ダービージョッキー

完結。

ダービージョッキー (22)

ダービージョッキー (22)

駒の配置・世界の構築にかけた10巻までの前半。そのコマたちがその世界の元、深く複雑に発展し出す後半。熱い筆とセリフ、大ゴマを駆使し作者の才能が遺憾なく発揮された。その作者の才能に酔えることが出来た意味でも美しいマンガだった。
当初は曽田正人との比較を考えたが、主人公の圧倒的な才能が主人公自身から膨大に発せられる曽田作風とは違うものだということに気付く。一色登希彦は主人公のみならず脇役の才能を輝かせることが上手かった。主人公の才能は周りと比べれば圧倒的。しかし、主人公からの才能アピールは実はそこまであったわけではなく、その輝かせた脇役の主人公への憧れ・嫉妬という形で主人公の才能を『語らせた』。そしてダービーに出る馬が18頭いるのならばそこにドラマは18コ、もしくはそれ以上ある。「日本ダービー」という一つのレースにその多くのドラマを集結されられた、そのドラマに深い意味を持たせられた、そこにこのマンガの勝因があると思う。そういった意味では最後まで読み切って、上杉圭に一番思い入れが、という意見は案外少ないんじゃないだろうか?
もちろん、作者の表現力がついてこれなきゃなんの意味もないわけで。その部分も素晴らしかった。見開き大ゴマの使い方も効果的で、言葉の重みも随所に感じた。そして、狂言回し的な存在だった片桐を上手く使えた事でドラマが散らからなかった。
漫画力のある一つの才能が一つの作品を完結させたということで、素直に堪能することが出来ました。今度はこの才能が「原作付き」の新作で発揮できるのか?楽しみにしています。