仕事の流儀」新年一発目のこの日はイチロースペシャル。そしてそこで語られたイチローの「ルーチンワークに対するこだわり」は凄まじいものがあった。内容についてはこちらのサイトが綺麗にまとめてくれているので、観ていない人はそこを観て頂きたいし、もし改めて観る手段があればそれを活用して頂きたい。
簡単にまとめると、イチローというプロ選手は一試合一打席に対して常に最大限の集中を求められる。しかもそれをシーズン通して常に行い続けなければならない。もちろん並大抵のことではないが、それをこなすためにイチローは、その一瞬の状況に向けて徹底したルーチンワークを行う。ホーム試合の日の昼メシ、球場入りから試合終了までの作業・練習、そして打席に向かうまでの細かい作業を完全ルーチン化。何も考えずともそれをこなせば、自然と究極の集中で打席に入れる様な『仕組み』をガッシリと作り上げた。このルーチンワークを忠実にこなす事で常に最大限の集中に意図することなく入れる仕組みを徹底して作り上げたのだ。
これは他のスポーツを始め、日常など多くのことに応用の利く考え方だ。そして、その感覚は例えば我々サポーターに対しても既に存在している。味の素スタジアムでのホーム戦に向かうまでの、マフラーをカバンに詰め込む動作やSOCIO束からチケットをちぎる様、飛田給を降りた時のドキドキ感や歩道橋を上がった時のワクワク感。イチローに比べれば些細な事柄だが、それらの全てがスタジアムでサポーターが感情を爆発させるための細かいルーチンワーク、そのスイッチとなっているはず。
そんな我々にとって最重要なスイッチが、「スタジアム曲」。FATBOY SLIMが流れれば選手が出てくる。TECHNOFIREが流れてくればスタメンが紹介される。FASTER HARDER SCOOTERが流れてくればいよいよ・・・サポーターにとっては全てがキックオフの笛に向けた重要なルーチンワークであり、大きなスイッチであるはず。それが欠ければ何か違和感が、ここは本当にホームなのかと不安にすらなる。いつものが無い不安は、まさにこれら流れる曲がキックオフに向けたルーチンワークになっている証拠。
06年にFASTER HARDER SCOOTERが廃止されてオリジナル曲に代わった時の、あの何とも言えない違和感を忘れたわけではないでしょう。しかもああいうルーチンワークは、一度途切れたら全てが崩れる。07年に入場曲が元に戻っても、その曲にはもはや今までのスイッチとしての役割は残っていなかったと思う。あれだけワクワクしていた、アノ曲なのに。
10周年だからか、今季から選手入場曲が変わるらしい。
前述の通り、個人的にはもはやFASTER HARDER SCOOTERから以前の効力はほぼ失われたと思っているので、それに関しては特には思わない。メモリアルとして新たな気持ちでやろうというならば、その気持ちを尊重したい。しかし、オフィシャルには「選手入場曲を含む7つのオリジナル曲を制作しました」とある。もし選手入場曲と共にTECHNOFIREも代わることになるとしたら、これは大問題だ。
以前、02年の選手紹介をYOUTUBEで観たが、その時から選手紹介曲はTECHNOFIREだった。その時から今まで続いてきたとしたらこれは6年間も続けてきた「ルーチンワーク」となるわけだ。6年間分育った大きいスイッチがこの曲だ。
プロスポーツホームチームが有利なのは、キックオフの笛までの慣れ親しんだ「ルーチンワーク」にその一端があると、イチローの「仕事の流儀」から学んだ。事実確認はまだ分からないがTECHNOFIRE廃止となれば、そのルーチンワークに関わる大きなスイッチを失うという事だ。選曲のセンスだ権利関係だ何だという以前に必要な認識がここにある。もちろんこれから、確固たるルーチンワークを作る、それにふさわしいセンスのある曲を投入するという意気込みまであるならば、それは受け入れなければならないだろう。しかしその認識も覚悟もなく、10周年だから何となくということだとしたら・・・
自分はこの件は、ホーム勝率にまで関わる非常に重要な問題だと認識している。