日本×ボスニアヘルツェゴビナ

国立競技場へ行ってきました。
とにかく人の少なさ、オシムに比べての人気の無さみたいな報道ばかりが目立ってたけど、何よりこの時期でバック席が7000円で、行こうと思う人が居るわけがないと。何故このタイミングで値上げするのか?そしてそれによって出た入場者数を見て「岡田監督のサッカーってつまらない」って、先入観を持つほうこそつまらない発想でしょう。やはり、行って実際に観ないことには分からない。実際に行ってみたら分かることも非常に多くて面白かった(=岡田サッカーが面白いと結論付けているわけではない)。この日は完全無風で余り寒さも感じなかったし、ホント観に行ってよかったと思う。
試合について、の前に。アウェー側ゴール裏・バックスタンド席は確かに人は少なかったけど他はそこそこ埋まっているように見えて、26971人の入場者数には見えなかった。(場内DJアナウンスが無かったのはやはり、この実数の少なさのせいだろうか)恐らくチケットがそれなりにばら撒かれている様で、実際にメイン側は中々のギッチリぶり。しかしそれ以上に気になったのは横断幕掲出の少なさ。スタンド最前列はキリンKIRINで埋め尽くされてるから掲出は出来ないんだろうけど、特にそうでもないと思われるゴール裏最上段やバックスタンド中段の柵にすら、悲しいほどにダンマクが貼られてない。ここ最近の傾向なのか、たまたまこの日の規制の問題か。少なくとも入場者数の少なさとは比例してない減少ぶりで、枚数が簡単に数えられちゃいそうなスカスカッぷり。もし横断幕を掲げるようなサポーターが減ってしまったのだとしたら、これは入場者数の減少よりも由々しき問題かもしれない。今後観戦する機会があったときにまた気にしてみよう。
そしてゴール裏の応援。ホーム側の勢いが減ったというか、下手くそになったというか。選択すべきチャントの、選択と太鼓と周囲への波及が全て遅くなっている。(悔しいけど)さすがに手馴れているアウェー側ウルトラスがまずタイミングよくチャントを始め、そこにホーム側が乗っかる場面が非常に多くて、一体どうしたんだ、前からそうだったっけかと驚いた。オシム来場に対する用意周到ぶりとかも意識の差は明らかで、さらに軟弱になってしまったホーム側は今後ホントどうなっていっちゃうのか?
久しぶりに来てみると、どうでもいいことが多く目に付く。しかし、代表戦の客層というか内訳ってのはこの先、一体どうなってしまうのだろう?入場者数が減っても濃度が保てていれば問題ないと思っていたが・・・
本題の試合内容について。
メンバーは内田や巻、大久保のコンディションの良さはこの時期を思うと意外なほど高く、スタメンの選択肢としてはまずこの出来の良さがありきなのだろう。逆に遠藤・高原などコンディションがまだまだだけど、出し続けて何とかしたい思惑が透けて見える選択も。ただ、スタメンを見るだけでもコレだけのばらつきだったので、出れて無い選手に関しては問題外な仕上がり具合な選手も多くいるだろう。それを考えると、内田の選出だの逆にオシムベースであまり変わらないスタメン構成だの言われてるけど、そもそもあまり選択肢すら岡田監督には無いのかもしれないなぁとか思ってみたり。この辺は指宿合宿を見てないと何とも言えないんだけども。
とにかく目立つのは大久保嘉人。低い位置では展開のロングパス。高い位置では相手マークを簡単に外してボールを引き出す。前線では相手の裏を取りゴールを狙う。11分の場面ではボールを奪われた後の切り替えの速さでボールホルダーに対して1stチェック。去年気づかされた成長を、この場この時期で見せ付けられるとは思わなかった。この日の中心。揺ぎ無くMOM。選手紹介でも誰よりも声援が多く、今年は大久保が世代闘争を勝ち抜いてしまいそう。
攻めの形としては逆SBを張らせて左→右へのサイドチェンジを多用。確かに明確な意図だったが、その意図がサイドチェンジで完結てしまっていた。サイドチェンジしても内田が受ける位置はたかが知れた高さなわけで、無茶して強引に仕掛けるにも微妙な位置。内田としてもフォローが全く無い孤立した陣形でどう仕掛けるべきかは迷いがあったはずだ。サイドチェンジの時点で「その先」を周囲が共有できるか。あの時点での内田の強引な仕掛けを保障する、もしくは内田が受けた時点ですでにFWが縦に流れている位の意図を突き詰めていくのがチームとしての今後の課題でしょう。

そして象徴的なダイヤモンド型4-4-2。個人的に今後の世界の流れとして「トップ下の復権」があると考えているので、その意味ではこのチャレンジは歓迎。ただ、当然だけど現段階では出来はまだまだ。危なっかしいったらありゃしない。鈴木啓太がワンボランチとして務める範囲をカバーしきれてなくて、駒野がチェックに行く→空いた駒野の位置に啓太がカバーで入る場面が非常に多かった。必要な所作だけど、コレでは意味が無い。ワンボランチに求められるスキルを考えたら、カバーの範囲から単騎の強さまで、啓太はもう数段化けてもらわないと成立しないでしょう。別に鈴木啓太が問題というわけではなくて、それほどワンボランチにかけられる役割は大きすぎるということ。今野でも出来ないだろうし、ちょっと適任が思い浮かばない。それでも成立させるならその重責を分担させるMF陣の質と連携が必要になってくるけど、これも今のメンバーチョイスだと不可能だと思うし、総合して現時点では遠い目標だなと思わざるを得ない。
それもあって、後半に見せた今野投入→ダブルボランチ変更のパターンは今後も多く見ることになるだろうし、今野が求められる機会は非常に増えそう。あとこの日の両SBのバランスとワンボランチとの関係がチーム意図として考えているなら、左サイドはよりバランスが取れる選手じゃないと成立しない。左SBにこれを求めるなら、この位置は是非中田浩二を試して欲しい。実際の1stチョイスは阿部だろうけど、どちらにしても左SBはこういった選手が必要そう。
最後に高原。巻・大久保に比べたらチーム内貢献は非常に少ない。「パスが来ない」なんて揶揄した報道もあったけど、単純にボールの引き出し方の質の差。正直チーム内貢献としてアレが認められるのなら、少なくとも点を取らないといけない。けどあのコンディションだと当分無理でしょう。となると現状播戸は高原の位置を奪う絶好のチャンス。遠藤との相性もさすがだし、この日見られた山瀬・今野の元コンサ組への監督の信頼を考えれば、チャンスは今後もっと来るだろう。万全を期して待機しておいて欲しいものだ。言われなくても播戸だったらそうするだろうけど。逆に高原はあの体たらくが続けば浦和でも、むしろ浦和「が」危ないかも。「それでも点を獲るのがストライカー」っていう、もって生まれた天性に期待するしかないかも。
後半スタミナの垂れた相手を思えばもっとやれた、とぬかす人も居たみたいだけど、逆に1月のこの時期に、終盤まで比較的日本の足が止まらなかったことを評価すべきでしょう。正直もっとコンディション的にグダグダを予想していたけど、コレは立派。内田マジ頑張った(むしろシーズン終盤に総崩れしてしまいそうなほど)。点が取れないのは高原のせい。とりあえず乗り越えるべきタイ戦については楽観。勝てなかったら高原のせい。
個人的にあまりオシムジャパンへの評価が高くなかったんで、岡田ジャパンに対して感情移入の低さだとかマイナス先入観だとかは無い状態で見れた人間です。それが前提だけど、けどやっぱり実際にスタジアムで見れて、分かることも非常に多いし、単純に楽しかったよ。オシムの幻影に翻弄されるのはマスコミだけで十分。やはり単純に「スタジアムへ行こう」よ、と確認して帰ってきた次第です。